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第一章 出会い
秋の晴れた日。

今日は大学の学園祭が行われている。

3年目にして初めて自分の大学で露店を出したミキは友達のアサミと浮かない顔をしながら店番をしていた。

アサミは、ミキが大学に入学して初めて仲良くなった友達だ。

お互い一人で大学の授業日程を聞いている時に目が合い、意気投合した。

それから二人は3年間ほぼ毎日顔を合わせている。

そんな二人は3年に上がるゼミ決めの時も、ミキの入りたいゼミにアサミも一緒に入ってきた。

そんな二人が何故今日浮かない顔をしているのかというと。。

学園祭2日目ということもあってか、自分たちが受け持つフリマの商品にほとんど目をそそられなかったからである。

ミキ「もう今ここに残ってる商品、私でも欲しいと思わないのに、こんなのお客さんに勧められないよ。」

そうミキがアサミに愚痴をこぼした。

アサミ「そうだね〜。もともと、店番じゃなくて買出し班に回りたかったのに、こんなハメになるなんてホント信じられない!だって今日本当は文化祭だから休みだったんだよ?なのにこんな日にまで、この山奥に来るなんて。もう今日は他のお店回ってとりあえず何か買いに行こう!」

そのアサミの提案に喉が渇いていたミキは今日の店番に対する憂鬱さが少し吹き飛んだような気になった。

ミキ「じゃあ私が少し店番しとくからアサミ何か飲み物買ってきて〜!さっきタピオカジュース売ってたょ!」

そう告げるとミキはアサミに買出しを頼んで店番に回った。

ミキ「いらっしゃいませ〜!!フリマやってま〜す!見てってくださ〜い!」

過去に居酒屋でのバイト経験があったミキは販促で人前で声を出すのには慣れていたため、恥ずかしげもなく大学に響くほどの声で接客を始めた。

それから数十分後ジュースを両手に持ったアサミが戻ってきた。

ミキ「おそ〜い!何してたの?どうせまた煙草吸ってサボってたんでしょ?」

アサミはばれたかというような顔をしてミキにジュースを渡した。

アサミ「でもさ、さっき煙草吸ってたら、男の人に声かけられたんだょ!でも、この指輪見たら謝られたし。」

そう言ってアサミは彼氏とのペアリングをしている左手の薬指を見ていた。

アサミは彼氏と高校時代から付き合い、かれこれもう5年間交際をしていた。

アサミの口から出てくる彼氏の話はほとんどが彼氏に対する愚痴かバイトの社員に対する愚痴だった。

でもどちらも愚痴を言うけれど本当の意味での嫌悪感はミキには全く感じられなかった。

きっとアサミの愛情の裏返しなんだろうと感じていたからだ。

最も、一年間付き合い、同棲までした彼氏と半年前に別れたばかりのミキにはアサミがとても羨ましく思えた。

付き合っていた頃はミキよりも相手の方が好き好きと毎日言ってくるような人だったため、ミキはいつでも彼氏との交際に対して何か優位な立場を感じていた。

だから相手の変化に気付けなかったのだろう。

ミキが後悔したときにはもう、よりを戻せないほど相手の気持ちは変わってしまっていた。

そう、ミキは半年経った今のまだ元彼に対しての気持ちにケリをつけられないままだったのだ。

ミキ「いいな〜。アサミはずっと付き合ってる彼氏もいて。彼氏ほしいな^。でも当分私には無理だろうな〜。恋したくても相手も居ないし、なんか面倒だし。もうすぐクリスマスだけど今年は友達とかなぁ〜。」

するとそれを聞いていたアサミは

アサミ「ま〜た、そんなこと言ってる。ミキは失恋するたびにそう言うよね〜。でもどうせ2ヶ月後には他に男が出来てるんだょ。」

そう言うと、さっき露店で買ってきたと思われるポテトを食べながらアサミは自分の受け持っているフリマの接客を始めた。

それを見たミキも慌てて接客を始めた。

何組かの家族づれ、大学の友達に接客をして少しだが商品も減ってきていた。

あとはもうどんなに頑張っても売れないだろうと思われる古着やお歳暮で貰ったと思われるモノのみであった。

ミキ「あ〜疲れたね〜。アサミ声出さないんだもん。もう私声が出ないよ。」

アサミ「ってか、よく声出せるよね〜。私だったら恥ずかしくて声出して接客なんかできない。」

そんなやりとりを交わしている時、ふと店の前に一人の長身の男の子がやってきた。

見た感じ、タメか1個下くらいの学年のように見えた。

ミキは、もう良い商品がない机の上に目を通した。

「何がおススメなんですか?」

男の子はそう言って今まで机に視線を落としていた顔をミキへと向けた。

ミキは困ったと思いながら、渋々、今あるものの中で一番良いだろうと思われる黄色のブタの灰皿を指差した。

ミキ「これなんかオススメですよ〜。可愛いし!灰皿なんですよ〜。」

そう言い終わるのと同時に、その男の子は

「いや、俺たばこ吸わないんで。いらないすね。」

そうミキに告げた。

ミキはこの気まずい雰囲気に耐えられず、居酒屋で身につけた得意の愛想笑いをした。

すると、その男の子はいきなりミキに

「あの、もしよかったらメアド教えてもらってもいいですか?」

そう言った。

その言葉が少しミキには大きく感じて他のゼミの子の視線が一瞬自分と、その男の子に向けられた気がして恥ずかしくなった。

ミキ「いまちょっと携帯持ってないから、あとで掛け直すからとりあえず電話番号だけでいいかな?090・・・・・・・・。」

そう言いながらミキはスカートのポケットに入っていた携帯をギュっと握りしめた。

その男の子はミキの目の前で携帯をワン切りしてから去って行った。

アサミ「へぇ〜教えたんだ。なんかあの子、私のタイプじゃないけどいいんじゃない?また何かあったら報告してよ。」

そう言ってアサミはまた喫煙所へと消えていった。

それからミキはさっき男の子がワン切りした携帯番号をユウと書いてアドレスに登録した。

2日目の学園祭も無事に終わり、残るところは露店で一番人気だったブースはどこかという発表だけであった。

この賞で一番をとれば、10万円分の食事券がもらえるという事で、ミキ達のゼミは頑張ってきたのだ。

そしていよいよ発表の時。。。

学園祭の実行委員の一人が3位から順に露店の名前を発表していった。

いよいよ一位の発表になった時・・

「門前ゼミのフリマ&お菓子取り放題です!!」

その声が大学中に響き渡った。

それを聞いたミキは、ゼミの子と手を取って大喜びした。

大学生活、何か残していきたいとずっと思っていたミキは、この表彰がとても嬉しかったのだ。

それからゼミの子と写真を撮り、ブースの撤去作業をして。。

気づいたらもう日が暮れてバイトへ行く時間になっていた。

さっきユウと約束した電話の時間もとっくに過ぎてしまっていた。






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