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03.友との出会い



「ヴィンセント・フルールは何処だっ!!」

あれは・・・・今から何年前だっただろう。

俺が、騎士団に入隊して大分月日がたち、17か18くらいの歳の頃。

俺は暇があれば酒場に来て、帝都や、他の街の情報を得ていた。

それは、市民街に留まらず、下町の酒場にも行くし、貴族街にある気位の高い酒場にもその日の気分や、得たい情報に合わせてまちまちだ。

その日は、確か、市民街にある酒場に居たように思う。

場違いと言わんばかりに、折り目正しく騎士団で支給される軽装を身にまとったボンボンが、店の戸を開けるや大声で俺の名前を呼んだからだ。

「ヴィンセント、なんかあんた呼ばれてるわよ。」

その日知り合った、真っ赤なドレスを身にまとった女が酒をあおる俺の肩を叩く。

見た感じ、俺とかわらない位の歳のその男は、辺りを見渡し、1人1人客の顔を確認しながら店の中へと入ってきた。

あんま、関わりたくないんだが・・・。

その男の表情は、いかにも怒ってます、と言わんばかりに眉がつり上がり、血走ったような目をしている。

無視しようか悩んだが、周りの客の迷惑になると考え、俺はグラスをカウンターに戻すと、その男に静かに近づいた。

「あんたが探している男は、俺なんですけど。何か御用ですか?」

「お前が、ヴィンセント・フルールか?」

「だから、そうだって。」

男の正面に立った俺は、じっとそいつの顔を見定める。

騎士団の軽装を身にまとっていると言う事は、言わずもこいつは騎士団の人間だという事だ。

背は、俺とかわらない位で、金髪くるくるヘアに、真っ青な迷いの無い瞳をしている。

いかにも、由緒正しい貴族様といった風貌だ。

だが、顔を見た感じ俺の知り合いにこんなヤツはいない。

店の客の注目を一心に受けるこの状況に、いくら俺でも居た堪れず、コイツを連れ立って俺は店の外に出た。

「で、俺に何の御用ですか?」

店を出て、一目を避ける様に裏に回り、改めて用件を聞く。

「俺と勝負しろ!」

「・・・・・・・・は?」

とっ拍子も無い申し出に、俺は一瞬反応ができなかった。

だから、何がどうして、そうなるんだ!?

相手の表情を窺えば、真剣そのもので、冗談で言っているわけではないようだ。

「アンナ・カロリアを知っているな。」

「アンナ・・・・あぁ〜・・・知ってるな。」

「彼女は俺の恋人だったんだ!」

あ-------・・・・・納得。

その女は20歳くらいの貴族の女で、この間酒場で知り合いそのまま・・・・・な女だ。

確か、年下の彼氏がいるが、頼りなく物足りないと言ってたっけ。

そうか、コイツか・・・・。

そう考えて、改めてコイツを見ると、確かに頼りなく、物足りない感じがするなぁ。

「勘違いをしているようだが、俺と彼女は別に好き同士と言うわけではないし、その場限りの付き合いでだな、互いに同意の上だし、アンタの彼女を横取りとかそんな事は・・・。」

「俺は今日!彼女に恋人関係を解消されたんだっ!!」

ただの八つ当たりかよ・・・。

「それって、やっぱ俺のせいなわけ?」

「彼女は俺にこう言ったんだ・・・。」

“あなたみたいな私の顔色ばかり覗う男はつまらないわ。
 たまには、私をリードするくらいの器量をみせなさいよ! 
 ホント、頼りないわよね。私、ヴィンセントに乗り換えることにするわ。”

「・・・・・・ご愁傷様です。」

その時を思い出したのか、先程の勢いは失せ、俯き黙り込んでしまったソイツを見て、俺はそれしか言えなかった。

「彼女は俺にとって全てだったんだ・・・。4年間も想い続け、やっと恋人になれて・・・嬉しくて・・・彼女に嫌われたくなくて・・・。」

喋りながら、だんだん涙声になっていく。


「その、まぁ落ち込むな。あの女はお前には合わなかったんだよ。世の中にはゴロゴロ女っているもんだし、長く生きてれば気の合う女と知り合えるさ。」

沈みきってしまったソイツの肩を抱き、慰めるようにそっと励ましの言葉をかけた。

同じ男として、切なすぎたかたらだ。

見た感じ、真面目そうだし、俺なんかと違い真剣そのものだったんだろう。

「女って時に残酷だよな。幼稚な男の気持ちを頼りないとか、男らしくないとかで、あっけなく踏み滲んでいくんだぜ。」

「あんたでも、そんな事があるのか?」

「俺をどう思ってるか知らねーが、フラれる事の方が多いっての。」

「そう、なんだな。」

「だから落ち込むな。傷ついた分だけ、成長するって言うだろ。次、頑張ろうぜ!」

「ありがとう。」

そう言って、その男は目じりに溜まった涙を拭った。




あれから、数年。

「隊長!これが報告書です!!」
 
「ありがとう。エリオットはヴィンスと違って仕事が速くて助かるわ。」

「はいっ!何かありましたら、このエリオット・ミュッセにお任せ下さいっ!!」

どうやらコイツは、好きになったら一途に想い続けるたちらしく。

数日後、城の中で俺と姫が歩いていた所を出くわし、一目で姫を気に入ったようで。

軽く、4年以上は他の女にふらつくことも無く想い続けている。

そこは、まぁ男として尊敬する点ではあるんだが・・・・。

そこが、エリーの長所でもあり、短所だな。

「で、ヴィンスはこの間頼んだ書類はどうしたの?」

「まだ、ですけど?」

「あぁ・・・そう。」

ある意味、俺も一途・・・かもな。




あきゅろす。
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