部活動停止期間。
それは一般的に定期テスト開始日1週間前から設けられる。
知ってのとおり…この期間は定期テストの勉強に徹してもらうためにあるが、実際まともに勉強する奴は少ないだろう。
帰宅後に友達と遊んだり、寝たり、趣味に没頭したりなど…時間の使い方は別用途に変換される。
ここで部活動停止期間に何をしているか、二つサイドの時間使用例について記すことにしよう。
まずある女子生徒から。
合唱部所属の沢崎は、部活動停止にあたって…当初は家に帰り、昼寝をし、CGイラストの制作を目論んでいた。
まぁ勉強のことなど毛頭ない。おそらく典型的な追い詰められタイプで、テスト前日になって苦労するのだろう。
テスト前に焦っている光景が目に浮かぶ。
それはともかくとして、実は思い描いていた計画に支障が出たのだ。
こともあろうに…父親が風邪を引いて、家で寝込んでいるという…。
あれ?そんなこと生まれて初めての出来事だよ、ヤバす…!!
事態に動揺した沢崎だが、直ぐ様計画を変更。
父が家で寝込んでいるとしても(風邪で体が弱ってても)、学力に対してうるさい父親なので、彼女が家に帰ってきたと知ったら…勉強しろとしつこく言ってくるのは至極当然。
※経験済み
しかし、これを機に帰って勉強すればいいものの、家に帰ることは絶対に嫌らしい。
言い換えれば、家で勉強することも学校で勉強することも嫌であると言ってもよい。
結局彼女の脳内わがままをまとめたら…家に帰らず、学校終了時刻まで学校にいることになる。
そういうことで、それは実行された。
20分経過
『くそ、私は図書館にいられるタイプじゃないぜ』
心の中でそう呟いた沢崎は、読んでいた本を閉じる。
あれから、時間を潰すために図書室にやってきていたが、30分も本を読んではいられなかった。
さすが沢崎。だから知識は空けつなのである。
『失礼しました』
本を読むことでは時間を潰せそうにないとわかり、図書室を退出した。
わずか20分の滞在時間。まだまだ先は長い。
それと…ここは職員室じゃないから、失礼しましたと言う必要はないと思う。
図書室から出たはいいが、行く当てが見つからない。
沢崎は目的もなく、さっきからトボトボと廊下を歩いていた。
観念して勉強すればいいのに…。勉強する場所は家でも学校でも構わないだろうに…。
こんな状況下に対しても、テスト勉強するという選択肢は考えられていなかった。
いかに勉強から逃げようと現実逃避に向かっている最中なのだ。
…とその時
『あっ、思いついた…!』
グッドアイディアが浮かんだ5秒前。
『ここはポピュラーに屋上行って昼寝っうーのはどうだろ。それはいいに違いない…!!即座に有言実行するぞっ、オー!』
この台詞前に廊下で立ち止まり、1人でしゃべってる姿は…なんだかイタイ人に見えなくもない。
それに『オー!』のところで右手を上に突き出すメジャーな振りも、やっていた。
1人自己完結し、納得した沢崎は屋上へと向かった。
打って変わって…次はある男子生徒たち。
沢崎が向かっている屋上でバットタイミングで戦闘が行われていた。
「くらえ、3倍ボム!!」
「僕にそんな技は効かないよ…」
数の多いダイナマイトの攻撃を進行形で受けている男子生徒は、ダイナマイト保持者の相手を挑発しながら、直撃を避け、どんどん相手に接近していく。
両手に握っているトンファーをギラリと輝かせ、すばやい身のこなしをする…最強風紀委員長・雲雀恭弥。
彼の口元には弧が描かれており、戦闘中の表情がいきいきしているようにも見て取れる。
かなりの戦闘狂なのだろう。
しかし相手の少年、ダイナマイトで戦うスタイルが特徴の獄寺隼人も負けてはいられなかった。
さらさらの銀髪をなびかせながら、荒い息を吐く獄寺は…苦い記憶である先日の応接室での戦闘を思い出していた。
正直…雲雀と一戦交えたときはボロ負けだった。
同じ守護者であるのに戦力がこんなにも違う。
自分のプライド、10代目の右腕としても、せめて互角に…!!
「戦いはこれからだぜ…」
「いいね、その意気…」
獄寺は指輪・嵐のボンゴレリングに炎を灯し、腰にある匣兵器に炎を注入した。
炎が注入された匣から、腕に装着する型の武器が取り出される。
近接より中距離に長けている獄寺は、己の武器は標的狙いの発射物。
ドクロを模していて、発射口付近には赤い炎が煌めいていた。
「てめぇに負けてらんねぇんだよ…!フレイムアロー!!」
雲雀に赤炎の塊をぶっ放す。
覚悟の強さに比例する炎は傍目から見ると迫力、エネルギー量が感じられた。
しかしこの程度のこと。
向かい来る炎に雲雀は冷静に対処する。匣を開匣し、かわいらしいハリネズミを出現させた。
「ロール防御だ」
キュッ…!
主人の命令に答え、増殖する針球体に獄寺の攻撃は防がれてしまった。
「それが君の覚悟?くだらないね…」
いつのまにか間合いをつめられ、トンファーによる打撃が獄寺を襲う。
一発は派手にくらったものの、残りの打撃はなんとか避けきった。
「ふん…」
雲雀は気に入らないような表情をして、トンファーを力強く再度構え直した。
今度は彼の指輪・雲のボンゴレリングから紫の炎が灯る。
その炎はトンファーを包みこみ、強化されたようだ。
攻防一戦、ちなみにかたずを飲んで見守る外野の姿もあった。
「獄寺くんも雲雀さんもあまりダメージないみたいでよかったー」
「そうだな!雲雀に関しては怪我ひとつしてないみたいだぜ。しかし、こう見ていてハラハラしちまうよな…!」
「俺も戦いたいのだぁぁぁ、極限に早くしろー」
まぁ要するに並盛組である。
さて5人の部活動停止期間中は守護者とボスの一対一対決に時間を浪費するということだ。
「なんで俺がみんなと戦わなくちゃいけないんだよぉぉぉぉぉ」
「まぁまぁ落ち着けってツナ!小僧がいつでも闘いに備えられるように鍛えとけって言ってただろー。マフィアごっこ楽しいじゃねぇーか!」
「まだ勘違いしてるー!!」
「これは勝ち抜き戦なのだろ。守護者同士で戦って、一番強い奴が沢田と戦える…」
「お兄さん、俺は誰とも戦いませんって!!」
ここで守護者といってもクロームとランボは不在である。
並中のテスト期間を利用しているので、並中生である奴しか戦闘に加われないのだ。
「こうしてても埒が開かねぇ…一気に決めるぜ!!」
しばらくの間、雲雀との攻防が続いていたが、獄寺はこの攻防に嫌気が差してきた。
彼の性格も考えられるが、体力・精神的に長引かせることはできないと判断したためである。
獄寺はもうひとつの匣兵器を開けると、出てきた小さい猫・瓜に命じた。
「瓜、形態変化だ」
瓜がニャア!!と叫ぶと、瓜の額にあるマークが光り、猫の姿から武器へと形態変化した。
その武器は再び装着型であるが、銃のような形ではなく弓矢だ。
初代嵐から受け継がれたものであり、絶大な威力を誇る。
赤い炎の矢が雲雀に放たれる。
紫の炎を帯びたトンファーで矢をそらすが、思った以上に威力が強いため手が痺れる。
「くっ…」
余裕の表情から一変、キツイ表情をする雲雀。
いくら強いといっても、形態変化の武器では敵わないだろう。
雲雀が攻撃によってよろけた瞬間を獄寺は見逃さなかった。
「これで最後だ…!」
雲雀に狙いを定めて打とうとしたとき、屋上に出るドアから音がした。
その音がした同時に目線をそちらにやったせいで、雲雀の匣アニマルのロールが形態変化していたのに気づかなかった。
『やっほー屋上!…あれっ?』
屋上のドアを開けた瞬間、面前に広がる光景に唖然とした。
粉塵とともに屋上は瓦礫と化していたからだ。
『あっ、あれは…先日の応接室の光景ではないか!』
真っ青な顔で思い出す沢崎に獄寺は大声を出す。
「沢崎、てめぇ何しに来た…!テストあんだろ、家帰れよ…!!」
獄寺から焦ったような怒った表情が見てとれた。
獄寺といえば、たくさんの手錠が彼の身体に巻き付いている状態で、身動きが取れなくなり立ったままが保てず、地に伏せていた。
「僕の勝ちだね」
「てめぇ卑怯だぞ、一般人の沢崎が来たんだ…気にしろよ…!!」
「今は部活動停止期間中だよ。テスト勉強のために家に帰ることになっているはずだ。…それを守らなかった合唱部の自己責任だよ」
「てめぇには他人を心配する心はねぇのか…!」
「戦場において心の隙は命取りだよ」
「くっ…」
獄寺が言葉に詰まったところで、沢田たちがやってきた。
「獄寺くん、大丈夫?」
沢田は急いで獄寺のそばに近寄った。
「俺は大丈夫っす。すいません、右腕なのに負けちまいました」
「右腕とか関係ないよ…!!よかった無事で…!」
「極限にいい戦いだったぞ!」
「てめぇに褒められる義理はねぇんだよ、芝生頭」
「何をっ…!!」
彼らの言い合い中、山本はドア付近で立ち止まっている沢崎のところにに行った。
「志歩、大丈夫か?顔色悪いぜ…」
『ごめん心配かけちゃって…私は大丈夫だよ!』
「…無理すんなよ」
『うんありがとう!』
山本は沢崎が作り笑いしているのはわかったが、それに触れはしなかった。
言ってしまったら、彼女に気を使わせてしまうと考えたからである。
沢崎の無理矢理笑う姿なんて見たくないのだ。
あれから獄寺は雲雀の手錠から解放された。
沢崎になぜ屋上に来たのかを聞いたが、彼女の答えは勉強したくないからと度肝を抜くものだった。
「えぇー!!そんなことでー!でもわからなくもないな、俺もやりたくないし…」
「俺もやらないのなぁー。志歩のように昼寝するかな(笑)」
「俺は極限にトレーニングをするぞ。いつも以上に時間を割けるからな」
「10代目はともかく、おめぇら頭おかしいんじゃねぇのかっ…!!」
山本と笹川兄は沢崎と同じ考え方にはしっている。
沢田のツッコミは的確だが、やはり勉強は乗り気じゃないらしい。
獄寺の言ってることは一番まともだった。
これらの発言に関して、並盛・並中を愛する支配者…雲雀は勉強をしない奴を咬み殺しそうな気がする。
並中の威厳が学力で劣るようなことがあれば、雲雀の顔が立たない。
しかし今雲雀はいない。
獄寺の解放の後、側近の草壁が雲雀に商店街でわんさか不良が群れているとの報告をしたため、そちらに出向いたということだ。
「どういうことになるのだ?タコ頭は雲雀に負けた。しかし雲雀はおらんではないか」
「じゃあ戦いなんてしなくていいじゃん…!」
「いや沢田と戦えるのを楽しみにしているんだ。こんな絶好の機会はないだろ…!」
「どうせ家帰っても勉強しないだろうから、まぁ修行しようぜ!」
獄寺は交ざってないが、沢崎には3人の会話が不思議だった。
さっきから頻繁に『戦い』とみんなの口から出てるが、身近にいる中学生がなぜ戦いになど固執するのかわからなかった。
ただ一般の人とは違う。
確証はないが、そんな感じがするのだ。
『…あのさ、修行って何?…前々から思ってたけど、ツナくんたちって何者?』
核心をついた質問にみな焦った。
彼女は自分たちがマフィアであることを知らない。
惨い世界を知ってほしくない。無垢なままでいてほしい。
『ごめん、触れちゃいけないことだったかな…』
「ううん、今は言えないだけ。
…けどみんなに笑っていてほしいんだ。傷ついて、みんなの顔から笑顔が消えるのは耐えられないんだ…!」
怖いほど沢田の真剣な眼差しに沢崎は見入ってしまった。
少ない言葉数だが、目から訴えられる力強いものに言葉などなくともわかる。
『私の知らない世界にツナくんたちはいるんだね…。
けどちょっとでも、ツナくんたちの世界と共有できたらいいなぁと思うの』
それが悲しい事実でも、私だって一緒に分かち合いたい。
『その修行ってやつ、見ててもいいかな?ほら家帰っても勉強やらないのは私もだし!』
ニコニコ笑う沢崎に止めることはできないとみんな悟ったようだった。
『もし何かあったら、守ってくれるんでしょ?』
「うん、もちろんだよ」
沢崎にとって沢田の返答はなんだか安心できたみたいだ。
こんなところで堂々とサボるな!
(続きの戦闘は続編で!!)
(なに宣伝してんだよっ…!)
(獄寺くんはいつ活躍できるのだろうか?)
(真顔で言うな沢崎!)
(ごめんなひゃい…)
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