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ローヴェルの猟犬
1ー13

 轟々と耳元で響くのは風。叩き付けられる様なその圧力に全身の傷口が開くようで、激痛を伴う。
 目を開けず、ただ棒に掴まり滑空するのみ。しかしそれだけでは済まない事を分かってはいる。まだその時ではない事も。

 滑空するカトラス製ハンググライダーに掴まりながらも、先程の事を思い返す。

 どういう意図であの場所に、今まで何処から現れてきていたのかも分からぬアルケオスが集められていたのか。そして何故、あれ程の数を放出したのか。奴が口にした、自身の知り得る二人の名も。全てが何で繋がっているのかが分からなかった。

 仲間であったフェルガも死んだ。何かを俺に隠したまま。結局何も分からなかった。あの場で先程の二人を始末していれば結果は変わったのだろうか。あの二人は何者なのだろうか。

 何も、解決する事などなかった。

 突如真横から音が貫いた。風を切る音に混じり響いたその音に、舌打ちをしたが一瞬でそれは後方に置き去りにされ。そして、身体を一気に傾ける。先程まで居た空間が切り刻まれるのを感じ、急降下。首を傾けて横目向ければ、追手は三匹。形態を飛行可能に変異させた化け物共が追跡してきていた。

 足元には街が迫る。真夜中ではあるがそれらは光が灯され、道路を埋めるのは車の列。ただ働き、そして報酬を受け取るだけの歯車の行き交うその光景。ミモザの真下の混雑した街に、安全に着陸出来る場所がある筈などなかった。

 奥歯を軋ませる。そして、一秒毎に拡大されていく街の光景の中へと、ハンググライダーのコントロールバーを一気に引き寄せて急加速させながら突っ込んだ。

 ビルが乱立するその空間へと入り、幾多の車の光の中に瞳孔が痛み伴い収縮。速度を下げる事すらせずに右へと身体を捻り寄せ、急旋回しビルとビルの隙間へとグライダーを傾けて入り込む。



2011/1/7更新



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