18
「豪炎寺!」
豪炎寺が入ってくれたら、帝国に一泡吹かせることができるかもしれない!
豪炎寺に近づいていくと、私の時と同様に審判と冬海がやってきた。
「君、いきなり困るよ!(今日の試合は何なんだ…)」
「君はうちのサッカー部でもないでしょう!今すぐ出て…「こちらはかまわないですよ」…し、しかし…」
またもや鬼道が出場を許可した。
「(またか…)て、帝国が承認したため、出場を許可する!」
審判が複雑な表情をしているのは、私の気のせいではないだろう。
「豪炎寺、来てくれてありがとう!よろしくね」
「ああ」
軽く挨拶を交わし、これからの反撃のためにポジションにつく。
染岡のキックで始まったが、すぐにボールを取られてしまった。そのまま鬼道の指示でデスゾーンを繰り出す。
その時、豪炎寺は相手のゴールへ向かい走り出した。
「おおーっと!またもや敵前逃亡か!?」
実況の声が響く。…どうして豪炎寺は前へ…?
「…!」
豪炎寺は、守が絶対にシュートを止めると信じている。だからすぐにパスを受けてシュートを決められるように、前へ出たんだ。
…なら私も前に出て、パスをださなきゃ。
今の守じゃ、きっと豪炎寺までの距離をパスするのは難しい。
1人、2人と抜いてフィールドを駆け抜ける。
グラウンドの半分まできた時、ギャラリーのおぉーっ!という歓声が響き渡った。
きっと守がデスゾーンを止めたんだ!
後ろを振り返ると、守は大きな黄金の手でボールを受け止めている。
これは…!
「ゴッドハンド…!」
おじいちゃんのノートに書いてあった必殺技だ。ついに、ついに…完成させたんだ!
嬉しさで口元が緩んだが、今は試合中。すぐに気を引き締めて、守にアイコンタクトを送る。
双子だからかはわからないけど、敵が反応する前に、守は瞬時に判断して私にパスを出した。
「譲!頼んだぞ!」
「任せといて!」
ボールを身体で受け止め、すぐに前を向きドリブルで進んでいく。
あと1人抜いたら豪炎寺にパスを出せる…!
「ライトウィザード!」
「うわっ!」
私はドリブルの必殺技を出し、難なく相手をかわすと、まっすぐ豪炎寺に向けてボールを蹴った。
「豪炎寺、決めろっ!」
私のパスを受けた豪炎寺は即座にシュート体勢に入る。
「ファイアトルネード!」
──ドォーンッ
豪炎寺の放ったシュートは、炎をまとい凄まじい勢いでゴールへ。キング・オブ・ゴールキーパーといわれる源田の手をかすりもせずにシュートは決まった。
「や、やった!1点取った!」
私は豪炎寺に近寄り、片手を挙げた。一瞬、自己紹介の時の握手みたいに無視されるかな…と思ったけど、そんなことはなく。豪炎寺は軽く微笑むと、ナイスパス、と言ってハイタッチしてくれた。
「豪炎寺もナイスシュート!」
私も緩みっぱなしの顔でそう言うと、豪炎寺は心なしか笑みを深くした気がした。
──ピピーッ
グラウンドにホイッスルが鳴り響く。何事かと審判を見る。
「たった今帝国学園から試合放棄の申し出があり、ゲームはここで終了!」
「…!これって、私達の勝ちってこと…!?」
私は互いに支え合いながら立っている雷門イレブンを見渡す。皆嬉しそうな顔をしていた。
(本当に、雷門が勝ったんだ!──奇跡が起こった!)
* * *
雷門イレブンが喜びを露にしている頃、帝国の車の入り口に立ち、グラウンドを見つめている人物が1人。
「円堂守と円堂譲か…。思わぬ収穫があった」
その人物──鬼道はそう呟くと、マントを翻し車内へと姿を消した。
* * *
─帝国学園の車の上で試合を見ていた者がいた。
「スーパーストライカー、豪炎寺修也のシュートは少しも錆び付いていないようだな。…それにしても、円堂譲は随分成長したようだ。やはり、円堂大介の血は侮れん」
その人物はそう言うと、ククッと人の悪そうな笑いをこぼした。
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