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花葬(凌統)



(イライラする。)
腹の底から殺してやりたいってこみ上げてきて、だから俺はガキだ。父上はもういない。死んだ。殺された。消化したはずの記憶が蒸し返るのは墓参りをサボってるからか。ごめん父上。
なまえを墓参りに誘った。赤い花を持って俺の後ろを歩くなまえ。なんで赤い花なの?赤は孫呉の赤だから。なるほど。父上も孫呉の将でなまえも孫呉の将で、俺の奥様であって。俺幸せもんだね。なんで?いい奥さんもらったから。当たり前じゃん。赤い花、父上も喜ぶよ。
だいぶ寂れている。なまえが俺を睨む。随分と来てなかった墓石の前で苦笑い。父上ごめん、なまえもごめん。気が向かなかった墓参りはなまえと一緒なら足取りも軽かったよ。ひとりで父上の墓石に語りかけるのは、(泣きたくなるんだ)俺らしくもないけどね。
ちゃんと来なくちゃ駄目じゃん。うん、ごめん。今度からちゃんと2人で来よう。ありがとう。孫呉の赤色した花を生けてるなまえの隣で手を合わせる。父上、みてますか。

「俺もなまえも元気です」
「おとうさんも元気ですか?」
「墓参り、サボっててごめん」
「本当だよ馬鹿凌統」
「でも今度からはなまえとちゃんと、来ます」
「来ます」
「なまえを幸せにします」
「今更だなあ」

花嫁姿見せたかった。すげー綺麗で俺には勿体無いなんて、思っただけで誰にも渡さないけどさ。父上のような親になりたい。いつか俺も子供が出来るだろうから、そのときは父上の話をしようと思う。立派な父親だったんだぜ、って。
なまえが俺の背中を撫でる。なに子供扱いしてんだっつの。(すぐ、)すぐだから。すぐに涙なんて止めるから。おとうさん、あたし幸せですよ。幸せなのかい?でももっと幸せにしてもらいます。任せとけ。
俺となまえと、もうひとりとでここへくるのはいつになるか分からない。それでも父上、待っててくださいよ。今より幸せになって、父上に会いにきますから。うらやましい、って笑ってもらえるような、そんな家族になって。
涙が乾く頃には空が赤くなっていた。孫呉の赤。孫呉の将として散った父上。なまえと手を繋いで、墓石を後にした。赤い花が散るまでに、また父上に会いに来よう。なまえと俺と、まだ見ぬもうひとりを待ち望みながら。





花葬







(20090425)


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