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平穏最後の日(完結)
5*微



「覚悟、出来たか?」

「出来た……ってわけじゃないけど、いいよ」

いいよとは言うものの顔が真っ赤過ぎて沸騰しそうな遼介は、まるで何も知らない中学生か何かのようで大変可愛らしい。

以前の久遠ならこんな反応をされても初心な女は面倒だと思うだけであっただろうが、遼介なら何もかも愛しく思えるから不思議だ。

「なるべく痛くねぇようにする」
「やっぱ痛いんだ……でも痛くてもいい」
「おい……可愛いこと言うんじゃねぇ」

ついにこの時が来た久遠にとって遼介の言葉全てが自身を貫いていく。

「遼介」
「ん?」

「俺もお前が初めてだ。本気で好きになった奴なんていなかった。男なんて眼中になかったが、お前は別格らしい。男も女もねぇ、遼介だけだ」

「詠二さん……」

家族愛ではない、燃え上がる想いを人に抱いたのは久遠が初めてで。初めてが、好きになったのが久遠で本当に良かった。
そしてその想いがお互いに同じだと知れて本当に良かった。

大切にしたい人が久遠で、今目の前にいるのが久遠で。

自分を満たすのが久遠で。

これからもずっと一緒に歩んで行きたい。

茨の道でも、向かい風が吹き付けても絶対に繋いだ手は離さない。


「詠二さん、今の気持ちを表す言葉が無いよ」

「表現の多い日本語も遼介には敵わねぇか。嬉しいこと言ってくれる」

「っあ……!」

ふいに体を触られ声が漏れる。遼介が片手で口をふさぐので久遠が片眉を上げて言う。

「んだよ、隠すな」

「んなこと言ったって変な声出るんだよ、男なのに恥ずかしいだろ!」

今まで出したことのない声が自然と出てしまった上、いくら久遠の前でも女みたいな声が出るのは恥ずかしいと言う。
そんなことを気にするのかと久遠は思ったが、もし自分がと思ったら想像だけで吐きそうだ。

「でもなぁ……」

遼介の喘ぎ声など貴重なわけで、是非ともこの耳に残しておきたい。

「”俺が”聴きたいんだよ、遼介のならなんだって。ダメか?」
「う……やだ」
「ほぉ……おもしれぇ、その手ェひっぺがしてやる」

なおも拒否する遼介にやる気スイッチが入ってしまった久遠は、全力で攻めたてて口を隠す手を剥がすことにした。

経験がほとんどないなら刺激を少し強くしてやれば一発なはずだ。
遼介のトラウマが蘇らないよう、久遠という存在を意識させながらも徐々にきわどいことを、言葉を遼介に与えていった。


「や、やだっ優しくするって!……ぅあ!」

「あ?すげぇ優しいだろうが」

久遠の言葉にうそはない。

しかし、久遠にとって優しいだけで遼介には些か刺激が強すぎるようだ。抵抗することすら出来ずにただただ快感に流されないよう格闘している。

「ひっダメだ、そこっ」

「イイ、だろ」

「やだやだっ」

「駄々っ子だな」

前から後ろから両方は反則だと思うが、口からは「いやだ」と言うのが精一杯で、久遠はそんないっぱいいっぱいの遼介を見て楽しんでいた。



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あきゅろす。
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