main_10|03|12 白いアムールの上(天戦)
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ぎしりとベッドが軋む音に体が震えた。宥める様に天草が頭を撫でてくる。
そうしながらももう片方の手は俺のシャツのボタンを器用に外していった。すぐに全て外し終わり、前が肌蹴られる。じっと見られる羞恥に目を瞑り、シーツを両手で握り締めて耐えようと努力する。
天草の指がシャツの中に滑り込み、脇腹を撫で、指でなぞっていく。俺の首筋に顔を埋めて吸い付いてきた。


「う、ぁ」


喉が引き攣って変な声が漏れた。意図せず体がぶるぶると震える。鼻の奥がつんとして、視界が滲む。駄目だ、と思ったときにはもう手遅れで、涙が次から次へと溢れ出た。


「ひ、うぅぅ…うぅ」
「…坊」


覆い被さっていた天草が俺の上から退いた。泣き続ける俺の体を起こし、そのまま抱き締めてくる。優しい抱擁に、泣きたくなんてないのにもっと涙が出た。


「ひっく、う……ご、め」
「謝らないでくださいよ、ほら」


よしよしと後頭部を撫でられる。天草はどこまでも優しい。だから、尚更申し訳なくなる。謝ったって仕方がないのは分かっているのに。情けない。


「…やっぱり止めときましょう」
「で、でも」
「焦る必要なんてないですから。第一、そんな泣かれちゃ俺もやり辛いです」


怖いって言うなら、怖くなくなるまで俺は待ちますから。

優しく言い聞かせてくる天草に、怖くなんてないと言おうとしたが、止まらない涙では説得力も何も無いだろう。どうしたらいいか分からずに唇を噛むと、天草が俺の涙を舐めた。


「…嫌だ」
「嫌だ、って」
「しようぜ、なぁ」
「しようったって…坊」


天草は困惑した表情を浮かべている。自分がまるで駄々を捏ねる子供のようで恥ずかしい。それでも、言葉を続ける。


「お前はしたくないのかよ」
「…そりゃあしたいですよ。でもですね、」
「俺もしたい」


多分顔は真っ赤になってるんだろう。涙も止まらないし、みっともない。格好悪い。それでいい。これから天草に全部曝け出すのだから、それくらいどうってことない。


「…やっぱり、たくさん泣くかもしれないけど、さ。嫌じゃないし怖くないから。だから、」


声は途中までしか続けられなかった。天草にキスで遮られたからだ。舌が入り込んでくる。天草の舌は、塩の味がした。きっとさっき舐めた俺の涙の味だ。
唇を離し、こつん額を合わせる。相変わらず俺の涙は止まっていない。静かに、はらはらと流れていく。


「…ここまで俺を煽っといて。本当に、いいんですね?」
「ああ、いいぜ」
「ひゃっは、最高にクールですね!」


どさりと、そのまま押し倒される。最初と同じ体勢になった。
天草のシャツの胸元を掴んで体を引き寄せ、唇にキスしてやる。至近距離にある天草の目が驚きに僅かに見開かれた。唇を離して笑顔を浮かべると、天草も笑った。その下で、シャツの中に天草の手がそろりと入った。目を閉じ、天草のことだけ考える。
(…あ。…そういえば)

涙は、いつの間にか止まっていた。







パニックになりかけて泣いてしまう戦人を書きたかったんですが、ちょっと女々しくしすぎたかな…;
お粗末さまでした!






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