(これでよかったんです。) ふと目を開けたら幸村のドアップが飛び込んできて驚いた。その割に体は上手く動かない。 ああそうだあたしは死にそうなんだった。 「なまえ殿、」 「まだ生きてるよ」 「当たり前です」 たぶん次に目を閉じたら、二度と幸村の顔は見られないだろうなあ。お腹が焼けるように熱いのはさっき斬られたからなのか、幸村が触れているからか。 妙に顔が近いよ幸村、そんな泣きそうな顔、で。 「幸村は元気?」 「えぇ、元気です」 「よかった」 あたしの小さな体は幸村を守れたらしい。 うん、よかった。 いつも守られてばっかりだからたまには守ってみたかったんだ。だから悲しくなんてないでしょ、喜んでよ幸村!痛みにきしむ腕をうんと伸ばせばきっと届くのに、今のあたしにはそれもキツい。 「私は、」 「幸村」 「あなたを失わなければいけませんか」 「どうかなあ」 「あなたを失ったら強くなれるんですか」 泣かないで幸村。 最後の言葉がちゃんと音になって伝わったかは分からない。目が閉じちゃうギリギリで幸村があたしを抱きしめてくれたから、きっと聞こえたんだろう。 次に目を開けたときは、違う場所から幸村を見つめられるかな。 (これでよかったのでしょうか。) 「あなたを失ったって私は強くなれません」 (20090319) |