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カレーパン初恋話


あれ、あれれれれ?
もしかして、いやもしかしなくても弁当忘れてきた?




こんにちは!

半分意識がなかった数学の授業が終わって解放感に満たされるのは最高だよねー!!後2限で帰れるかと思うと残りの授業も頑張れる気がするっ!

まぁそんなことより、嬉しい嬉しいお昼ご飯の時間。
教室で仲のいい人たち同士が集まって昼食時を過ごすというスタイルから…場所移動のため、いつものように机のサイドに掛かっている弁当袋に手を伸ばす。

ん?

ここで気付いても遅い展開に自分自身嘆きながら、お約束通りに呟こうと思う。



「マジでじま?」



私の一声は教室内の雑音と共に消えていった。







『ヤバいよ、めっさヤバい』

「どうしたの?」

『弁当忘れてきちゃったんだよ…!』


何でこんなへましちゃったんだろ…。漫喫行ったからかなぁ?


「あちゃー、なら購買で買って来るしかないね〜」

『今から行って、甘くないパン売ってるかな…』

「大丈夫だよ!頑張れ志歩ちゃん!」

『うん。じゃあ行ってくるね〜』


くっ、くそぉ…!!
先に弁当食べれるなんて、友人たちより私の休み時間が減るじゃないか。
休み時間は英単語覚える時間にしようと思ってたのにぃーっ!!今日は難しいスペルいっぱいなんだよぉぉぉ(泣)








私は小テストの悲惨な結果が目に見えていて悲しがりながらも、購買に駆けていった。


まぁ予想通りだろうか…、人がたくさんいて買える状態ではないね。

購買前は昼ご飯を求めている人たちでごった返しているのは当然。

けど問題は、その中にネチネチと選んでいるこいつら女子どもにあった。


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おおぉぃっ…!一度手に取ったパン買えばいいだろぉぉぉ。勝手に変えんなよ…!!

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ただてさえ購買は戦場と化しているのに、ゆっくり吟味してると命が星になって瞬く最期になるのをわからないのかっ…!


…とツッコンでる自分が実はボケ属性ではないことを知るのだった。
(あっでも人によってボケかツッコミって変わるものだよね!)









あれからなんだかんだで数分が経過することになる。


人が少なくなるのを待っていた私だが、人込みの中から出て来る知り合いに不思議と目を止めた。

その人も私の視線に気付いたのか、私を見てニコニコしながら駆け寄って来た。



「よっ志歩じゃねぇか!こんなところでどうしたんだ?」

『武くん!
…実はお弁当忘れちゃってさぁ〜、それで購買のパンを買いに来たわけですよ』


理由を話した後、武くんは「そっかなら…」とつぶやきながら、徐にナイロン袋から焼きそばパンを取り出した。


『まだ空くのに時間かかりそうだし、志歩が待ってるのもなんだか可哀想だしさ。
それに昼休み終わって授業始まるってことになったらますます大変だろ?』


そう言って私の手を掴み、焼きそばパンを手の上にのせた。

武くんは見るからに意識してないんだろうけど、男の子に手を握られてパンを頂くなんて私はドキドキするよっ…!!
今の私は顔真っ赤かも…!


『パンもらっていいの!?』

「おっ、いいぜ!」

『ならお金払うよ、えっと何円かな…』


と言いながらブレザーから財布を取り出しお金を払おうとするのを、武くんは制した。


「金はいいって。金を催促する男なんてカッコ悪いし、パンのお金ぐらい奢るぜ!」

『あ、ありがとう…!!』


ホントありがとう。武くんの気持ちを踏みにじらないように、快く受け取ろうと思った矢先だった…。





・・・・・!!


なんだこの殺気は…!!なんか私だけ狙われてない?





受け入れたくない。
しかし怖い視線を無視するほど、私は無神経さも持ってない…。

意を決して周りを見渡すと、
先輩方から後輩まで武くんになんらかの好意を持つ人たちだろうか…私に向けて「あんた何やってんのよ」的な電波を感じ取った。

-私はテレパシー能力を手に入れた-



身の危険を感じた私はすぐさまパンをお返しし、『やっぱ武くんに悪いからごめんね…』と言い謝った。

武くんは残念そうな顔をして、「何も役に立てなくてごめんな」と言った後、教室に帰っていった。







一向に減らない人混みの中に私も勝負を挑んでくればいいのだけれど、何せ私は身長が低い。
ヒョロッコと言われ、体育は自他共に認める運動音痴。



そんな私が行ったら命が終わる。



ボーッと再度人混みを見つめていると、今度は銀髪の忠犬がお出ましになった。







「何してんだおまえ」

『購買に群がる愚民どもを私が直々に待ってやってる』

「なんでそんなに偉そうなんだよ」

『獄寺くんがツンデレだから』

「なっ…//」


自分でも意味わからないような返答をする限り、自分もツンデレ属性なのかもしれないと感じた。
(もちろん人によって変わる)


『で、獄寺くんはあの戦場の中から何をゲットしてきたの?
ブイゼルそれともドウタクン?

「なんでポケモンなんだよォォォ…!!
俺はうどんパンを二つ買ってきた。もちろん10代目と食べるためにな!」

『あぁツナくんに迷惑かけて…。ツナくん今頃忠犬ノイローゼにかかって瀕死状態だよ』

「うるせぇーっ…!!10代目はそんなお方じゃねぇーよ!!」

『それはツナくんが優しいからだよ』


獄寺くんと会話するとボケだな私…。

ふと時間が気になって、ブレザーのポケットから携帯を取りだし時間を確認すると…


ちょっあと五分で昼休み終わるじゃんっ!!

「おい、それホントかよっ!!沢崎と話してる暇なんてなかったじゃねぇーか!
今行きます、10代目ェェェー!!」



獄寺くんは風のように走り去ってしまった。




私も残り少ない時間。お昼ご飯のため、勝負に挑んだ―







が、群れの中に行ったものの身長が足りないのでパンなんて取れないし。
無理矢理人の間を縫って行けるような体格のいい体も持ってないので、人に流されてしまう。


昼休みも終わりに近づいていたため、人も少なくなっていた。


それは嬉しいのだが、
パンも残りわずか、時間も残りわずかということで、かなりの焦燥感にかられていた。








昼休み終了まであと一分
授業開始まであと一分




『やっとパン手に入れられるぅーっ!』


そう叫びながら、私がやっとパンのところまでたどり着いた頃には人っ子一人いなかった。当たり前のごとく…見渡してもパンなんてない。

そう一つもなかったのだ。結局私だけがパンを手に入れられず仕舞い…。

なんてこの世は不公平なんだ…!と嘆き、
目に悔し涙を浮かべて落ち込んでいると



キンコーンカーンコーン…



『にょへ、マジでしま?


私に追い討ちを掛けるように突きつけられた事実は、残酷なまでにパンGETもできず授業開始とするチャイムが鳴ったということだった。
イコール、初めての授業遅刻

今日はなんて運が悪い日なんだと愕然とした。

今から行けば間に合うだろうに、私はもう教室に行く気にもなれなかった。
適当に嘘をついてサボろう。調子が悪かったんですと言えば許してもらえるはず…。



トボトボと精気を吸いとられたかのように、購買から立ち去ろうとした時だった。


『…!』


不意に肩を叩かれ、私は後ろを振り向く。
あれ?、購買のおばさんはいるよね。その人以外は誰もいないと思っていたのに…。





不思議に思いながらも振り向いてみると、そこで見たのはとてもカッコいい男の子だった。

髪は柔らかそうなハニーブラウンで、身長はそんなに高くないかな…?
額にはオレンジの炎を灯していて、目も炎と一緒なオレンジ色をしていた。

そしてとてつもなく色気があるのは気のせいだろうか…



…って何で事細かに男の子のこと考えてるのォォォっ…!!

私はワケわからずに心の中で叫びまくっていると、唐突に男の子が口を開いた。


「…どうしたんだ?」

『にょへ…?あっ…ど、どうもしません…よ//!!
私のお昼ごはんがなかったことに嘆いてるわけじゃありませんからねっ!!

「・・・。」


言ってしもうたぁぁぁーっ!!(泣)
何ポロッと余計なことまで言っとるがぁぁぁー!!



「…昼、食べてないんだろ?」



そう言って彼は手に持っていたパン…を私の手首を掴み持ち上げ、手の平に置く。

なんかこの光景前にも…。



『あの…えっとですね…//パ、パンはど、どうすれば…』

「…それは志歩にやる。金はいい…」

『…!な、なんで私の名前知ってるんですかっ?私とあなた初対面ですよね…!?』



私が驚きつつ言うと、その人は悲しそうな顔をした。
えっどうしてそんな表情するんだろ…。私この人に会ったことあるのかなぁ…



なんだか急に心が痛くなった



『あのっ、す、すいません…!そんな顔しないで下さいっ!!
あなたは悪くないんですからね。それに美貌が台無しですよ、、、』

「・・・!」


すぐに悪いと思ったら謝る。それが私のモットーだ。

深々と頭を下げた。
私が悪いのに、こんなカッコいい人に悲しい顔をさせている自分が許せなかった。



『お気持ちは嬉しいですが、こんな私です。失礼に値しますので』



そう言って、受け取ったパンを彼に返そうとする。

しかし彼にもまた制されて。



「…それは志歩に食べてもらうために買ったんだ、どうか受け取ってほしい…」



そう言うと彼は早足で行ってしまった。
ボーッとしてる私を尻目に時間は過ぎていく。

ハッとなった私はすぐに彼を追いかけた。

彼は屋上に続く階段を上っていたので私も後を追う。





『ハァハァハァ…っ』


息切れしながらも彼に追いついて安堵した。彼は私に気付いたのか私の方を向いてくれた。

真っ青な空は私を包み込んでくれるようだった。


『お礼言いそびれちゃって、お礼言いに来ました』


息はまだ整っていない。
私は再び深々と頭を下げる。


『ありがとうございました』


カレーパンを握りしめながら感謝の気持ちでいっぱいだった。


「…俺こそありがとう、志歩」


五時間目は屋上で二人ともサボっていたとか。













(あの、ところで名前なんて言うんですか?)
(・・・)
(すいません…。あの、学年とかもダメですか?)
(・・・)
(また会えるといいですね♪)
(…あぁ)




志歩は俺を知ってるし、俺は志歩を知っている…。

だか本当のことを言う気にはなれなかった。
このままでもいいと思ってしまったんだ。



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あきゅろす。
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