main_10|04|01 画面越し、ラブストーリー(天戦)
パロディぽい

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愛してる。そんな言葉が、暗い室内に響いた。
画面の中で、苦難を乗り越えた恋人達が愛を囁き合っていた。お互いに手を取り合う様は純愛というかなんというか。肉欲など無い、ただ純粋に相手の心を求めるような、何とも綺麗な恋愛だ。

雨で暇だからと、レンタルショップで借りてきたビデオを家で戦人と二人で見ているのだが、これはどうも失敗だった。感動的ではあるが、些かありがちすぎるというか。先の展開が簡単に読めてしまい、欠伸が出そうな程面白味が無い。
実際天草はもう何度も欠伸を噛み殺していた。…だが、隣に座っている戦人にはそうでもなかったらしい。


「う、うぅ……ひっく……」


ちらりと横目を遣る。画面に釘付けになった大きな黒い目からはぼろぼろ大粒の雫が止め処無く溢れていた。ソファーに置いてあったクッションを抱き締め、時々嗚咽を漏らしたりもしている。
泣くほどのもんか、これ。
戦人が感動モノに弱いなど知らなかった。鼻を啜る様を見て天草は再度後悔した。やはりこの映画を借りたのは失敗だった。もう少ししっとりした恋愛モノとか、いっそAVにでもすればよかった。それならばもう少しいい雰囲気にでもなったかもしれない。せっかく二人きりだというのに、勿体無い。


やがて映画は終わりを迎えた。ハッピーエンドだった。戦人は余韻を噛み締めるように、相変わらず泣いていた。体を寄せ、戦人に抱きついてみる。いつも嫌がるくせに、今回は抵抗されなかった。多分見終わった映画の方に気持ちがいっていて、それ所じゃないのだろう。


「戦人さん」


耳元で名前を囁くと、涙を拭いながら戦人は漸く天草を見た。両目は真っ赤に腫れていて、鼻がずるずると鳴っている。涙の跡を舐め取ると塩の味がした。
くすぐったそうな笑顔が、たまらなく愛しかった。



画面越し、ラブストーリー





あきゅろす。
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