平穏最後の日(完結)
7
マイヤーは楽しそうに遼介の部屋着を下着ごと脱がしていく。
『上は……そのままでいいか』
小さく萎えたそこをふにふにと揉んで感触を確かめている。遼介は一瞬びくっと体を震わせ『嫌だ……』と呟くが抵抗出来る程の力は残っていない。
『大丈夫。これが終わったら水をあげるから』
『ふっああっあ……っ』
『うん、可愛いねっ』
『ここはもちろん初めてかな』マイヤーが前を扱きながら固く閉じた後孔に手を伸ばしゆるゆると周りを擦って柔らかくさせる。
さすがにこのままでは入らないと指に唾液を絡めてもう一度そこへ戻し、つぷ、と一本差し込んだ。
『いっ……!』
遼介の掠れた叫びはマイヤーからのキスで封じられる。
『んっふううっ……』
――喉が渇いた。苦しい。痛い。
――俺は何をしてたんだっけ。
――分からない、見えない、ふわふわする。
――誰か助けて。何を…………?
遼介の瞳から完全に光が失われた。
かくんと一気に力が抜けてマイヤーは一度遼介から離れて観察する。
「あ、完全にこれはイっちゃったかなー」
――一度リヨの中で遊びたかったんだけど。
ふう、と息を吐いて入れていた指を抜く。
「このまましても趣味じゃないんだよ、壊れたばっかって何にも反応しないからね」
「……あー…あ……」
遼介の口からは意味の無い言葉が時々聞こえてくるだけで、もう何も見えていないようだった。
「マリーがリヨを連れて帰ったら俺好みに育て直して遊ぶとするか」
よしよしと愛おしそうに頭を撫でてキスを贈る。
「あ、そうそう。水だったね」
思い出したマイヤーがさも何でもないことのように水を遼介に与える。
すでに精神はずたずたに切り裂かれてしまったものの、”生きることを諦めて”壊れたわけでは無いので水を差し出せばこくこくと飲んだ。
「あー……」
「んん、そうかい。あと食事だね、もう薬は必要無いから普通にあげるよ」
「親父、高校の話しようと思って昨日から電話してんのに遼の携帯繋がらねえ」
苛立ったように謙介の元を訪ねた恭介が理由を離せば、謙介が片眉を上げて考え始める。
「あ?つい最近マリーに話したばっかだぜ」
「あのイカレ女にか?」
権力をかざして取り入ろうとしてくるマリーのことを当然恭介は良く思っていなかった。
どうにも嫌な予感がする、そう思った恭介は遼介の家に電話を掛けるが誰も出ない。
無機質な電子音が続くをれを乱暴に放る。
「くそがっ」
「何処行くんだ?」
外出の準備を始める恭介を謙介が窘めるように言う。しかし理由は分かっているので止めることは無い。
恭介は当然のように言った。
「遼のところだ」
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