02
急いで外に出ると、グラウンドの近くにいる守を見つけた。
「守ーっ!」
駆け寄りながら、双子の兄である守に呼びかける。
「お、譲か!」
私に気づいた守はニカッ、と笑いこっちこっち、という仕草をした。
「…他の部員は?」
守の側まで来た私は嫌悪感を隠すこともせず、そう聞いた。…返ってくる返事なんてわかっている。
「いつも通りだ。みんな部室にいるよ」
苦笑いを浮かべる守。しかし、それはすぐに笑顔に変わる。
「そうだ、譲!今日グラウンド使えそうなんだよ!」
「ほんと!?よかったね、守!じゃあ早速パスでもしようか!」
守が嬉しそうだと、私も嬉しい。さっきまでの苛立ちがなかったかのように、私は笑顔でグラウンドに足を踏み入れる。
ちょうど真ん中くらいまで来たとき、聞き慣れた声が聞こえた。
「よう円堂、譲!相変わらず練習頑張ってるな!」
「「風丸!」」
私達のところに走ってきたのは、水色の髪をポニーテールにした少年、風丸一郎太。私達の幼なじみだ。
「ランニングの途中か?…いいよな。陸上部にはいっぱい新入生が入ったみたいで…」
「ああ、でも最近は1年にもスゴい奴が多くて、ボヤボヤしていられないぜ…」
「へえ、そうなんだ」
私が陸上部も大変だなあ、なんて思いながら相槌をうっていると、風丸の後ろにいる金髪の子と目があった。
「こ、こんにちは!」
おお、礼儀正しい。
「こんにちは。この子、風丸の後輩?」
「ああ、宮坂っていうんだ」
「宮坂了っていいます!円堂さんたちのことは知ってます!譲さんは特に!」
「え?あ、そうなんだ…。…何で?」
私1年生に知られるような何かしたっけ…?
「何でって、譲さん1年の女子からスゴい人気なんですよ!スポーツテストも1位だったみたいだし、憧れてる人多いみたいです!」
「は、初めて知った…!」
女子からってのが気になるけど…。男子でも女子でも、スポーツができるとモテるものなのか。
「あ、私のことよりさ、スポーツテストといえば、風丸50m走で1番だったよね!」
ぐいっ、と風丸に近づき、少し興奮気味に言う。
「え、知ってたのか…?」
ほんのりと頬を染め、驚いた顔をする風丸。
「もちろんだよ!風丸の活躍を知らないわけないでしょ!」
「そ、そうか…」
ニカッと笑えば、なぜか風丸に目をそらされた。
その様子を宮坂がニヤニヤして見ていることには、その場にいる誰もが気づいていなかった。
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