体育論
キーンコーンカーンコーン
キーンコーンカーンコーン…
部活が終わってみんながぞろぞろと帰っていく最中、俺たちはグラウンドを走っていた。
ハァハァ…ハァハァ
『沢田くんガンバロ!あの体育教師なんかに負けないで!
(っていうかうぜぇんだよ、あの体育教師!?体育に補習があるなんてのは前代未聞!明らかに差別だ!!)
差別だぁー!!!ゴフッ』
「(沢崎さんの心の声が聞こえる…)
沢崎さん、前向いて走らないと!それだけの毒舌噛ましながら走ってるとそうなるよ…!」
『ゲホッゲホッ。沢田くんは純情だね。私も見習いたいよ…!』
「アハハ・・俺、沢崎さんの体育論についていけない…。」
上記にも書いたとおり、俺たちは前代未聞の`体育の補習'を受けている。
中1までなかったよね!?運動がダメダメな俺でも体育の補習なんて受けたことがなかった。それなのに!今年から成績が悪かった生徒には補習を受けさせるなんて!!
体育はみんないいから補習受けるやつの方が珍しいとか…!っなら、俺はどうなるのさぁー!!確実に補習決定じゃん!!!
いくら体育の授業を全部出席したからって、技能面でよくないとダメってことでしょ!?
どうせ俺一人だけ補習なんだろうし。この現実から逃れられるとは思わないし。潔く認めた方がいいか…。
そうこの時までは一人で体育の補習を受けなければならないと思っていた。
そう、この時まではー
案の定、俺は体育教師の岩槻に呼ばれていた。
この先生、俺たちのこと技能でしか見てくれないんだよな。おまけにめっちゃ怖いし。
そういうことで職員室にいる岩槻の席へと向かう。
『いい加減にして下さい。私は忙しいんです。体育の補習は他でやって下さい。』
「意味わからんぞ、沢崎。おまえが体育の成績悪いから補習を受けることになるんだろうが。」
『そんなの私の遺伝子に聞いて下さい。好き好んで運動神経悪いわけじゃありませんから。』
あの岩槻と互角に話ている女の子…俺のクラスにいて物静かな子として知られている沢崎さんだった。
驚きながらも岩槻の席へと来た。
『すいません、先生。体育の補習なんて前代未聞ですよ。前言撤回して下さい。』
「何度言ったらわかる。体育の補習はもう決まったことなのだ。」
『だからで「あのー…。」
話入り辛いなぁ…。
「おっ、沢田!おまえいいところに!
安心しろ、沢崎。ここにいる沢田も体育の補習だ!一人ではない!」
はっ?っうか何で急に話変わるんですか。
『沢田くん?』
「やぁ、沢崎さん…!」
『沢田くんも体育の補習って本当?』
「うん…まぁ。先生に呼び出されたし…。」
『悔いることはないよ。私たちで体育の補習やめさせよう!』
「はい!?」
沢崎さん、体育の補習絶対に受けないつもりだ…。さっきのセリフを先生のいる前で堂々と、それに言い終わってから俺に向かって親指立てない…!
「沢崎!いくらおまえが発言しようと決定は覆らない。諦めろ。」
『先生は差別する気ですかぁ!?勉強と違って体育は才能がなければできない教科です。ねっ…沢田くん!』
俺にフってきた…!
「あっ…あ、そうですよ…!人それぞれ個々の能力違うし…。」
『…と言うように体育はできる奴とできない奴がいて、どんだけ努力しても虚しく・・・何やっても無駄という結論を得ました。っうか諦めました。』
怖ぇェェェ!!
先生の前で体育諦めました宣言してるぅ…!
ある意味すげぇー!
「はぁ…。今ので沢崎がどれだけ体育を嫌っているかはわかったが…補習を受けなければ成績が極端に落ちるぞ。」
『!!ゔっ…。』
「沢崎は頭はいいからな。学年でも頭のよい部類に入るのだろう。しかし体育で成績落とすのも勿体ないんじゃないか…?(笑)」
『(グサッ…!)』
急に沢崎さんの勢いが衰え始めた。
っていうか沢崎さんって頭いいんだぁ…。でも外見からいっても頭良さそうに見えるからなぁ…。
『先生明らかにひどくありませんか。っていうか脅しですか。コンニャロー。』
「沢崎さん、なんかキャラ違うよ!」
『体育のためなら人は変われるんだよ、綱吉くん。』
ポンッ
「俺の肩の上に手を置いて何してるんですか!?なんか名前の呼び方変わっちゃってるし…!」
『あ、ごめん。ツナマヨくん。』
「もうこの人ダメだ。何言ってもきかない。」
「二人とも仲いいんだな。先生少し驚いたぞ。夫婦間の言い合いみたいだ。」
「『!』」
「ってことでグラウンド5周してきなさい。」
はぁ・・・?
『何言ってんだワレェェェ!!大胆発言しときながら、ちょっくら付け足ししてグラウンド走らせようとしてんじゃねぇぞぉぉぉおォ!』
ガシッ
岩槻に向かって飛び掛かろうとする沢崎さんを俺は押さえ付ける。
「沢崎さん落ち着いて…!」
「そうだ落ち着け沢崎。もとよりこの使命があるんだからな…。それより沢崎と沢田ってホント仲いi『「ふざけたこと言ってんじゃねぇよハゲがぁぁぁぁあっ!!」』
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それから岩槻に言われた通り、グラウンド5周を走らされている。冒頭に至るというわけだ。
けどかなり面倒くさい。わざわざ体服に着替えてさぁ…、運動部じゃあるまいし。
気が進まないながらもトボトボと運動靴に履き替えてグラウンドに出る。
もう先に着替え終わったのか沢崎さんはもうグラウンドにいて準備体操をしていた。
『アノヤロー、呪い殺してやる。』
「えっ?」
ちょ待ってぇぇ!今、さらっと怖いこと言わなかったぁあぁぁぁ!?
『交通事故にあって死なないかなぁ。そしたら私が罪を受ける必要ないもんねー。てるてる坊主逆さに吊しとくんだっけ…。』
これは幻聴なんだ…!目を覚ませ俺…、沢崎さんがこんなこと言うはずないじゃないかっ…!
『そんなことないよ、沢田くん。』
「うん?えっ?ってギャァァァッー!!!」
いつの間に沢崎さん、俺の背後に回ってた…!?
『沢田くんが思い描いている私とぜんぜん違うと思うよ。』
「えっ?ど、どうして?」
『こう見えても私、アニオタだから。』
・・・
「…って、えぇェェェ!?自分からアニオタ宣言!?別に沢崎さんから言わなくても外見だけじゃわかんないよ…!」
『うわぁ喋りすぎた…。(私ってホント正直だなぁ…。自分で自分の首絞めちゃったよ。)今の聞かなかったことにして。時間を1分前に戻して。』
「最後に言ったことはできないからね。俺が時間を操作できるとかアリエナイからね。」
『・・・。あっそうそう、沢田くんも手伝ってくれない?てるてる坊主作るの。』
「えっ、そこスルー!?…あっ、はい。」
『すべては体育教師呪い殺すためにさぁ。たしかてるてる坊主逆さに吊るすと不吉なことが起こるんじゃなかったっけ?』
「お言葉ですが、てるてる坊主逆さに吊るしても雨が降るだけですよ。沢崎さんがしたいことにはならないと思います。」
『にょおぉぉっ!?そうなんですかぁ?』
「(新たな驚き方発見…!)」
『さぁ沢田くん、走りにいこう!早く終わらせて、家に帰ってリアルタイムでアニメ見なきゃね!』
「アハハ・・」
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俺は沢崎さんの愚痴に付き合いながらもグラウンド5周を走り終えた。
夕日は傾いてきている。薄暗くなり始めたころだった。
「沢崎さんお疲れ様。」
『お疲れー沢田くん。結構頑張ったよね私たち。』
「頑張ったと思うよ。何気に走りながら愚痴を言いまくっていた沢崎さんにびっくりしたけど。」
『ぜんぜんびっくりすることじゃないと思うけど?』
もう近くには誰一人いない。
校舎を見ても、電気がついていなかったため先生たちも各々の家へ帰ったのだろう。
『わぁー最悪。岩槻まで帰りやがった。』
「ほんとだねっ…。」
『ますますムカつく奴だ。』
「そうですね…(笑)」
なんか沢崎さんの暴言にも慣れた。
『よし私たちも帰ろう!』
「じゃあ沢崎さん。また明日学校で!」
『うん。…あっ、ちゃんと宿題しなきゃダメだよ!』
「わかってるって…。(リボーンの奴にこってり絞られるんだろうなぁ…。)」
『沢田くんどうしたの?顔色悪いよ。』
「なっ、なんでもないよ。」
『?』
「それにしても、沢崎さんの見方変わったなぁ〜。大人しい人だと思ってたのに、明るくて毒舌で。」
『最後の言葉はお褒めの言葉として受け取っていいんだよね(ニコッ。』
「( ̄▽ |||)アハハ・・(黒い笑みだぁぁぁーっ!!)けど沢崎さんは笑ってた方が絶対いいって!」
『そ、そうかな…。沢田くんにそう言ってもらえると嬉しいよ!』
「えへへ…//」
『明日も体育の補習頑張ろうね!』
「うん!」
私とあなたの体育論
(あなたとの出会いは体育からでした。)
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