main_10|02|27 歪めゆがめ 篭の中の禽(縁戦)
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気付いた時にはわたしは彼が好きだった。堪らないほどに愛していた。

最初はきっと家族愛とか、そんな類のものだったのだろうけど、多分今はもうそういう風には彼を見れない。恋愛とか、そんな表現がしっくりくる。ひょっとしたらそれでもないかもしれない。家族とか男と女とか、そんなものを凌駕したもっともっと深くどろどろとした愛情。どうしようもなく歪んでしまっている。
ただ純粋に彼が愛しいだけなら、彼を傷付けたいなんて思うだろうか。言葉で、暴力で、彼を傷付けてやりたい。そしたら彼はどんな反応をするのだろう。泣くだろうか、怒るだろうか。身も心もずたずたにされて、どんな表情を見せるのか。ひたすらに拷問の様に追い詰められた彼はどんな言葉を零すだろう。意志の強い彼はどこまでされれば屈服するだろう。

わたしは想像の中で彼を何度も壊す。その癖、彼には笑顔でいて欲しいと思う。にこにこと笑顔を振りまいて、わたしの頭を撫でる彼。そんな彼を好きだし、大事だと思う。ずっとそのままでいて欲しい。どうか幸せであってくれと願う。


それでもわたしは彼の幸せを望むと同時にこの手で彼を壊すことも望んでいる。どちらもわたしの願い。だからどうしようもない。だってどちらも本心だから。紛れもない本心。相反することをこんなに強く願うなんて可笑しい話だ。自分だって訳が判らない。でも彼が愛しいのだ。それだけは真実。


(お兄ちゃん)


願わくば、彼が何時かわたしだけのものになりますように。



 






あきゅろす。
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