05
走り去る風丸達をぼんやりと見つめる。
陸上部はいいなあ…。宮坂みたいなやる気のある1年生がいて。風丸もすごく楽しそうだし。
サッカー部もいつかみんなやる気出してくれるといいんだけど…。私も早く守と一緒のサッカー部に入りたいな…。
その日はグラウンドの周りを守と2人でランニングして練習を終えた。
* * *
──翌日
放課後になると、私はゆっくりと鞄に教科書などを詰めて廊下に出た。
「おっ!譲!」
「守!」
「部室一緒行こうぜ!」
「うん!」
本音を言うと、部室には行きたくない。いつもなら練習している守のところに行く。でもここで守に出会ってしまったのだから仕方ない。私に守の誘いを断るという選択肢はないのだ。
「今日はみんな練習してくれるといいね」
「うん…。そうだな」
守…元気ない。私が心配そうに守を見ていると、少し俯いてぽつりと呟いた。
「…オレ、信じてるよ。みんなのこと。あいつらだって本当はサッカーが好きで、サッカーやりたいはずなんだ!いつか、絶対やる気をだしてくれるって、オレは信じてる」
「…!」
守は本当に本当にすごい奴だと思う。こんなにまっすぐで、太陽みたいな人は見たことない。ほんとに双子なのか、不思議に思ってしまうほど。
サッカー馬鹿で、仲間を信頼できる守だからこそ、私は守を支えたいと、共に歩いていきたいと思う。
「うん、うん…っ!絶対に守の気持ち、みんなに届くよっ!」
「そ、そうか…?だといいなっ!」
私達は2人でニカッと笑いあった。
* * *
──サッカー部部室
「みんなーっ!サッカーやろうぜ!」
勢いよく扉を開け、中にいるだろう部員たちに声をかける守。
しかし、その声に答える者は誰もいない。
壁山はお菓子を食べ、半田は漫画を読み、宍戸と栗松はゲームをし、少林寺は拳法のようなことをしている。そしてそれらを見ているだけの染岡。部員たちのやる気のなさに、苛立ちを通り越し、怒りが込み上げてくる。
…っ、こんなの部活じゃないっ!
「なあ!やろうぜ、練習!」
「練習スかあ〜」
バリバリとお菓子を食べながら、嫌そうにそう言う壁山。
「ああ!試合に備えてさ!」
「キャプテン、この人数で試合なんか出来るんですか?」
「そうそう、7人しかいない弱小サッカー部だぜ?そもそもグラウンドも使わせてもらえないじゃんか」
壁山に賛同するように述べるのは半田。
「サッカー部だからって、サッカーだけをやんなきゃいけないって理屈はないでやんしょ?」
この独特の喋りをするのが栗松。
「わかってんなー、栗松。暇だしトランプでもするか?」
…この中途半田め!!
「でも、お前らだってサッカー好きだろ?」
みんなの言葉に少し眉をさげて言う守。しかし、みんなはそれぞれゲームなどに夢中で、守の言葉は誰にも届いていない。
私が怒りを堪えている横で、守は小さくため息をつき、ボールを持って外に出ていった。
「円堂のヤツ、何1人で熱くなってるんだ?」
「悪いもんでも食べたんスかねえ?」
「練習って言っても、サッカー部がグラウンド使えるかわからないし…」
半田、壁山、宍戸がそう言うと、それを聞いていた染岡がボソッと呟いた。
「…もうすぐ廃部って噂もあるしな。今さら焦っても、どうしようもないってのによ…」
瞬間、静かになる部室。
「「「は、廃部ーっ!?」」」
初めて聞いたのか、焦りだす部員達。
さすがにイライラの限界だった私は、語調を荒げて言い放つ。
「あんた達さあ!いつまでこんなとこで腐ってるわけ!?守を見て何も感じないの!?廃部が嫌なら、もっと自分から何とかしようとしなよ!ろくに練習もしないサッカー部なんて、廃部になって当然だ!」
勢いで言いたいこと全部、言ってしまった。
一気に言ったもんだから、酸素が足りなくて息が荒くなる。
ぽかん、として私を見ている部員達を思いっきり睨みつけて、守を追いかけるためにすぐに部室を出た。
* * *
「な、何だあ…?あいつ」
「なんか、ムッときたでやんす」
「ほんと嫌になるよなー!あの男女!」
「は、半田さん…、ちょっと言い過ぎじゃないっスかあ…?」
「いーんだよ!ほんとのことだし!」
「…でも、譲って女子に人気あるよな…」
「何かオレ達、男として負けてません…?」
「「「……」」」
* * *
あれ?なんか半田が性格悪い(^^;
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