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「いくよっ!守!」

「よし、こいっ!」

「サンシャインクロス!」

私の右足に光が集まり、ボールを蹴った瞬間、それはボールに移り、十字に光を放ちながら守へ。

「うぐっ…、うわあぁぁっ!」

ドォーン、という音と共に吹っ飛ぶ守。

「ご、ごめん!守!」

急いで近寄ると、ガバッと起き上がり、キラキラした瞳で私を見る。

「譲!いつの間にそんな技できるようになったんだ!?」

「えへ、私も実は特訓してたんだ」

「本当か?すっげーな!俺もこうしちゃいられねえ!必殺技の練習だ!」

「うん!じゃあ、タイヤ使おっか!」


* * *


「でぇぇいっ!…っぐは!」

「っ、ぐっ…!うわぁ!」

自らにタイヤをくくりつけ、木に吊るしたタイヤを受け止めようとする守。

しかし勢いのついたタイヤはなかなか止められない。

何度目かわからないほどに倒れこんだ守に駆け寄り、立つのを手伝おうとする。

タイヤに手をかけると、背後から声がかかる。

「無茶苦茶だな、その特訓」

「「風丸!」」

風丸は守を立ち上がらせるのを手伝ってくれた。

「変な特訓してるんだな」

「ああ、あれだよ」

守はベンチに置いてあったノートを指差す。

3人でベンチの所へ行くと、守がノートを開いて風丸に見せた。

「よ、読めねえ…」

「あはは、だよねー。私も最初読めなかったし」

「!2人はこれ読めるのか?」

風丸が目を見開いて言う。

「うん、読めるよ。シュートの止め方が書いてあるんだ」

「私達のおじいちゃんが書いたんだよ」

「俺達が生まれる前に死んじゃってるんだけどな。…じいちゃん、昔雷門サッカー部の監督でさ、これはその時作った特訓ノートらしいんだ!…帝国のすごいシュートを止めるには、じいちゃんの技をマスターするしかないと思ってさ!」

真剣な顔でそう言い切った守は、すごくカッコ良かった。

「お前、本気で帝国に勝つ気なんだな」

「ああ!」

その答えを聞くと、風丸は何かを決意したような顔をする。

「ん!」

「え?な、なに?」

バッ、と手を差し出す風丸に、守は聞き返す。

「お前のその気合い、乗った!」

「…!ありがとう、風丸!」

ぐっと握手を交わす2人。

(…!守の、気持ちが届いたっ!)

私は嬉しくて嬉しくて、手を離した風丸に勢いよく抱きついた。

「風丸〜!ありがとうっ!本当に嬉しいっ!」

「う、うわあっ!譲、離れろよ!」

耳まで真っ赤にした風丸に、肩を押され離される。

「あ、ごめん…。嬉しくって、つい…」

「い、いや…。気にしてないから大丈夫だ。…おい!俺はやるぜ!お前らはどうするんだ?」

風丸が後ろの茂みに向けて言った。

「キャ、キャプテン…」

「どうも…」

「お前ら…!どわぁっ!」

駆け寄ろうとした守は、タイヤに押し潰されてしまった。

「「キャプテン!」」

私達の周りに集まる雷門サッカー部。

「こいつら、俺がくるよりも前から、お前達のこと見てたみたいだぜ」

「…!」

全然気づかなかった…。

「円堂達が他の運動部に声かけてんの見たら、なんかな…」

「ちょっと、な…」

ぽりぽりと頬をかいて言うのは半田と染岡。

「その特訓見てたら、なんか胸がこう…ジーンと熱くなってきたでやんす」

「俺も特訓やりたいです!キャプテン!」

宍戸の声をきっかけに、次々に俺も!と声が上がる。

「〜っ、みんなっ!当たり前じゃないか!大歓迎だよ!」

守は感動して涙目だ。そう言う私も涙目なのだが。

(良かったねっ…!守っ!)

感動していると、染岡たちみんなが私の方を見ている。

「その…、お前も悪かったな。部員じゃねえお前にばっかり、部員集めとか任せてよ」

「俺たちを見かねて怒ってくれたのに…、行動起こさなくて…。本当にすみませんでしたっ!」

「…!」

頭を下げているみんな。…私達がやってたことは無駄じゃなかった!そう実感できて、熱い何かが込み上げてきた。

「…っ、いいっていいって!わかってくれたんでしょ?守の思いとか、頑張り!」

こく、と首を縦に振るみんな。

感極まって、我慢できなくなった私は、みんなに飛びついた。

「うわっ!」

肩を組まれた半田や染岡はすごく驚いた顔をしている。

「これから、よろしくねっ!…よし!早速特訓するぞっ!」

「「おぉーっ!」」



(奇跡が、起こった!)



* * *



(あ、私今からサッカー部入るね)
(おう!歓迎するぜ、譲!)





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