(神様、俺まだ死にたくないよ。) 死ぬのなんて怖くなかった。ひとはいつか死んでゆく。それは明日かもしれないしもっと年老いてからかもしれない。(でも長生きは望まない)武器を手にして戦場を駆ける。流れ弾に当たって死ぬかもしれないし敵将を討ち取って死ぬかもしれない。 「公績、」 (神様、俺まだ死にたくないよ。) 泣いている。泣かないでくれ。(なまえ)なんで俺の腕は動かないんだろう。なんで俺の目はなまえを映さないんだろう。なんで俺の唇は名前を紡がないんだろう。なんでなんでなんで(俺は、) 「抱きしめてよ」 「あたしをみてよ」 「名前を呼んでよ」 「ねぇ公績」 死ぬのが怖いと初めて思った。武器を取りたくないと、このままおちおち死んでられないんだっつの。(泣くじゃ、ないか)ごめんそんなつもりじゃないんだ。なまえを泣かせるなんて。 (神様、俺まだ死にたくないよ。) その涙を拭える指が欲しい。震える肩を抱きしめる腕が欲しい。なまえと呼べる声が欲しい。(我が侭かねぇ、)この先俺を待つのが死、ならば、俺の我が侭くらい(なまえの我が侭くらい)聞いてくれよ神様。 (神様なんて信じちゃいないけど) 神様、俺まだ死にたくないよ。 (生きていたいよ、) (20090305) |