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掲示板の使い方




「ヤバい、もう遅刻だっ!!」

「やっぱりいつまで経ってもダメツナはダメツナのままだな」

「うるさい、もうほっとけよ!」


昨日の夜更かしが原因で朝起きれず、登校完了の15分前に起床。
急いで身支度を済ませながらの会話は、彼…沢田綱吉・通称ツナと黒いスーツを着た赤ん坊、実はツナの家庭教師…リボーンによるものだった。

この関係は中1から始まっており、二人の出会いこそが日常の変化に多大なる影響を及ぼすことになった。そして今も。

本人たちはどう思っているかわからないが、端から見れば仲睦まじき師弟だろう。


「いってきまーす!」


いつまで経っても悪態をつくリボーンに少々うんざりしながらも、校門前で取り締まっている風紀委員には見つかりたくない…!
そう思い、気だるい体を起動させ、素早く玄関を後にした。

全速力で駆け出していった生徒の後ろ姿を眺めながら、なぜか不敵な笑みを溢す先生。

この笑みはこれから起こることを予兆していた。






なんとか風紀委員の目を避けて校門を突破したツナは、とぼとぼと教室に向かう途中、変な光景を目にした。
連絡掲示板付近で人だかりができているのだ。

その掲示板がある通路を通らないと教室に行けないため…通るのだが、やはり人間の心理に探求心は働くもの。

中学入学当初より幾分か背が伸びた身長も、男子平均を下回っているので、できる限り背伸びをし、群がりの原因を見つめる。


「・・・」


群がっていた理由は即座に分かったが、ツナは掲示板に貼り出されている内容が最高にひっかかっていた…。


「10代目ェェェェ!!」


しかし、
決して口にはしないが、内心驚いているツナを放っといてはくれず、いつもの恒例行事というか
ツナを10代目としてお慕いする忠犬こと獄寺隼人の参上だった。

自称右腕はツナを発見するなり、周囲を気にせず遠くから声を発して駆け寄ってきた。

ツナは引きぎみだが、気を取り直して近寄ってくる獄寺に話しかける。

「獄寺くんおはよう」

「お、おはようございます!…じゃなくて、大変なんっすよ!!」


獄寺の声を聞き、沢田関係だろうなと目星を付けた生徒たちはツナと距離をとる。

そしてツナが遠目で見ていた貼り紙も、いつの間にかはっきりと見える位置に陣取っていた。


「わかってるよ、これだろ」


そう言って、人差し指で貼り紙を指す。


(沢田綱吉 追試験…)


その他もろもろは割愛させて頂くことにして。

一般人、ここは驚くと同時に嘆き悲しむところだが、ツナはむしろそこではなくある部分に注目していた。


「なんで雲雀のヤロウが10代目に追試験をっ…!!」

「俺、なんか雲雀さんに悪いことしたかな?」


貼り紙には記載者が明記されているものだが、まさか先生ではなく、風紀委員長…雲雀恭弥とは。
ということは、雲雀がツナに追試を受けるよう要求してきているのだ。


思い当たる節がないので、ただ単に自分の成績が悪いだけかと納得してしまっているツナ。

雲雀は先生たちをも凌駕しているから何ら不思議ではない。

もちろん反対に獄寺は怒っていた。


「今から雲雀の奴を果たしにいきましょう。前々から気に入らなかったんで、いつも良いとこどりだしよ…」


最後の方は自分都合なことが入っていたが、ツナはあえてツッコミはしなかった。


「まあまあ今はSHRもあることだし、教室に戻ろう。結局今日の放課後に応接室に行かなきゃならないんだから」


貼り紙には日時指定が書いてあった。


「しかし…」

「いいから、いいから」


心配そうに見つめる獄寺をツナは説得し、教室へと戻った。










放課後になり、部活に行く者や帰宅する者が多い中、ツナと獄寺、そしてツナの親友である山本武が教室で向かい合って話していた。


「そんで今からツナは雲雀んところに行くってわけだな」

「うん…あんまり気は乗らないけどね」

「野球バカに心配されるほど弱かねぇんだよ、10代目は」

「それはわかってるのな〜」


ツナは山本に朝の事情を説明した。
山本はちゃんと理解してくれて、ツナに一緒について行くと言ってくれたのだが、顔をしかめるやいなや…


「実は大会近いから、部活に行かなきゃなんねーんだ」


ごめん!
両手を合わせて、申し訳なさそうにする山本。
ツナは「俺は大丈夫だから…!」と言って、山本に快く部活に行ってもらった。

残った獄寺は…もちろん、ついて来るということなので、無言承諾ののち教室から出ていった。








一方職員室掃除に当たっていた彼女、一般人生徒の沢崎 志歩は掃除後、教務主任からとある頼まれごとをしていた。

不運といえば不運だった。沢崎は今日は部活に行かず、風邪気味もあって病院に行こうと思っていた。
要するに早く帰りたかったのだ。しかし、頼まれた以上断れない性格なので引き受けることにした。

用件は風紀委員長に書類を渡してほしいとのこと。
一般生徒は雲雀との関わりを避ける。沢崎もまた、こんな役ごめんだった。

それでも引き受けたのは、話によると…風紀委員長の部屋である応接室にその当事者がいる確率は放課後になると少ないのだという。
自ら並盛をパトロールして群れを咬み殺しているらしい。

それならば…!と職員室を後にして、応接室へと向かうことになった。








コンコン

「入って」

「…失礼します」

「…」


放課後最初に応接室に到着したのは、ツナと獄寺だった。

神妙とした面持ちでやってきたツナは雲雀に問う。


「あの、追試を受けるって何を?」

「10代目そうじゃなくて、…なんで10代目が追試を受けなくちゃならないんだよぉぉぉぉ!!」


ツナの隣にいる獄寺はうるさく吠える。


「うるさいな。僕は沢田綱吉を呼んだんだ。君みたいな犬を呼んだ覚えはない」

「なんだとっ…!!」


すぐさま飛びかかってくる勢いの獄寺にツナは制す。


「別に誰だろうと咬み殺せれば問題ないけどね」

「どういうことですか…」

「つまり、こういうことだよ…」


ヒュン…!
雲雀の手に握られている武器トンファーからの一振りだった。

獄寺は咄嗟にツナを庇い、ツナごと後ろに倒れ込んだ。


「君がいつまで経っても僕と勝負してくれないからね、強制的に呼ばせてもらったんだよ」


追試験ということなら先生も認めてくれるだろ?

そう言う雲雀にツナは少し怯えた表情を残した。


「俺は雲雀さんと戦うつもりなんてありません、」


ツナは勝負を拒んだ。元より戦うことが嫌いなのに。
それでも戦うのは、守るべき人がいるから…。


ツナの訴えは無残にも書き消されることになる。


「それがどうしたの?戦うのは本能だ。君の言い訳も聞き飽きたよ」

「無理ですよ、俺は雲雀さんを仲間として…」

「…!10代目、下がって下さい…二倍ボムっ!」


雲雀はツナの言葉を無視して迫ってくる。云わば肉食獣の目をしていた。獲物を捕らえんとする目を。

獄寺は雲雀が本気であると判断すると、ツナを守ろうと雲雀の前に立ちはだかった。

ボムやらトンファーの斬撃やらで応接室はひどい状態だった。








雲と嵐の闘いが激化する中、泣き顔をしているのは次に応接室を訪れるつもりだった沢崎の姿だった。


『少ないはずの確率が…雲雀先輩がいるじゃありませんかぁ』


この上ないショックだった。しかし応接室に入れないほどヤバい状況にあるのは見てわかり、ひどい音とともに部屋が崩壊していく…!

今入ったら危険なのも分かるが、早く帰りたいし、机上に置いてくることさえ出来ればっ…
沢崎は意を決して応接室の侵入を試みた。

戦いの激しさからか建物の瓦礫や窓ガラスの破片などがそこらじゅうに広がっていて、煙が部屋全体を覆っている。
応接室の横隣りは貫通していて、もぬけの殻だった。

委員長の机は一刀両断にされ、とても書類を置ける状態ではなかった。


『前々から思ってたけどこの学校ろくな奴いないよねー』


もう早く帰ることを諦めた沢崎は、仕方ないから本人に書類を手渡そうと争い場へと移動する。

いくら雲雀先輩でも悪いことをしていない一般生徒に危害を加えないだろう…


にしても爆煙が酷く、視界が悪い中、戦っている二人の影を見つけた。

もっと近寄ろうとした時だった。


『…。…あれっ?』


なんか足元に違和感を感じたと思ったら、ダイナマイト落ちてるんだけど…
導線部分が火花を上げて筒本体に到達する。もうすぐ発火するんだと分かった。

“死ぬ”と認識してしまった体は怖じ気づいてビクとも動かない。
逃げたい、死にたくない。



ほんの数秒時間が止まった気がした。


「志歩っ!!」

死の予感は誰かが私を呼ぶと同時に、ふわっと体が持ち上がり、爆撃から逃れる間に緩和していた。





ドーンッ

床に落ちていた一つのダイナマイトが爆破したのを契機に、床が崩れ落ちる。

あそこにいたら私は死んでいた。
そう考えると沢崎は震えが止まらなくなった。


「…済まない、怖い思いをさせてしまって、」


震えている心に声変わり前の男の子の声が優しく響いた。抱き抱えられている状態で、彼と彼女の目があう。


『あっ、あなたは…!』


沢崎は思い出していた。額に炎を灯し、目もファイアオレンジに輝いている。
(あの人からカレーパンをもらったんだ…っ)


『すいません、毎度助けていただいて』


彼の綺麗で整った顔を見ていると、急に恥ずかしくなり目をそらす。


「いや、今回は俺が悪い。怪我はないか?」


真っ赤に火照った頬を相手に見られている。沢崎は男に対しての免疫は皆無だから尚更こんな状況は耐えられないのだろう。


『…はい大丈夫です、ありが「沢田綱吉、やっと戦う気になったんだね」

「…雲雀」


沢崎の言葉が突然の雲雀の介入により途切れ、また妙な雰囲気になってしまった。

いつの間にか沢崎の震えは止まっていた。
ツナは無言で彼女を下ろすと雲雀に向けて言い放った。


「雲雀、次は必ず勝負を約束する。今日はやめろ」

「…ホントかい?まぁ仕方ないね。日曜の10時、並盛のグラウンドでしようじゃないか」

「あぁわかった」


会話が終わるとすたすたと去っていく雲雀を彼女は呼び止めようとした。
雲雀の服に返り血がついていてゾッとしたが、勇気を出して言った。


『あの、雲雀先輩』

「なんだい…ってあの時の合唱部か…」

『今回合唱部じゃなくて、教務主任からの書類を渡しに来ただけなので』


そう言い、沢崎は雲雀に近づいて、今までずっと手に持っていた書類を渡す。


「ふぅん…確かに受け取ったよ。教務主任に伝えといて」

「あっ、ハイ」


雲雀は書類を受けとると、そそくさと破壊された部屋を後にした。


『はぁ〜っ、やっと終わったぁー』








その後、彼女は怪我を負っている獄寺を保健室に連れて行った。

(シャマル先生は男は診ないと言っていたが、私の頼みならということで渋々了承してくれた
獄寺くんはずっとツンデレを貫いていたけどね)



「あ、ありがとな…」


腕に包帯を巻かれながら、獄寺は照れ臭いように小声で言った。





<あの人は知らないうちに消えていた。>

彼女に超直感という代物はないが、再び会えることを予感していた。














(こんな体験あまりできないよね!)




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