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平穏最後の日(完結)
遊園地は怖いです8(完結)



「……は?」

よもやそんな言葉が来るとは予想出来ず、笑われるか最悪馬鹿にされると思っていた。
久遠が何かを怖がることが想像出来ないのか、大分いい方向に勘違いしてくれたらしい。これを逃す手は無い。

「違う? すごい汗掻いてるけど」

「あ? ああ、実はな。ちょっと寝不足なだけだ、気にすんな」

適当に理由を付けてごまかせば、「俺と会うだけなんだから、無理しないで家でもよかったのに」とさらに心配された。

普段遼介にのみであるが、相当優しくしていたのがこんなところで自分に返ってくるなんて。
神は信じていないものの、少しくらいは感謝してもいい。

「もう帰ろうか、行きたいところは行ったし」
「おお……それなら俺の家来るか」
「行く! まだ具合悪いなら心配だし、俺の所為で無理させちゃったし」
「別にお前の所為じゃねぇよ。そんな顔すんな」

安心させるために笑いかけ頭を撫でてやる。少し遼介の表情が和らいだが、久遠の心中は穏やかでない。

――……罪悪感、半端ねぇ!!

他の連中であれば、勝手に勘違いしてくれてラッキーくらいにしか思わないが、遼介なら話は別だ。

己の仕事上危険と常に隣り合わせで心配させることが多いのに、明らかに無駄な心配までされてしまい、久遠の中にあるちょっとの良心が痛んで仕方がない。
だが、訂正するつもりは毛頭無い。

絶対にこれだけはバレるわけにはいかない。

こんな、幼児の様な一面だけは絶対に。

自分自身の中で一向に直すことが出来ない唯一のものなので、とにかく隠して隠して墓場まで持っていくつもりである。


――くそ! これも全て幽霊やらお化けやらっつぅもんが世の中にはびこってやがる所為だ! コネというコネを使いまくって世界中の関連物を叩き割って回りてぇ……。

そうは思うが、叩き割るにも一度は対峙しなければならないため諦める他ない。

――あー、俺が死ぬまでに幽霊の存在も廃れてくんねぇかな……。

むなしく願う、三十路職業極道であった。


「大丈夫? 肩貸す?」

「あー、そういやダリィ。もうちょっとくっついてくれ」

外で人目もあるのに、体調を気遣ってくれているおかげで存分にいちゃつく。
想定外のお化け屋敷はトラウマものであったが、こんなおまけが付いてくるならば頑張った甲斐があるというわけだ。

自分より背の低い遼介にもたれながら、車までの道を堪能する。

「今日はまあ、いろいろあったが楽しかったんじゃねぇか」

「本当? よかった!」

「たまにはどっか行くのも悪くねぇ」

「そっか、そういえばここの他にも有名なお化け屋敷があってさ」

「は? おば、お化け……」

遼介の爆弾発言に「もうお化け屋敷は止めてください!」と土下座したくなる衝動に駆られながら、横で説明してくる遼介の言葉を必死に左から右へ受け流すのだった。



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