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嘆けとて月やは物を思はする

ゆらりと視界の端に移った青白い月。
儚げで美しい鋭い光を放ち真っ暗闇の夜空を引き裂いて、存在を激しく主張する其は奥州に居るあのお方を彷彿とさせた。
あの美しいお姿が月と重なり某の瞼の裏に映る。

「…政宗、殿」

名前を口に出して見れば恋しくて愛しくて切なくて、胸が苦しくなった。
苦しくて苦しくて、涙が頬を伝った。
名を紡いだだけなのに、こんなにも…

月が思い嘆けと言っているのだろうか。
いや、そうではないだろう。
しかし、月の所為であるかのように
涙が溢れて仕方が無かった。





嘆けとて月やは物を思はするかこち顔なるわが涙かな



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