10|03|29 君にくらくら(天戦)
※「足元ふらふら」の続編というか天草サイド
※少しだけ微妙な性描写が含まれますのでご注意くださいませ
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ぎしぎしと、見慣れたベッドが悲鳴を上げている。
自分の下で、彼が一糸纏わぬ姿で喘いでいた。
白い頬が赤く染まり、その上を涙が伝いシーツに染み込んでいった。腰を動かすと、甘く高い嬌声が上がる。涙に潤み、蕩けた瞳と目が合う。


(・・・・・・あー、これ・・・)


シーツをぎゅうと握り締め、喘ぐ合間に何度も俺を呼ぶ。それに応える様にその唇を口付けで塞いでやって、



(これ、夢だ)







目覚めは最悪。いや、良いと言えば良いが、もやもやとした感情は決して心地好い物ではない。
はあ、と深い溜息を漏らす。これで何度めだ、俺。


夢の中であんな風に彼を犯した数は、もはや両の指どころか足の指を足したって足りやしないだろう。


十年の付き合いになる八つ年下の護衛対象への恋心に気付いたのは、もう一年程前になるだろうか。
自分はどうやら、同性の、それも年下の弟分の様な存在に惚れてしまっているらしい。
嘘だろうと自分を疑った。だが、抱きしめたい、キスしたい、犯してしまいたい等などの欲求がはっきりとある。実際オカズにした事も多々ある。最近では自室のベッドで彼と行為に及ぶ夢まで見る。少なくとも俺は彼をそういう対象として見ているのだ。男である彼をだ。それはつまり、好きだと言う事ではないのか。

何より、恋とか愛とか、そういう表現がこの感情にはしっくりくるというのが一番大きい。




「おはようございます」
「んー・・・はよー・・・」

リビングで寝ぼけ眼の彼に遭遇した。
困ったな、と思う。あんな夢を見た後では何と言うか、気まずい。それを隠すのはたやすいが、結局の所自分は気まずいままであって。
・・・そんな事を考えていたせいか、無言で彼の顔を見つめてしまっていたらしい。怪訝そうな目に、逆に覗き込まれる。


「・・・何だよ、俺の顔に何か付いてるか?」
「強いて言うなら涎の跡が」
「ゲッ、マジかよ!」
「嘘ですよ」


ぶすっとした不機嫌な顔を向けられた。赤い頭をぐしゃぐしゃ撫で回してやると、やめろよ、と声を上げるものの目立った抵抗はない。それをいい事に、今度は優しく髪をすく様に撫でてやった。表情は不機嫌なままだったが、見上げてくる目は何処か嬉しそうだ。
その様子を可愛らしいと思う。弟のようだとも。でも、その一方で、


(・・・・・・止そう、考えるのは)


この距離でいいのだ。これ以上近付く必要はない。どろどろとした汚い欲など、この子供は知らないままでいい。可愛い弟分、それでいいじゃないか。
これ以上、何を望むって言うんだ。
(頼むから、諦めろよ)











あきゅろす。
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