main_10|03|05 親愛なる(留戦)
+++


「うー…頭痛ぇ…気持ち悪い……クソ親父一遍死んどけ…」
「親になんて口聞いてんだ、おい」
「実の息子に酒飲ました人間がよく言うぜ…」


ベッドに寝転がり頭を抑える戦人の顔色は悪く、悪態をつく声に覇気は無い。
…昨日の晩、面白がって酒を飲ませたのは良くなかったかもしれない。というか良くなかった。
まだ未成年の息子は酒を飲んだ経験はあるようだったが、恐らくあれ程の量を飲んだのは初めてだったのだろう。そりゃあ二日酔いにもなる。


「ほら、水だ。…飲めるか?」
「……ぅう…」


戦人は呻きながら上体を起こし、水の入ったグラスを受け取った。唇を湿らす程度だが口にしている。
だがすぐに口を離し、自分にグラスを押し付けそのままベッドに倒れ込んだ。よっぽど辛いらしく、普段良く回る口は意味の無い呻き声を発するだけ。

ぎゅっと目を閉じた表情があまりにも苦しげで、思わずその頭を宥める様に撫でた。
何すんだクソ親父、なんて罵声が飛んでくるかと思ったがそれはなかった。一度驚いたようにぴくりと体を震わせたが、それだけで何も抵抗は来ない。それをいい事に頭を撫で続けてやる。
(そういえば、戦人が幼い頃もこうやって頭を撫でてやることは少なかったような気がする)


「……」


指に触れる赤は柔らかい。

腕がだるくなるのも構わずに、留弗夫は傍で戦人の頭を唯撫で続けた。



親愛なる







第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!