[携帯モード] [URL送信]
色とりどりのマフラーを、

「寒いねぇ」

呟いた言の葉は白い息となって周りに拡散して消えた。
もう一度はぁっと白い息を吐き出して見せて、だって息が白いよ、なんておどけてみた。
そしたら、テメェは餓鬼かと軽く額を叩かれた。
伊達ちゃんは赤く染まった鼻を隠すようにマフラーに顔を埋めた。
今日初めて見るソレ、深い紺のマフラーはとても伊達ちゃんに似合っていた。
きっと、あの顎に傷を持ちオールバックの強面でやけに過保護な使用人兼学校の事務員が伊達ちゃんの為にせっせと夜なべして編んだのだろう。
だってマフラーは稚拙では無いけれど明らかに手編みのものだったからね。
伊達ちゃんにマフラーを編んであげる人なんて片倉サンしかいないだろう。
伊達ちゃんが自分で自分に編むってことも無いだろうし。
いや、別に嫉妬とかじゃないけど何となーくヤな感じ。

「ソレ、片倉サンが編んだ訳?」

まぁ、どうせ答えはYesなんだろうけど一応聞いてみる。
少しばかりの片倉サンじゃない人が編んだ可能性に期待して。

「Ahー…コレか?No,小十郎じゃねぇよ」

伊達ちゃんは顔を埋めた紺のそれを軽く摘まんで言った。

「え、マジで?じゃ、誰が編んだの?」

「………元就」

一瞬、伊達ちゃんの言った意味が理解出来なかった。
だって、仮にも俺様と伊達ちゃんは付き合ってて(まぁ片倉サンは伊達ちゃんの保護者みたいな感じだから仕方無いとして)、ナリちゃんはチカちゃんと付き合ってるんだよ?(たまに二人で伊達ちゃん取り合ったりしてるけどさ)
しかも、あのお堅いナリちゃんが人の為に何か手作りするとか、考えらんない!

「え…、ナリちゃんが?伊達ちゃんに?チカちゃんにじゃなくて?」

全然伊達ちゃんの言ってることが信じられずに一気に捲し立てる。
伊達ちゃんはあからさまに嫌な顔をして盛大に溜め息を吐いた。
そして、話は長くなるけどな、と前置きしてから口を開いた。

「元就は元親にマフラー編みたかったんだけどよ、アイツ手芸とかそんなことしたことねぇじゃん」

「まぁ、そうだろうね」

ナリちゃんが裁縫とかやってる姿は全く思い浮かばない。
器用そうだけどそういう柄じゃないよな、ナリちゃんは。

「そんで、我はどうすれば良いのか?って相談されたから小十郎に教われって言ったんだよ」

片倉サンが裁縫とかやってる姿はアンバランスだけど容易く想像できる。
顔に似合わずあの人は家庭的なんだよねぇ。

「うんうん、それで?」

「元就は小十郎から教えてもらってマフラーを編んだんだよ」

「それをチカちゃんにあげたんでしょ?」

そういや、チカちゃんは最近淡い紫色(すみれ色って言うのかな)のマフラーをしてるな、と思い出した。
あれがナリちゃんが編んだやつだった訳だ。

「Yes」

「だったら伊達ちゃんのソレは何なのさ」

我ながら大人気ないとは思ったけど、嫉妬心を顕にして頬をぷくっと膨らませながら紺のマフラーを指差した。
伊達ちゃんは呆れたように眉尻を下げて、俺様の頬をつつきながら続ける。

「それが元就ったら編み物にハマったらしくて俺にもくれたんだよ、礼だとか言って」

「ふぅーん、そういう訳ね」

「そういや元就橙色のマフラーも編んでたぜ?佐助の分じゃねぇの?」

眉尻を下げたまま半分茶化すようにくつくつと笑いながら伊達ちゃんは言った。

そしてこの三日後、伊達ちゃんの言った通り俺様は橙色の手編みマフラーをナリちゃんから手渡されることとなる。


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!