平穏最後の日(完結)
遊園地は怖いです5
遼介が動くたびに揺れるウサ耳も揺れて、何だか久遠は新しい扉を開けてしまいそうな気分に陥る。
場所が場所なら、今すぐ押し倒して啼かせまくっていることだろう。
そういえば、最近ご無沙汰だ。
――コスプレとか変なプレイなんざ興味無かったが、遼介ならアリか?
首を締めながらセックスすると気持ちがイイだのと言ってのけていた男の言い分とは思えないが、久遠は自分がおかしな性癖を持っているとは思っていないので、そんな考えに至るのも仕方ないらしい。
レストランでそんな眼差しを受けているとは知らず、受付を済ませた遼介はさっそくどこから料理を取っていこうか真剣に悩み中だ。
「全部美味しそうに見えるなー……ちょっとずつ全部取るか」
意外にもかなり食べる方なので、全種類食べることにしたようだ。
部活で汗を流すからか体質か、いくら食べても太ることはなく、そんな遼介を見てよく野々村が「羨まし過ぎる!」とぼやいているのも珍しくない。
「いつも思うが、すげぇ食うな。おい」
「育ち盛りだから」
「身長伸びたか?」
「伸びたよ! 恭兄とか詠二さんの横にいるから小さく見えるだけで、俺結構高い方だし」
確かに、比較対象がでか過ぎて気付かれないだけで、遼介の身長は出会った頃に比べれば伸びている。
しかし、兄弟である恭介の方が背丈も体格も一回り上なため、まだまだ鍛える気満々だ。
「別に、こんくらいでいいじゃねぇか」
「そう? 俺はもうちょっとあってもいいなあ」
「抱き心地良いなら何でもいいが、片手で収まるくらいがいい」
「……そっか」
久遠がそういう風に言うと、何やらレストランで話すべき内容ではないことに聞こえてきて照れてしまう。
意味深な笑みに見守られながら、居心地悪くも結局全種類食べ尽くしたわけだが。
「時間だ」
「お……おぅ」
二人の目の前に立ちふさがるのは、パスを取った一時間前にも見た廃病院だ。
ここまで来ては逃げられない。
かといって、覚悟が出来ているかと聞かれればまた別である。
はっきり言って逃げ出したい。
ダッシュで逃げ去りたい。
「結構待つのか」
「いや、パス取ったから優先的に入れるよ。並んでも五分くらい」
「五分……」
五分後には久遠の中で一番苦手なモノと対峙しなければならない、いっそ仕事で敵に囲まれた方がマシだとまで思えてくる。
「……っ」
「どうかした? 大丈夫?」
「ああ、いや、食い過ぎただけだ」
ビュッフェで普段より食べた所為ですでに喉からヤバイ物が出そうだった。
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