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合唱の極意



『夏なのにみんなよく頑張るよね…。まだ宿題終わってないから帰っていいかな…


ガシッ


「何帰ろうとしてるのさ〜。みんな頑張ってるよ!ほら歌おう、歌おう」

『今の私は歌より宿題なんだけどなー。私の生死がかかってるんだよ!教室で居残りという

「わかったから、ハイ!スルー!!」




校内合唱コンクール

来たるこの日に向けて、貴重な夏休みを犠牲に…クラスのみんなが集まって歌を練習している。

来てない人もチラホラいるみたいだけど、今の人数でもなんとかカバーできるだろう。


そう、
みんなで何かをやりどけようとする心意気には俺だって賛成だし、むしろそっちを目的としたのがこのコンクールであろう。

しかしみんなはそう思いながらやっているんだろうか。





その証拠に、
教室の後ろの掲示板に貼ってあるでかでかとしたガンピ

そして学級委員長が今一度声高らかにコンクールでの目標を宣言した。



『優勝してケーキget!!』


これがうちのクラスの目標らしい。


ガンピに筆で書かれたこの文字が掲げられている。いったい何回見てるんだろ。

担任がみんなのやる気を出させるために言ったことなんだろうけど、
先生は軽い気持ちだったに違いない。

みんなにまとまってほしいという純粋な気持ちを込めて。

しかし、それは生徒に伝わらなかったらしく…ケーキがほしいという欲の方が強くなってしまってるという状況を生み出してしまったのだ。



これでいいのかと疑問に思うのは俺だけ?

そう思っていると、



『ツナくんはどう思う?たかがケーキでここまで熱くなるのは』

「みんなで頑張るのはすごくいいことだけど、みんなの場合ケーキが賞品になってるからね…」

『そうだよね、みんなで頑張ってこそのコンクールなのにね〜』


いたよ、俺に賛成してくれる人が!

俺はテノールで彼女はアルト。冒頭で俺と話していた女の子だ。
今はパート全体で繰り返し歌うということをしていて、パート音程と身長の低さで隣になったというわけだが…。

上記の言葉は感動もんだよ!冒頭の台詞を消し去るような言葉だったよ今の!
と感極まっている場合じゃなくて…。


『けどやっぱ…』

「…ん、何?」

『やっぱ、歌より宿題。宿題より妄想?だよねー!!

「アハハ、ここまでくると重傷者だよ。南無阿弥陀仏…

それ嫌味?


この人も対して変わんないじゃん。
ケーキが宿題を終わらせる時間になっただけだし。
そして結局妄想になった…。

わかってたけど、ちょっとへこんだ…。

その後は声が出なくなりそうなほど歌って歌って歌いまくった。
各パートリーダーからもっと声出せとか音伸びてないとか注意を受けて、今日の練習はお開きになった。

間に余計な雑談も多かった気もするけど、まぁそこは気にしない…!


「10代目お疲れ様です!やっと終わりましたね…」

「そうだね。…獄寺くん見当たらなかったような気がしたけど、ちゃんと歌ってた?」

「えーっとですね…」

『ツナくん知らなかったの?』

「な、何が?」

『獄寺くん後ろの方で不良座りしてぜんぜん歌ってなかったじゃん!!』

「そうなの獄寺くん!?」



「その…、あの…、・・・すっ、すいません!!」

「(後で氷漬けにするから覚悟しておいてよね…)」

「(ビクッ…!!)」

『獄寺くん顔色悪いよ、保健室行った方がいいんじゃない?』

「いや、大丈夫だ…」





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その後疲れたのな〜と合コン(合唱コンクールの略)の練習の感想を述べながら来た山本も交えて、喋りながら帰っていると、ふとこの話が盛り上がった…。


「なぁなぁ。合コンで優勝したら担任からケーキもらえるじゃん、ツナたちは何のケーキ食べたいんだ?」

「山本、まだその話早くない?」

「いいじゃねぇーか!想像だけならタダだろ!」

「そうだけど…」


想像だからいいのか…?


『はい、はい!!』

「おっ、なんだ?」

『私はモンブランが食べたいです!』

「モンブランかぁー。あれ旨いよな!」

『いちごのショートケーキでもいいよね〜。あとミルフィーユも!!チーズケーキとか!!』

「確かに、確かに!どれも旨そうだよな!」

「『アハハハハハ!!』」


ケーキより宿題、宿題より妄想じゃなかったの?
あえてそこはつっこまないでおく。
何でかって?もう疲れたからだよ。





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「野球馬鹿たち楽しそうですね」

「うんそうだね。獄寺くんも話に入ってくれば…?」

「いいえそういうわけには。第一歌ってない俺がケーキとかの話に入れるわけが…ケーキはほしいんすっけどね…!!アハハハ



・・・



…獄寺…、歯ぁ食いしばれ…

なぜハイパーモードに…!!お助けをっ!!

ギャフン…!!






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『今何か悲鳴聞こえなかった?あとピキピキッていう氷のような音がした気がするんだけど…』

「気のせいだって。心配すんなよ。
まぁ今ごろ忠犬の氷像が出来上がってると思うけどな!

『?』





何かの目的のためなら人は頑張れる。改めて実感できたことだった。
それがどんな目的であっても…。

俺の夏休みは終わった。結局残ったのは様々な思い出と宿題だけだった。















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