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残月
第1章・永遠の恋6-1
慶応3年10月、高台寺の庭は燃えるような紅葉につつまれていた。


だが高台寺党の面々にそのような雅な心など持ち合わせているはずもなく、 美しい紅葉はその存在も認められてはいなかった。




元新撰組の斎藤一もまた雅な心など持ち合わせているはずもなく、ただ一人無心に木刀を振っていた。

カサリ
庭の背後の竹林が揺れる。

月明かりが映したのは藤堂平助であった。だが藤堂は新撰組時代とはうってかわってしまっていた。だれにでも心開く明るい性格はなりをひそめ痩せ細り、その姿はまるでとりつかれているかのように鬼気迫るものがあった。

「斎藤……」
幽鬼が口を開く。
斎藤はその無表情な眉間を微かに顰める。

伊東甲子太郎について新撰組を脱し御陵衛士となって。藤堂は変わった。
長年の同士だった面々を裏切る行為に心閉ざしてしまったかのように、笑わなくなった。
と言っても斎藤と藤堂、さほど仲がよかったわけではなかったのだが。
二人を繋ぐ唯一の人がいなくなって以来ではないのだろうか、こうやって対峙するのは。

「りょうに会った……」
だから斎藤は藤堂の言葉が最初理解ができなかった。

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