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平穏最後の日(完結)
遊園地は怖いです2



遼介に倣い振り返る。そこにはいたるところにたった今見た奇抜な帽子を被る老若男女の姿が。

「おお……チャレンジャーだな」

異様な光景にたいした感想も出てこない。
これが、ここでは普通なのだろうか。確かに遼介の言う通り、周りの半分くらいは何かしらの装飾物を身に着けている。
それは女だけでなく男にも言えることで。

嫌な予感がした。

「詠二さん、どれが似合うかなー」

「いや! いくら遼介でもな? やっちゃいけねぇことがあんだろ」

本気選びに入った遼介を必死に止める。

そもそも遊園地に来ること自体内心全力で反対なのだ。
これ以上の失態は絶対に避けたい。

さすがの遼介も、本気で久遠が嫌がっていることに気が付き身を引く。

が、手の中にある物をすぐには諦めることが出来なかったようで。

「分かった」
「よかった」
「じゃあ、写真だけ! 一瞬被ってパシャって撮るだけだから!」
「ああ? 何言ってんだてめぇ」

懇願する遼介に思わず部下への口調になってしまう久遠、しかし遼介は諦めない。

「何でもするから。一つだけ言うこと聞く」

「ほぉ……何でも、な」

にやあ、と笑って「それならいいぞ」と頷いた。それを見た遼介の顔がぱあ、と明るく染まる。
自分が完全にアウトな発言をしてしまったことには気付いていない。

いそいそと頭の上に選んだ帽子を置いて満足そうに笑った。

「似合う! はい、チーズー!」

掛け声を上げたところで笑うはずもなく、しかし気にせずシャッターを押した。

「絶対誰にも見せるんじゃねぇぞ。いくら遼介でもどつくからな」
「分かった分かった。保存っと」
「むしろ、俺にも見せるな」
「結構似合ってるのに。じゃあ、俺だけの思い出にする」
「そうしてくれ」

やっと罰ゲームの済んだ久遠は、ふと目に付いた帽子を手に取りそのまま遼介に載せた。

魔法使いの帽子で、何故かウサ耳のオプション付きのやはり久遠には理解不能な物だ。
だが不思議と遼介には似合っている。

――男でもこんなふざけた帽子似合う奴いるんだな。

遼介の方も久遠が選んでくれたことが嬉しくて気に入ったらしい。

「これ買う」
「マジか。遼介ならアリだが」
「よかった」

「すみませーん」と店員に声をかけ精算済ませる遼介を後ろで見ながら、帽子の金額に密かに驚いていたりした。
帽子を付けたまま戻ってきた遼介に財布を突き出す。

「おら、帽子のくせに阿呆みたいな値段だな。ここにいたんじゃいくらでもかかるから、全部俺の財布から金出しとけ」

つまり、久遠の財布を遼介が持って支払えばいいということらしい。
遼介は両手を振って全力で拒否した。


「いやだ! そんな怖い財布持ちたくないから」

「どこが怖ぇんだよ」

「だってお札だけでその厚みって明らかにおかしいだろ!」



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