愛妻弁当
伊達ちゃんはいつも手作りのお弁当を持参してきている。
しかも超手が込んでて、女子高生みたいな可愛らしいお弁当。
林檎がウサギの形をしてるだとか、人参がお花の形をしてるだとか、タコさんウインナーだとか。
まぁ、俺も旦那の分と自分の分のお弁当を毎朝用意してるけど、そこまで手の込んだものでは無い。
栄養価とか見映えだとかを気にしてはいるつもりだけど、流石に朝御飯も作って毎朝用意するとなると多少冷凍食品にお世話になったりしちゃう。
もう慣れてしまったから自分は今更辛いとかは文句は言わないけれど、毎朝あんなお弁当を用意するのは相当な重労働だと思う。
俺は(自分で言うのはかなり悲しいんだけど)オカンで定着してる位だから毎日お弁当を作ったりしてるのは全く違和感が無いんだろうけど、伊達ちゃんが毎日お弁当を作っているのは正直想像できない。
でも、チカちゃん曰く伊達ちゃんはすごい料理上手で見映えも味も最高なんだそうだ。
多分政宗は自分で毎日お弁当を作ってるんだろう、とも言っていた。
人は見掛けによらないって言うけど、きっとこのことだよねぇ。
「伊達ちゃんのお弁当ってスゴいよねぇー」
「Hmm?スゴいって何が」
「何か手ぇこんでるしー、女子高生みたいな可愛らしいお弁当じやない」
「Ah―…まぁな、でも女子高生みたいな可愛らしい弁当は俺が作ってる訳じゃないぜ？」
「え、俺様てっきり伊達ちゃんが作ってるんだと思ってたよ」
「たいてい俺が作るんだけど、今日は小十郎が作ったヤツだ」
コレなんかアイツの趣味丸出しだぜ、と笑いながら伊達ちゃんはタコの形に象られたウインナーを指差しながらクツクツと喉奥で笑った。
「へぇー想像できないけどねー」
エプロンしながらタコさんウインナーを作る片倉サン…それってどうよ。
伊達ちゃんの笑みに合わせて俺様も軽く笑いながら空を仰ぐ。
片倉サンが伊達ちゃんのお弁当を作ってるなんて知らなかった。
まあよく考えてみれば、分からなくはなかったことなんだろうけど。
あれ、つまり片倉サンは今日伊達ちゃんと自分の分のお弁当を作った。
普段は伊達ちゃんが作ってるんだから…伊達ちゃんは毎日片倉サンの分のお弁当も作ってたってこと!?
そこまで思い至って、思わず伊達ちゃんに尋ねてみれば
「なんか愛妻弁当みたいでいいだろ？」
にやりと口角上げて嫌ァな笑みを浮かべて首を傾げられた。
俺様を妬かせたいんでしょ、多分。
本当に嫌な御仁だよね。
でもこんな伊達ちゃんに惚れてる俺様も相当の物好きなんだろう。
「だったら今度俺様にも作ってよ、愛妻弁当ってやつ」
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