01 帝国がきた!
「譲さん!バレー部に入らない!?」
「いや、今日こそバスケ部に入って!」
「ごめん!私サッカーにしか興味ないんだ!」
雷門中学校2年のあるクラスで、そのやりとりは連日行われていた。
にっこりと勧誘を断る少女は円堂譲。
どうしてこんなに勧誘を受けているかというと、スポーツテストで雷門中の女子の中で1位だったからだ。…帰宅部でありながら。
運動ができるのに、帰宅部。こんな勿体ないことがあってたまるか!と、連日こうして勧誘がくるのだが、円堂譲という少女は「サッカーが好きだから」と、お断りする。
一言でバッサリ一刀両断された人たちは、今日もダメだったか〜っ、と少しも残念そうにせず、
「また明日も来るからね〜!」
と言い残して去っていった。
「大変だね、人気者も」
「…マックス」
譲に話しかけたのは、隣の席の松野空介。通称マックスだ。
「他人事だと思って…。毎日来られる身にもなってみろ!」
「だって他人だしね」
人畜無害そうな顔をして、さらりとひどいことを言う。
「…うん。マックスってけっこう毒舌だよね。今のでだいぶ傷ついたよ?私達、友達じゃなかったのね…」
わざとらしく落ち込んだふりをすると、あはは、と笑って、ごめんごめんと言うマックス。
マックスとのこういうやりとりは、案外嫌いじゃなかったりする。
「でも譲だって悪いと思うよ?何でサッカー部ちゃんと入んないわけ?」
「私は守とサッカーができれば、それでいいから」
「ふーん」
そう。私は守とサッカーができれば、それでいい。
…別にサッカー部に入ってもよかった。選手としてサッカーができなくとも、マネージャーとして守をサポートできるし。
…でも、他の部員がやる気がないのがいけない。あんなの、頑張ってる守を…、フットボールフロンティアで優勝するって夢を持っている守をバカにしているようにしか思えない。
私は一生懸命サッカーをする守は好きだが、雷門サッカー部は大嫌いだった。
「守は好きだけど、サッカー部は嫌いってことだよ。今のあんな状態のサッカー部に入るなんて、絶対ムリ」
「部員の足りない、弱小サッカー部だもんなー」
「…ねえ、マックスがサッカー部入ってよ!そしたらなんか変わるかも!」
変わったなら…、せめて普通のサッカー部になってくれたら、入部したい。
「人に頼るなよなー。ボクは飽きっぽいからずっと同じ部活なんてムリだよ。それより、譲こそボクみたいにいろんなスポーツしてみたら?」
「サッカーしか興味ない!」
「即答かよ」
呆れたようにマックスはぽつりと言う。
「…ねえねえ、サッカーまだやったことないでしょ?やってみてよ〜!」
「うーん、気が向いたらね」
(譲がそこまで好きなものか、ちょっと気になるな)
「うん!今はそれでいいけど、そのうち絶対入ってもらうから!」
「…そんなに夢中になるくらい、面白いわけ?」
「もちろん!サッカーってすっっごい面白いんだ!今度一緒にやろうよ!そしたら楽しくて飽きっぽいとか言えなくなるからさ!」
約束!そう言って譲はサッカーをしに教室を出ていった。
(キラキラした顔でサッカーを語る君をみたら、何だかやってみたくなった。)
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