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平穏最後の日(完結)
3



「遼ちゃんもついに受験モードかぁ、俺どーしよ」
「俺もまだとりあえずって感じだよ。部活だって最後の試合まではちゃんとやりたいしな」
「そうだよ!まずは試合試合!夏で最後だもん」
「その頃は勉強と半々でやらないといけないから大変だけど頑張りたいよ」
「うんうん」

坂本と二人で最後の部活について熱く語る。
だがその一方で、部活を精一杯やりたいからこそ勉強は効率の良いやり方を知っているプロに教えてもらっていた方が、時間を有効に使えるに違いないと結論が出た。
そのため坂本も予備校に通うか悩みだしたようだ。

「俺も三年までには通おう」
「いいんじゃん」
「でもさ、バスケ推薦きたらどうする?全国行けばあながち夢物語じゃないよ」

そうなのである。

元々県大会で上位を争う強豪校なのだが、去年から遼介や坂本が始めた自主練が他の部員にまで移り全体のレベルがさらに上がってきた。
そのため、次の大会では全国へ行くだろうと言われている。

全国まで進めば中心選手は特別なことをせずとも注目される。

坂本の言う通り、バスケットでのスポーツ推薦も考えられなくはないのだ。


「受験勉強は頑張る。推薦きたらその時考える。推薦を予想しながらバスケも勉強もしたくないし」

「おっさすが!俺もおんなじ!バスケはバスケとして真剣にやりたいよねぇ」

そう当然のように言うと坂本が目を輝かせて賛同した。

部活をやってそれで推薦がきたら嬉しいし楽に進学することが出来る。
しかしそのために、大学進学のために部活をしているわけではない。それが頭にチラつきながら部活をしたくない。

好きで始めたバスケット。

好きなもので他のことに繋がるのは良いことだが、それ以上に純粋にバスケットを楽しみたかった。

「遼ちゃんはさ、勉強第一で大学選ぶんだろ?そこがバスケ強くなくても続ける?」

少々不安な面持ちで坂本が尋ねる。

その心が分かって遼介は苦笑いした。

「うん、続けるよ」

「そっか、そっかぁ」

いつまでも子どもではいられない。
大学を卒業すれば就職もするだろう。

バスケットは楽しい。学校生活も楽しい。

ただそれを同じく続けるわけにはいかないのだ。

もしかしたら坂本は遼介が大学ではバスケットをしないと思っていたかもしれない。

もちろん勉強するために進学するわけだが、遼介は出来る限りぎりぎりまで続けるつもりだ。

同じではいられない、変わっていかなければならないし周りも自然と変わっている。
その流れに巻き込まれないよう自分を整えながら、そして好きなことや友人との関わりも持ちながら歩んでいきたいと思う。

「大学までは続けたい。もし大学にちゃんと活動してるとこがなければ地域のチームとか探すし」
「俺も続ける!」
「お互い気が済むまでやろうな」

二人は「一緒のチーム」とは決して言葉に出さない。

いつまでも友人を縛るわけにはいかないと分かっているからだ。

就職を意識した進学、勉学のための進学、推薦による専門的進学。
理由は様々であるが、個々の目的のために進むのだ。

もちろん友人が一緒なら楽しい。

けれどもそれだけで道を決めてしまうのは尚早過ぎる。

「もしも、”被ったら”よろしくな」

「うん」

その上で、進学先が同じだったら両手を挙げて喜び合いたい。



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