せんちめんたる
揺れる紅い、紅い紅葉の葉。
その色は真っ赤に燃えるウチの旦那を彷彿とさせる色で、何だかムカつく様な微笑ましい様な複雑な気分で風に舞うそれを眺めた。
でもこんな風景は情緒があっていいよね、少しだけセンチメンタルな気分になる。
頬を撫でる風はもう随分と涼しいもので少し肌寒ささえ感じる。
もうすっかり季節は秋だ。
「秋だねぇ…」
実に年寄り臭い考えだが、時が過ぎるのは早いなと思ったのと同時にぽつりと自然に言葉が零れ落ちた。
「あぁ、そうでござるな」
すると隣に居た旦那が返事を返してきた。
紅葉を眺めセンチメンタルな気分に浸っていた自分を見られていたのかと思うと恥ずかしくなって
あれ、旦那寝てなかったの?静かだったから気付かなかったよ、あはは
なんて苦笑いを浮かべた。
さっきまで部活やってたから、すっかり疲れて眠っているものだと思っていた。
それにやけに静かにしてたんだもん。
「去年は焼き芋とかしたっけ?」
「あぁ、そうでござるな」
「栗拾いも行ってさ、チカちゃんとナリちゃん大喧嘩してさー」
「あぁ、そうでござるな」
「食欲の秋一色だったよねぇー…って、旦那聞いてる?」
「あぁ、そうでござるな」
また上の空だよ…どうせまた伊達ちゃんのこと考えてんでしょ。
最近旦那は口を開けば政宗殿が政宗殿がって。
正直うんざりだ。
確かに伊達ちゃんは美人だし、なんだかんだ言って面倒見いいし、頼れるし…旦那が恋するのもわかる。
ただ問題なのは本人が無自覚ってことだよ。
俺様が自覚させてあげなきゃいけないじゃない。
自覚があればどれだけ、楽なことか…。
「佐助、」
「何、旦那?」
ずうっと生返事しか返さなかった旦那が急に俺に声を掛ける。
また延々と伊達ちゃんの魅力を語りだすのだろうかと深い溜め息を吐いたその刹那、信じられない言葉を旦那の口から聞いた。
「せんちめんたる、でござる」
耳を疑った。
その言葉の意味を知っているのだろうか、この人は。
「え、だ、旦那何言ってんの?」
「政宗殿…早くお会いしたい…」
そう小さく呟いて、旦那はそのまま机に突っ伏して鼾をかきながら眠りに堕ちてしまった。
「え、何、自分から話し掛けておいて無視ですか…」
あぁ、ちょっとセンチメンタルじゃあないけど、涙が出そう。
(慶次殿、某政宗殿のことを考えると胸が苦しく涙が溢れそうになるのだ。これは何かの病であろうか?)
(幸村いいか、それは恋なんだぜ?)
(こ、恋っ!?破廉恥でござるぅぅううう!!)
(ははっ、きっと胸が苦しいとか涙が出そうってのはセンチメンタルって奴だよ)
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