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馬鹿と鋏は使いよう
「前髪伸びてきちゃったんじゃない?」

「Ah?」

急に前髪を摘ままれてぼそりと呟かれた。
軽く佐助の手を払いのけ、自分で髪を摘まんで長さを確認してみる。
右目を隠すようにだらだらと伸ばしていた前髪は、鼻をすっぽり隠すくらいまで伸びていた。

「確かに少し長いかもなぁー…」

溜め息混じりに呟きながら手持ちぶさたに読んでいたファッション雑誌(佐助の私物だ)をそのへんに適当に放る。
佐助があっと声を上げたが、無視した。
ふと床に転がった雑誌に視線を投げれば表紙の最近人気の若手俳優と目が合う。
その笑顔が佐助のよく女にするような胡散臭い偽物のやらしい笑みにあまりにもそっくりだったから、小さく舌打ちをしてみた。
そんで、佐助の自慢のセミダブルのでかいベッドに身を投げる。
布団に顔を埋めてみれば佐助の匂いがした。
そんなことを考えてる自分があまりにも女々しくてまた小さく舌打ちをした。

何をするわけでも無くベッドの上でゴロゴロとする。
佐助の匂いに包まれながら柔らかいベッドに身を沈めていると、段々眠たくなってくる。
うとうとと微睡んでいると、何気無く佐助に声を掛けられる。
眠りの淵から一気に現実に引き戻される。

「俺様が切ってあげようかぁー?」

「What?」

目蓋を擦りながら起き上がって、佐助と視線を絡ませながら小首を傾げる。
わざと、だ。
本当は何を切るかなんて分かってる。
寝起きの悪い俺の機嫌を損ねたから、少しだけお仕置きだ。
ちょっぴり上目遣いで佐助を見つめながら、もう一度、何をだ?と問い掛ける。
佐助は少しだけ頬を赤らめて、うっと言葉を詰まらせた後に一つ咳払いをして言葉を続けた。

「…っ、だーかーらー、前髪」

半分期待通りの反応をしてくれたので、くすりと笑った。
佐助は確信犯かよ、なんて困ったように眉を下げて肩を竦めて呟いた。

「ククッ…アンタ器用そうだし、頼むわ」

口元に手を当てて喉奥で笑いながら、佐助に髪を切るように頼む。
佐助は苦笑からにっこりとした嬉しそうな笑みに変えて頷いた。



本当はずっと前から前髪が長いことに気付いてたんだ。
でも佐助に切ってほしいから気付いてない振りしてた。
しかも自分からは切ってくれなんて言えないからアッチから言ってくれるの待ってた。

そんなこと、佐助には口が裂けても言えねぇな。
(にんまりと狐みたいにいやらしい笑みを浮かべるに違いねぇ)


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