平穏最後の日(完結)
6
マイヤーが離した手がぽたんと力無く遼介の膝に落ちる。その手は未だ震え丸まったままだ。
『な、何で……』
『リヨが言ったんだろ?食べたくないって。水だって一緒さ』
『あれはっ……ごめんなさい!とにかく水飲まないとっ』
ふっとその場に似つかわしくない笑いが漏れる。そのまま堪えていたかのようにくっくっとマイヤーは笑い始めた。
遼介は何が何だか状況に付いていかれない。
『ダーメ。Neinだリヨ』
「Tschüß!」遼介の額にキスを落とすと、呆然とマイヤーを見つめる遼介を取り残してぱたんとドアを閉めて行ってしまう。
『や、だ、待って』その声にドアが開くことは無かった。
閉めたドアにもたれ掛かりながらマイヤーが薄く笑い出す。
『んんっ人を壊すには飴飴飴で甘やかして最後に大鞭ってね。トドメを刺してあげよう、ああさっきの顔はとても可愛かったな』
『あっあっ……は……』
ショックを受ける暇も無く襲ってくる乾きと体の震えに何をしたら助かるのかさえ分からなくなっていく。
体に纏わり付く服すら擦れて気持ちが悪い。
『水…水……』
何としても何か口にいれないとおかしくなってしまいそうだ。
すでに目はほとんど見えなくなり体も思うように動かない遼介は、手に当たるもの全てを乱暴に触っては口に出来ないと諦める。
もちろんこの部屋の中に飲み物など何も無いのに。
『うあ……あっ…み…』
一階でゆっくりと食事をしてきたマイヤーが二階の遼介の部屋へと向かう。
この部屋を出てからすでに三時間経過している。もう限界をとうに超えただろう。
本来なら脱水症状を起こすのももっと時間が経ってからなのだが、マリーから与えられる食事に怯えあまり食べていなかったようで、今朝会った時点で脱水をいつ起こしてもおかしくない状態だった。
そして本人がそれに気が付いてからのこの放置はそうとう堪えるだろう。
どうなっているか楽しみだとマイヤーは笑う。
部屋の前で一呼吸置いてからドアノブに手を掛ける。中から物音はしない。
『ワーオ、良い眺めじゃないか』
足を踏み入れた先は物があちこちに投げられ散乱しており、ベッドに寄りかかるように倒れ込む遼介は力いっぱい引っ張った所為で服は伸び襟元が少し破れていた。
何も映していないような虚ろな瞳に半分開いた口からは「はっはっ」と短い息が漏れている。
マイヤーが近づいても気が付かない程意識が混濁しているようだ。
肩をゆすって話し掛ける。
『リヨ、リヨ』
『あ、あ、水…助け……』
『ああ、綺麗だリヨ』
息を荒くしたマイヤーはスラックスを広げ遼介の姿を見下ろしながら自身を梳き出す。
すでに熱く昂ったそこはすぐに質量を増し、今にもはち切れそうだ。
『ふっ…オオ……っ』
ひくひくと軽く痙攣する遼介の顎を掴み上げ、大きく怒張したモノを口もとに当てる。
『ほら飲み物が飲みたいんだろう?ミルクをあげるよ、口をもっと開けてごらん』
『ミ……』
耳元で囁けば微かに反応する。口は半開きのままだが構わずに突っ込む。
そこへ勢いよく白濁を撒き散らした。
『……っ』
『…ぐっ!げほっ……がっ』
喉奥へ届いたためむせた遼介の口を片手で塞ぎ『しっかり飲みなさい』と言うと、くぐもった呻きが聞こえたもののしばらくしてごくんと喉仏が上下した。
ぽんぽんと優しく頭を叩く。
『良く出来ました。ご褒美をあげよう』
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