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「ちょっと君!いきなり何なんだ!」
「そうです!いきなり乱入して…。貴女は女性ですから、出られないことくらいわかっているでしょう!」
審判と冬海に咎められて、やっぱりダメか…と肩を落とす。
審判に早く戻りなさいと促され、仕方なく従って歩き出したとき、意外な人がそれを止めた。
「いいですよ、別に」
それは帝国のキャプテン、鬼道の声だった。
「えっ?」
「し、しかし鬼道君」
審判が困惑しているのがわかる。
…な、なんだ。嫌なヤツだと思ってたけど、意外にいい所も…
「彼女が入ったところで、我々の勝利に影響はないのでね」
…やっぱ嫌なヤツだ!!
「そ、そういうなら…。君、早く着替えてきなさい」
「…はい」
何だか無性にイライラしながら、私はユニフォームに着替えるため部室へと走り出した。
* * *
準備を終えた私は、風丸が守っていたポジションについた。
──ピピーッ
ホイッスルが鳴り、相手ボールから始まる。すでに守る人のいない雷門は、簡単にペナルティーエリアまで攻められた。
(あの連携は…デスゾーンだ!)
私は全速力で走り、ボールと守の間に飛び込んだ。
「くっ…!」
うまくボールと守の間に入れはしたが、デスゾーンの威力は凄まじく、身体ごとゴールに叩きつけられる。
また1点取られてしまった。
身体中が痛かったが、気力を振り絞り立ち上がる。こんなの皆に比べたら、全然だ…!
「ごめん、守…。防げなかった」
私と一緒にゴールに叩きつけられた守を支えながら立たせる。
「いいって!次止めればいいんだ!」
絶望的な状況でも諦めない。こんな守だからこそ、私も頑張れるんだ。
「うん!まずは1点、だね!」
何点差だってかまわない。私は最後まで諦めない!
「デスゾーンをくらって立ち上がれる者が2人もいるとは…。ふっ、面白いことになってきたな」
鬼道がそう言いながら自分のポジションへと戻っていく。
雷門ボールで始まるこのチャンスを無駄にはしない!
そう思った矢先に、最悪の事態が起こった。目金が敵前逃亡したのだ。
「も、もう嫌だぁっ」
エースナンバーの入ったユニフォームを脱ぎ捨て、走り去っていく目金。
「最悪…」
ここまで人に失望したのは初めてだ。あんなに威張りくさっていたのに、自分の身が可愛くて逃げ出すなんて…。呆れて物も言えない。
「どうやら10人になってしまったようだが…」
人の悪い笑みを浮かべ、こちらを見てくる鬼道。
10人で試合するしか道はないか…?
無意識に唇を噛みしめていると、ギャラリーがざわついているのが聞こえた。
「あんなヤツ、うちにいたか?」
「あれって転校生の…」
振り返ると、そこにいたのは雷門のユニフォームを着た豪炎寺だった。
(何かが起こりそうな気がした)
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