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英語なんて嫌い!



「ツナ、一緒に選A教室に行こうぜ!」

「うん、行こう!
(体育の次は英語か…)」


山本が俺の肩をポンと叩いて声をかける。


昨日は体育の補習で、翌日は英語の補習ときた。

誰よりも補習を受けてきた俺にとって、慣れたといえば慣れたのだろうが、実際補習を受けるというのはやはり気持ちのいいものではない。

毎回毎回補習だなんて身体がもたない気もするけど、補習仲間の山本も一緒だし、気を楽にして受けようか。

ってことで今日も頑張ろー。


「それじゃあ行こっか!」

「あぁ!」





ガラガラ…


「早く入りなさい」


うわぁ…、もう先生来てたよ。

戸を開けた瞬間、早々に注意を受けてしまった俺たちは急いで空いている席につく。

なんか寂しいと思ったら、今回の英語の補習って俺と山本とあと誰だろ…。
横に向いて確認したいけど、雰囲気的に今はしちゃいけないような気がしたのでやめておく。


「この前やったテストの解説をします。今回はあなたたちが一番悪かった長文にポイントを当てて問題を解いていくからね」


そう言いながら前回やった長文読解のテストプリントが配られた。

見たくねぇ〜。英文だらけで頭痛くなるんですけど…。


自分に半ば絶望した俺は逃避したくなるような思いで、周りの人に焦点をあて始めた。

右隣りにいる山本は、なにやら難しい顔をして配られたプリントと睨めっこしている。

アハハ山本、俺と同じ境遇なんだね。嬉しいような嬉しくないような…。


で、気になったもう一人の補習該当者。
俺の左隣りに位置してる人なんだけれども、その人の顔を拝見すると…
口をポカンと開いたまま唖然とした。


いや?何でこの人が?
そう思うのも、昨日から俺と同じ道を歩まなくてはいけなくなったあの人ではないか。

頭いいじゃんこの人。
なぜ?





「とその前に聞いてもいい?先生、あなたが補習を受けると聞いてびっくりしたんだけど…沢崎さん?」


そう、昨日のあの沢崎さんだった。
物静かな子とは外見だけで中身は毒舌かつ腐女子な…。


先生は沢崎さんに目線を合わせながら質問した。


『あのー。お言葉ですが、頭悪いから補習受けてるんですけど…』


うん。それは正論だね。

「違う、違う…そういうことじゃなくて!!」

『それにもとから英語悪いし…。いつも50点ですよ』

「そ、それは知ってるけど…。今回呼び出されたのは30点以下の人で、まさか沢崎さんが入るとは思ってなかったから…」

『あぅ…。頭悪くてすいません…』



「おおっ、沢崎じゃん!沢崎が補習だなんて珍しいのな。まぁ頑張ろうぜ!」


さっきの表情から一片して顔を上げる。
先生からもう一人の子が沢崎さんと聞いて、山本は気さくに声をかけた。


『あっ、よろしく山本くん』

「進まないから英文読解していくよ。ほらほら集中、集中!」


先生の声でまた勉強モードに入っていく。

けど憂鬱なのには変わりはないからな…と心の中で溜め息をつき、いざ勉強と言う名の地獄へっ!!





「He noticed a young woman from abroad.
はい山本、英訳して」

「えーっと彼は虻の道からの若い女性に気付いたが、拒絶した

「He thought she was in trouble.
次、沢田」

か、彼はっ…彼女がトラベルしたい…?と言い出したためショートした…?

「He had few chances to talk with people from other countries.
最後に沢崎」

彼は他の国の人々と話すチャンスが少ししかなかった





・・・





ヤバい…。
先生の顔が引きつっていらっしゃる。
眉毛がピクッピクッとつり上がっているんですが…。

異様なくらいの雰囲気がこの教室には漂っていた。





「山本と沢田…、まぁ頑張ろう…

「「・・・」」


先生が可哀相なものを見るような目で俺たちを見ている。

しょうがないじゃん、わかんないものはわかんないんだからさ…。
アハハハハ・・





「まずは山本が英訳してくれた文だけど、`abroad'で虻の道っておかしくないですか。そんなの普通問題に出さないし…

「いやわかんないぜ。虻に追われて逃げてきたのかもしれないじゃん、この女の人」

「そっか。もうこの話題に触れないでおこう。惜しかったのは`noticed'の訳し方。これの意味は?」

気付いたが、拒絶した

はぁ?有り得ないでしょ。動詞の意味が二つくっついているなんて…。
これは『気付く』という意味で、今は過去形だから『気付いた』ね」

「『気付いた』か〜。なんか俺惜しかったスッね!(ニカッ)」

「はぁ…。この先ツッコミながら解説しなくちゃいけないのか…。なんだか先が思いやられる…」

『先生頑張って下さい』

「あ、うん。ありがとう沢崎さん。頑張ってみるよ」







「さっきの英文の意味は『彼は外国からの若い女性に気付いた』
はい、さっさと次の英文いこう。次は沢田のだね」

「俺全然自信ないんですが…」

あっ、うん…。さっきの訳しだと原型をとどめてないような気がする。
まぁそういう時もあるって!アハハハハハハ…!」

『先生、それってフォローになってるんですか?沢田くんをけなしてるようにしか見えないんですが…』

沢崎さん、お口チャック!

『・・・』



--------------------

「まずは`thought'の意味から。これは過去形だけど、現在形に直すと…?」

「あっ!`think'だぁ!!」

「そうね。なら意味は?」

絹?

「それは`silk'」

「ならえーっと…」



わかんなくって腕組みをしながら考えていると、沢崎さんが小声で俺の耳に囁いてくれた。

『沢田くん『思う』だよ!』
「ありがとう沢崎さん!」



沢崎さんが助けてくれたおかげでなんとか答えることができた。


「次に沢田がトラベルって訳してたけど、あれはトラブルね。`in trouble'で『困って』と表します。
だから『彼は彼女が困っていたと思った』と訳します」

「これって意外と難しいのな〜。俺もツナと似た感じで訳してたからなー」

そうだったらいろんな意味で末期だと思う…

『先生さっきからかなり毒舌化してませんか?』

「もうほっときなさい!!」





--------------------

「最後に沢崎さんが訳してくれたのだけど、`few'の場合『ほとんど〜ない』というふうに訳した方がいいかもしれません」

『えっ。そ、それだけですか?』

「えぇ。後は直すところはないわ。」


先生の態度が柔らかくなった。
沢崎さん、英語不得意とか言ってたけど俺たちと比べればちゃんとできてるじゃん!

「やっぱ沢崎さんって頭いいんだね〜」

「さすが沢崎なのな!」

『そんなことないよ//』

「でもそれじゃあ、何で今回のテスト30点以下だったの?」

『そ、それは…』



・・・




「それはね、沢崎さんなぜか長文読解のところ一問も解いてなかったからよ」

「えっ…!!」


先生が途中で会話に入ってきた。
けど驚いた。俺だって記号で埋めるのだけは勘で書いといたのに…!


『えっと…英語の長文見ただけで吐き気がきたからです。正に拒絶反応!
それだけ英語が嫌いなんですよ!



沢崎さんの言葉でみんなはアクションを起こした。
先生の口はあんぐり状態。
山本はなんか笑ってる。
俺はというと…


やっぱ沢崎さんってすげぇ…


苦笑とともにこの言葉を漏らした。







先生がいなくなった教室。

先生は会議が入ってたらしく、終わらなかったぶんの補習はまた次回へと繰り越しになった。





「予定より早く終われてよかったのな〜!」

『よかったよ〜。リアルタイムでアニメ見れなくなるところだったよ〜

「あれ?沢崎さん。山本がいる前でその発言よかったの?」



・・・



にょおぉぉぉぉぉっ!!またやっちゃったぁぁぁ!!(泣)』





ポン ポン ポン チーン

沢崎さん、壁の隅で俺たちに背を向けながら体育座りしてるよ。


「沢崎もアニメ見るんだな〜。ぜんぜん恥ずかしいことじゃないじゃん!
何より沢崎に親近感わいたぜ!(ニカッ)」

『引かないの…?』


俺は当初少し引いてしまったけど、俺もアニメとか好きだし
沢崎さんがそうであったとしても悪く思うようなこともない。


「ちなみにアニメの何が好きなんだ?」
『う〜んと…不特定多数かな。強いて言えばジャンプ系のアニメが好き!』

「ジャンプか!俺毎週WJ読んでるぜ!」

『私も!』


沢崎さんって男の子傾向にあるかもしれない。





『それにしてもよかったよ〜。私一人で補習受けなきゃいけないのかと思ってたのに、沢田くんと山本くんがいてくれて!』

「今日はなんだかんだ言って楽しかったもんな!なぁツナ!」

「そうだね?(ここ笑ってもいいところなんだろうか?)」




「まぁ今後もよろしくな沢崎!」

「いつもの調子でね(笑)」

『ありがと、そしてよろしくね!』










(二人のこと名前で呼んじゃダメかな?)
(いいぜ!)
(もちろんいいよ!)
(武くんと綱吉くん?)
(俺はツナでいいって!)
(なら沢崎のことも志歩って呼んでいいか?)
(好きなように呼んでいいよ!!)
((なら志歩(ちゃん)って呼ぶ(ね/のな〜)!))










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