06
「はあ、はあ…」
ああ、言ってしまった…。でも、我慢できなかった。
「今は、練習しよう…」
私はまっすぐグラウンドに向かう。
「…?」
グラウンドは今日もラグビー部が使っている。ランニングをしている様子もない。守、どこいっちゃったんだろう…。
「あ、あの…!譲先輩っ!」
キョロキョロしていると、知らない後輩から声をかけられた。
「…?何か用かな?」
「えっと…、木野先輩から伝言を頼まれていて…。木野先輩達は河川敷に行くって言ってました」
どうやら秋の知り合いみたいだ。
「守達河川敷行ったんだ。わざわざ伝言ありがとうね」
にこっと笑い、その場を去ろうとすると、「あ、あのっ…!」と呼び止められた。
「?まだ、何かあったかな」
「…っ、えっ…と。…どうして、どうして譲先輩はサッカー部なんかに関わっているんですか…!?先輩は、すごい能力を持っているのに…、弱小で人数の足りないサッカー部にいるなんて…。そんなもったいないこと、ないと思います!練習してるの、キャプテン1人じゃないですか…!そんなの、無駄じゃ「守の頑張ってるサッカーを馬鹿にするなら、怒るよ」…!」
…しまった。さっきのイライラから、八つ当たりまがいのことをしてしまった。
目の前で怯える少女を見て、罪悪感を覚える。
「ご、ごめ…ん、なさい」
「…いや、こっちこそごめん。たださ、私は周りから何と言われようと、そのサッカー馬鹿のキャプテンと一緒にサッカーしたいだけなんだ。それだけ、わかってくれないかな?」
私はぽんぽん、とその子の頭を撫でた。
「…」
「それじゃ、私急ぐからさ。伝言本当にありがとう。じゃあね」
それだけ言って立ち去ろうとする。
「…あの!練習、頑張ってください!」
「…!うん、ありがとう」
…わかってもらえたみたいだ。私は自然と笑顔になり、手をふってその子と別れ、雷門中を出た。
(譲先輩、やっぱり素敵だなあ…!)
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