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全力兄貴1



「お菓子をくれなきゃイタズラするぞ!!」


体全体を覆うほど大きな白い布を頭からかぶり姿が全く見えないニキが大声をあげた

「この街すげーな…」

隣で一緒に歩いていたエースが驚いた表情であたりを見回す

「ほら!エースも!!」

そう言うとニキはいつものテンガロンではなくカボチャの帽子をかぶるエースを見上げた

「え?オレもお菓子ねだんのかよ」

ニキの顔は布で見えないがかわりにちょうど顔の部分の布に可愛らしい目と口が描いてある

ニキは完全にオバケとなっていた

エースはそんなニキを見ながら笑う

「ニキはオバケだぞ〜!!お菓子をくれー!!!」

「おい、ニキオレから離れんじゃねェ」

「大丈夫だ!!」

新世界のとある島に上陸した白ひげ海賊団

その島ではちょうどハローウィンが開催されていた

島全体がハローウィン一色となりどこからどこを見ても人でいっぱい

魔女やオバケや吸血鬼などの色々な変装をした子供たち。その子供たちにお菓子を配る子供たち同様変装した大人たち。踊る者、歌う者………

今この島に静かな場所などきっとないだろうというほど賑やかだった

「エース!!あとどれくらい2番隊は上陸してることができるんだ?」

「ん〜…そうだな3時間ぐらいだったはずだぜ」

白ひげ海賊団の船員たちもこのハローウィンに参加していた

もちろん正体を隠して…

正体がバレると島中が大騒ぎになりハローウィンどころじゃなくなることが目に見えていたからだった

だから船員たちは変装をして街を回っている

あいにく今はハローウィンなため、正体を完全に隠すためにどれだけ派手な格好しようが誰も不審には思わない

しかしそれは全員ではなく船を空けないために各部隊が時間差交代で島に上陸していた

最初に上陸したのは偶数の部隊だった

「はァ〜い♪可愛いオバケちゃんにお菓子をあげちゃうぞ〜」

黒猫に変装したセクシーなお姉さんがニキに近寄る

「やったァ!!」

ニキは飛び跳ねながら黒猫お姉さんに持っていたカゴを差し出した

そのカゴの中にはすでに大量のお菓子が入っていた

「はい♪チョコパイよ」

黒猫お姉さんは小さなピンク色の紙に包まれたお菓子をニキに渡し、そして

「お兄さんも格好いいからはいどーぞ♪」

エースにも渡した

「オレにもくれんのか!ありがとな」

エースは素直に差し出されたお菓子を受け取ったが、今日でこういう風に若い女にお菓子を渡されたのは16回目

「エース隊長モテますね〜」

「…………………。」

おかげで布をかぶった体だけ小さい女海賊にエースは何度も冷やかされていた

「お菓子をくれなきゃイタズラするぞ!!」

ニキはまた歩き始める

「だからはぐれんなって…!!」

エースは先々行こうとするニキを追いかけるので必死だった

ニキのようなオバケの変装など島中にうじゃうじゃいる

一度見失えば見つけるのにかなり苦労するだろう

エースはニキの手をしっかりと握った

「あ!!見て見てエース!!」

不意にニキが大声でエースを呼んだカゴを持つ手がとある一点を指す

「なんだ?」

ニキの指さす先をエースは目を凝らして見てみた

「ん?…もしかして」

「オヤジだよ!!!」

「馬鹿野郎…!!大声で言うんじゃねェ」

2人の視線の先

そこには2人の親父である"白ひげ"エドワード・ニューゲートの姿をした男がいた

「あの男……オヤジに変装してんのか?」

エースはあまりの衝撃に呆然としていた

「オヤジだ!オヤジだ!!」

「だから言うんじゃねえって……サッチだったら殴られてるぞ……」

少し脅しを入れながら言ったエースだったがニキはそれでもはしゃぎまわる

そしてついにエースが握る手をほどきそのコスプレ男の方に走っていってしまった

「おい!!ニキ待てよ!!!」

慌てて追いかけるエース

白いオバケのニキはみるみる人ごみに紛れていく

「オーヤージー♪♪」

「ニキ!!」

精一杯手を伸ばすエースだったが人が多すぎてニキには届かない

ニキはというと小さい体で人ごみの中をすいすい進んでいた

だんだん小さくなっていくニキの姿

とその時

ドンッ

「………!?」

「あ……ごめんなさい…!!」

エースの足に妖精の格好をした小さな女の子がぶつかった

栗色でゆるいウェーブがかかった長い髪

「!!!!!!!!!!!!」

―――しまった!!!

その女の子は謝るとすぐに人ごみの中に消えていった

たった5秒ほどのできごと

しかしそれはニキを見失うには十分すぎる時間だった

不覚にも女の子の髪型を見てしまったエース

それだけで確実に2秒は過ぎていた

「やべェ………」

あんなに多かったオバケの姿はなぜかどこにも見当たらない

親父のコスプレ男の方にも目をやったがそこにも白いオバケはいない

エースはすぐにいたるところを探し始めた

ニキの行きそうなところお菓子を配る人や
何か見せ物をしている人のそばもしっかり探してまわった

しかし

「おいおい……マジかよ」

ニキはいっこうに見つからない

エースは真っ青になっていた

――とにかく島にいる仲間を集めて一緒に探そうか………いやそれより船に戻ったほうがいいかもな…戻ってみんなで探せば………

そう思った瞬間

エースは全速力で船へ向かった









モビーディック号船内


「オレは絶対にやりたくないねい」


マルコは重い口調で言った

「やろーぜマルコ」

マルコの目の前にはサッチ

「てかやれ」

「……………………。」

マルコはサッチをひたすら睨み続ける

サッチもサッチで真剣にマルコを睨み続けていた

「誰がてめェなんかの……」

「あぁ?オレのじゃ不満か?」

「不満だらけだよい」

「うるせェ…さっさと脱げ」

「こんなことしてオレに人様の前を平気で歩けってのかよい」

「できるだろ」

「できねェよい」

マルコは目の前のサッチを押しのけ歩き出した

サッチも追いかけるようにあとに続く

「ところでなんでてめェは上陸しねェんだよい」

「話をそらすんじゃねェ」

「…………………。」

サッチはまたもマルコの目の前に立った

「やれ」

「殺すぞ?」

「殺してみろ……殺してやる」

「鬱陶しい奴だねい…」

マルコは大きなため息をついた

「お前がさっさと脱がねェからだろ?」

「だから嫌だって言ってんだろい」

「てめェに拒否権なんざねェ」

「…………………。」

マルコはマジで殴りそうになっていた

しかし

ドタドタドタドタ…

ちょうど向こうの方から足音が聞こえてきた

その音はだんだん自分たちの方へ近づいてくる

そして

「あれ?マルコさん!!」

一人の男が現れた

「こんなところで何してって…サッチさんも?え?もしかして………」

男が息を飲む

「まだ仮装するかしないかでもめてるんですか!!?」

男はマルコの部下だった

「ああ……そうだよい」

「コイツしつけェんだ」

「どっちがだよい」

「サッチさんもしぶといですねぇ〜」

「あたりめェだ。オレはどうしてもマルコにバナナの仮装させてェからな」

「自分でやっとけばいいだろい」

「オレが作った服だぜ?オレが着てどーする」

「別にいいじゃねェかよい」

マルコはまたもサッチを押しのけて歩き出した

そして当たり前のようにサッチもまたマルコに続く

ドタドタドタドタ…

「騒がしいねい」

マルコは再び聞こえてくる足音に苛立ちを覚えていた

ドタドタドタドタドタドタ…

しかもそれまたこちらに近づいていた

「今度はなんだァ?」

サッチがそう言った時だった


「お!!いたっ!!!」


「「エース??」」

足音の主はエースだった

そのエースはどうしてなのかものすごい焦った様子

「あ、エースさん。どうしたんですか?そんなに慌てて………」


「ニキがいなくなった!!!」


「「はァ!!!!??」」

「いや……いなくなったと言うよりオレの不注意ではぐれさせちまった」

マルコサッチエースそして部下の間に沈黙が流れる

「どうせあいつのことだ……何かに気を取られて
勝手にエースから離れたんだろい」

「ったく………うぜェな」

「ほんと悪かった…」

エースは謝るしかできなかった

「しゃァねェな……探すか?オレ的にはいっそこの島に
置いていきたいんだけどな」

「バカ言うんじゃねェよい…よし、置いていくよい

「うぇぇぇええ!!?マルコ!!!?サッチ!!?」

「マルコさ―――――ん!!!?」

「嘘だよい……探すに決まってんだろい」

マルコはそう言うと階段に向かった

「おいマルコ。甲板はあっちだぜ」

エースは慌ててマルコに言ったがマルコはゆっくり振り返り、なぜかサッチを睨んだ


「バナナの仮装じゃなくてカッコいい変装してくるよい」


マルコはそれだけ言うと階段をおりていった

サッチはそんなマルコに意地悪そうな笑みを向け

「殺してやる」

と一言放った

「な……何があったんだよ……??」

エースは訳がわからなかったがニキのことが心配になり先に甲板へと向かった





全力兄貴2へつづく


after word

長編開始!!!!


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