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SHOUT−シャウト−
第1章(13)
いつもと同じ朝、いつもと同じ月曜日。

1週間のはじまりたる月曜日は毎回憂鬱になるものなのだが。

今日の田辺の気分はいつもの月曜日とは異なっていた。


その原因は田辺の隣でにこにこと笑顔を振り向くこの少年にあるのだろう。

「どうしたのリョウ?」

コテっと首をかしげるその少年・那音があまりに可愛らしくて頬がゆるむのを禁じえない。

だから照れ隠しに那音の頭をくしゃくしゃと撫でてやった。

その瞬間、刺すような視線が田辺を襲う。
那音の隣を歩く早川宗汰だ。








あの日、乱入してきた早川と薬師。

一発触発な中、それを阻止したのは那音であった。

「真兄!ぼくの友達に手を出す気なの?」

「友達だって?ナオおまえ騙されているんだ。コイツらの素行の悪さは調べがついているんだぞ」

「素行?調べ?そんなもの関係ない。真兄ぼくは知ってるんだよ。ぼくに友達ができそうになるたびあなたがそうやって遠ざけてきたことを」

「ナ、ナオ」

「でも今回だけはダメなんだ。もし同じことをするのならぼくは真兄、あなたとは一生口を利かないよ」

そう言って那音は自分の手にあったギターを前に突き出す。

「これは音楽はぼくの全てなんだから」

薬師はその那音の真剣な目に肩を落とす。そしてしばらく草薙・秋山・田辺を順に睨みつけると、わかったと小さくつぶやいた。

那音はそんな薬師の腕をとりそっと出口へと誘導する。

そして振り向きざまごめんねと一言。



しらけたような空気の中、草薙が口を開く。

「ナオ、またギター弾きにこいよ」

「ああ、おまえのギターはサイコーだぜ」と秋山。

そして田辺はこぶしを握り締め顔をあげる。

「俺にシャウトさせるのはおまえのギターだけだ」

その瞬間、那音は満面の笑みを浮かべた。

それは最高にキレイな笑顔だと思えた。たとえメガネというフィルターごしであっても。


それが金曜の夜のこと。





土日は顔も見せなかった那音が月曜の朝に田辺の元へやってきたのだ。

「リョウいっしょに学校行こう」と。
隣に不機嫌そうな早川を連れて。




教室の扉を開くと好奇の視線がいっせいにそそがれた。

転校以来、誰ともつるまない一匹狼な田辺があの那音といっしょに登校してきたのだ。

ヒソヒソと憶測が飛び交う中、涼しげな顔で自分の席につく那音。

早川はそんな那音をかばうように周囲を見渡したその時だった。



ガシャン



教室の視線がいっせいにその大きな物音へと向かう。

その視線の先には田辺がいた。

思いっきり蹴りつけられた机と椅子が何組か倒れている。




教室中の視線を集めた田辺が静かに言う。

「うぜぇんだよ、てめえら」

その瞬間、ざわめいていた教室はシーンと静まり返ったのだった。




















秘密全寮制




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