夜這いと正夢#若干破廉恥注意
それはそれはとっても素敵な夢だった。
素直じゃなくていつもツンツンしている自分の愛する人が、やけに素直で自分に甘えてきて何度も何度も接吻を強請った。
自分もそれに応えて甘ったるい接吻を何度も何度も与えてやりながら、何気なく服の下に手を滑らせた。
一瞬びくりと身体を震わせるも愛する人は珍しく抵抗せずに身を任せていた。
それをいいことに衣服を脱がせ、いざ行為に移ろうとした刹那
急に腹部に圧迫感を感じて、心地よい夢の世界の中から現実に引き戻された。
一体何なんだ、俺の素敵な夢を奪うなんて許せない、しかもこれからがいいところだったのに(ついでに言うと勃っちゃたんだよね)、と苛立ちながら重たい目蓋を上げればそこに居たのは先程まで夢の中で甘い時間を過ごした愛しい愛しい恋人だった。
夢の中でイチャついていた本人が現実世界で自分の上に跨っているという、どうにも複雑な状況に置かれた俺はなんだかどういう気分になればいいのか解らなくなった。
ここから退いてほしいのか、それとも退いてほしくないのかも解らなくて、まだ寝起きの思考はそれ以上追及しようとはしなかったのでそのままにしつつ、とりあえず問いかける。
「伊達ちゃん、アンタ何してるの?」
未だにぼんやりとぼやけた視界の中で恋人は顎に手を当て、如何にも思案しているようなポーズをする。
そして苦笑いを浮かべて呟く。
「Ah―…夜這い?」
あぁ、なるほど。
先程までの夢は正夢だったわけだ。
っていうか、寧ろ嬉しいじゃない。
伊達ちゃんが自ら俺を求めてくれるなんて!!
夢が覚めてよかった、と思いながらもにやけない様に冷静を装い余裕かまして口を開く。
「俺様に夜這いなんていい度胸じゃない、じゃあ、早速…」
情けないというか恥ずかしいのだが、先程の夢で俺ももう勃っちゃってるわけだし、伊達ちゃんがその気ならばさっさと行為に移ってしまおうと徐に服のボタンに手を掛ける。
するとその手を細い手で手荒く払われる。
…ちょっとショックなんですけど。
「Stop!!」
「え、何?…何がしたいの」
夜這いに来たんだから、その…そういう行為をしたいってことなんだから、服を脱がされるのは当然なんじゃないの?
それとも着衣プレイがしたいのだろうか。
否、そんな変態プレイ伊達ちゃんは好んでやらないだろう。
俺はそういうのしたいとか、少し思うけど。
「俺が夜這いしに来たんだ、だから俺が佐助にされるがままってのは嫌なんだよ」
「はぁ…」
伊達ちゃんが言ってる意味はわからなくもないけれど、何をしたいのかは理解しかねた。
頭上に疑問符を浮かべて肩を竦めてみれば、唇を尖らせて少し威張りながら伊達ちゃんは言った。
「てめぇは黙って寝てろって言ってんだよ、you see?」
「はぁ…」
生返事を返せば、また嫌な顔をされたけど肯定と解釈したのか伊達ちゃんは俺の衣服に手を掛ける。
一つ一つ丁寧に釦を外される。
先程まで夢の中で自分が主導権を握り服も脱がせていたのに、今が相手が主導権を握り自分が服を脱がされている。
どうにも複雑な気分だった。
だからと言って、流石にこの程度の事で抵抗するわけにもいかず、逆に相手を押し倒しても機嫌を損ね暫く構ってもらえない事は目に見えている。
「ねぇ、伊達ちゃん」
「何だよ」
「やっぱ俺様脱がされるより脱がしたい派なんですけど」
「Ha,しらねぇよ」
抗議しても軽くあしらわれて仕舞い、結局俺は素っ裸に引ん剥かれた。
伊達ちゃんはまじまじと俺の裸体を眺めては、すっと目を細めた。
「…何もしてねぇよな、俺」
「俺様の服を脱がせたじゃん」
「まぁな…でもそれだけだろ?なのに何で勃ってんだよアンタ」
「え、そ…それは」
伊達ちゃんは勃ってる俺のを見て若干引いているらしかった。
(自分も同じのぶら下げて俺のテクニックに溺れてるくせにね!)
夢の話をするのも何だか気が引けて口ごもっていると、伊達ちゃんはJesus!!と叫んだ。
「佐助、お前っ…俺が居るってのにこんな低俗なエロ本をオカズにしやがって…!!」
伊達ちゃんはこないだチカちゃんが遊びに来た時に置いて行った少し過激なエロ本を握りしめ、顔を真っ赤にして怒っていた。
「ち、違っ…それはチカちゃんが…」
「言い訳なんか聞きたくねぇよ!このfucking monkey!!」
バタンと扉を閉める荒々しい大きな音が響いて伊達ちゃんは出て行ってしまった。
やっぱり、夢から覚めなければよかったと今更ながらに思った。
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