11
「いくよっ!守!」
「よし、こいっ!」
「サンシャインクロス!」
私の右足に光が集まり、ボールを蹴った瞬間、それはボールに移り、十字に光を放ちながら守へ。
「うぐっ…、うわあぁぁっ!」
ドォーン、という音と共に吹っ飛ぶ守。
「ご、ごめん!守!」
急いで近寄ると、ガバッと起き上がり、キラキラした瞳で私を見る。
「譲!いつの間にそんな技できるようになったんだ!?」
「えへ、私も実は特訓してたんだ」
「本当か?すっげーな!俺もこうしちゃいられねえ!必殺技の練習だ!」
「うん!じゃあ、タイヤ使おっか!」
* * *
「でぇぇいっ!…っぐは!」
「っ、ぐっ…!うわぁ!」
自らにタイヤをくくりつけ、木に吊るしたタイヤを受け止めようとする守。
しかし勢いのついたタイヤはなかなか止められない。
何度目かわからないほどに倒れこんだ守に駆け寄り、立つのを手伝おうとする。
タイヤに手をかけると、背後から声がかかる。
「無茶苦茶だな、その特訓」
「「風丸!」」
風丸は守を立ち上がらせるのを手伝ってくれた。
「変な特訓してるんだな」
「ああ、あれだよ」
守はベンチに置いてあったノートを指差す。
3人でベンチの所へ行くと、守がノートを開いて風丸に見せた。
「よ、読めねえ…」
「あはは、だよねー。私も最初読めなかったし」
「!2人はこれ読めるのか?」
風丸が目を見開いて言う。
「うん、読めるよ。シュートの止め方が書いてあるんだ」
「私達のおじいちゃんが書いたんだよ」
「俺達が生まれる前に死んじゃってるんだけどな。…じいちゃん、昔雷門サッカー部の監督でさ、これはその時作った特訓ノートらしいんだ!…帝国のすごいシュートを止めるには、じいちゃんの技をマスターするしかないと思ってさ!」
真剣な顔でそう言い切った守は、すごくカッコ良かった。
「お前、本気で帝国に勝つ気なんだな」
「ああ!」
その答えを聞くと、風丸は何かを決意したような顔をする。
「ん!」
「え?な、なに?」
バッ、と手を差し出す風丸に、守は聞き返す。
「お前のその気合い、乗った!」
「…!ありがとう、風丸!」
ぐっと握手を交わす2人。
(…!守の、気持ちが届いたっ!)
私は嬉しくて嬉しくて、手を離した風丸に勢いよく抱きついた。
「風丸〜!ありがとうっ!本当に嬉しいっ!」
「う、うわあっ!譲、離れろよ!」
耳まで真っ赤にした風丸に、肩を押され離される。
「あ、ごめん…。嬉しくって、つい…」
「い、いや…。気にしてないから大丈夫だ。…おい!俺はやるぜ!お前らはどうするんだ?」
風丸が後ろの茂みに向けて言った。
「キャ、キャプテン…」
「どうも…」
「お前ら…!どわぁっ!」
駆け寄ろうとした守は、タイヤに押し潰されてしまった。
「「キャプテン!」」
私達の周りに集まる雷門サッカー部。
「こいつら、俺がくるよりも前から、お前達のこと見てたみたいだぜ」
「…!」
全然気づかなかった…。
「円堂達が他の運動部に声かけてんの見たら、なんかな…」
「ちょっと、な…」
ぽりぽりと頬をかいて言うのは半田と染岡。
「その特訓見てたら、なんか胸がこう…ジーンと熱くなってきたでやんす」
「俺も特訓やりたいです!キャプテン!」
宍戸の声をきっかけに、次々に俺も!と声が上がる。
「〜っ、みんなっ!当たり前じゃないか!大歓迎だよ!」
守は感動して涙目だ。そう言う私も涙目なのだが。
(良かったねっ…!守っ!)
感動していると、染岡たちみんなが私の方を見ている。
「その…、お前も悪かったな。部員じゃねえお前にばっかり、部員集めとか任せてよ」
「俺たちを見かねて怒ってくれたのに…、行動起こさなくて…。本当にすみませんでしたっ!」
「…!」
頭を下げているみんな。…私達がやってたことは無駄じゃなかった!そう実感できて、熱い何かが込み上げてきた。
「…っ、いいっていいって!わかってくれたんでしょ?守の思いとか、頑張り!」
こく、と首を縦に振るみんな。
感極まって、我慢できなくなった私は、みんなに飛びついた。
「うわっ!」
肩を組まれた半田や染岡はすごく驚いた顔をしている。
「これから、よろしくねっ!…よし!早速特訓するぞっ!」
「「おぉーっ!」」
(奇跡が、起こった!)
* * *
(あ、私今からサッカー部入るね)
(おう!歓迎するぜ、譲!)
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