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全力兄貴5



「白ひげ…海賊団???」


部屋の中が静まりかえり、ベアー大佐の声が響いた

「そ、そうだぞ!!ニキのオヤジは白ひげだァァア!!!」

言ってしまってもう後戻りできないニキは先ほどよりもさらに声を張り上げた

「ニキちゃん…」

ベアー大佐の声が低くなる

「……………。」

だんだん重くなっていく空気

ニキの表情もしだいにかたくなっていく

ダメだ…つ、捕まる

「……………。」

ニキは今になって正体をばらしたことを後悔した

が、しかし

「プ、プハハハハハハハ!!!!」

「!!!!?」

ベアー大佐はさっきまでの雰囲気とは一変し、腹をかかえて笑いだした

「ニキちゃんは白ひげ海賊団か!!じゃあ強いんだなァ〜ハハハハ!!2番隊??じゃあ……えーと…あ、ポートガス・D・エースの部下かな???そうか〜ニキちゃんはもしかして海賊が大好きなのかい??」

信じてねェ

思いきって戦う気で言ったのに…!!!!
信じるどころかバカにしてる…絶対におっさんニキをバカにしてるよ!!!!!

「にしても白ひげ海賊団のファンとは。珍しい子供もいたもんだ。海軍のおじさんの前で堂々と言うほど好きなんだね」

好きに決まってんだろ

家族だもん!!ニキの大好きな家族だもん!!!

「でも白ひげは怖い海賊なんだぞ??それにニキちゃんが好きなのはいいけど、憧れて海賊にはなったりしちゃいけないからね。おじさんと敵になってしまう」

そういうベアー大佐はニキの顔を見てニッコリ笑った

年は20近いが、種族の関係でまだ5歳ほどの体をした少女の言った真実は、みごとに子供の可愛い冗談と勘違いされてしまっていた

結局、すぐそばに四皇の1人が愛してやまない娘がいるというのに全く気づかないベアー大佐

答えを言ってもらっているのにもかかわらず

「大丈夫よ。ニキちゃんはいい子だものね」

おばさんまでもが笑顔で言った

「白ひげは悪い海賊なんだ。ニキちゃんもそれは知ってるだろ??」

ベアー大佐が言う

「世界中のみんなから恐れられている。恐ろしい男だ。手配書見たことあるかな??船員たちもみんな怖い顔してるだろ。あいつらはただの恐怖の塊だよ」

「………………。」

「好き嫌いは人それぞれあるが…おじさんは白ひげ海賊団は好きになれないなァ」

「……………。」

「海賊なんて所詮海のクズなんだよ」

「………………。」

「だから海軍がいるんだ。平和を守るためにね。だから白ひげ海賊団より海軍の方が強いんだぞ??」

「…………………。」

「ニキちゃんが海軍のファンになってくれたらおじさんは嬉しいなァ」

「…………………。」

無言のニキ

体が体

ニキは相手にされていない

仕方ないと言えば仕方がないが、それでもニキはなにか悔しかった

白ひげ海賊団の船員の目の前でさらっと言われる白ひげ海賊団の悪口

自分の前であたり前のようにされる家族のゴミ扱い

オヤジがマルコたちが恐ろしい??
白ひげ海賊団より海軍が強い??

海賊は海のクズ???

海賊である自分を否定された気がした
大好きなオヤジの娘…船員が言うには孫である自分が否定された気がした

帰りたい

急にそんな気持ちがドッと押し寄せてくる

エースの言いつけを守っていれば、はぐれることはなかった
今ごろマルコやエース、サッチと笑っていられた

迷子になって、1人になることがこんなにも辛いことだということを初めて知り、家族がいないという悲しさを初めて知ったニキ

ニキは手を強く握りしめた

「ニキのオヤジは白ひげだ。ニキは白ひげの娘だ」

「わかったよニキちゃん」

「わかってない!!オヤジはちっとも怖くない!!マルコだってエースだって!!いつもいじめてくるサッチだって!!みんなすっごい優しいんだぞ!!!なのに…なのに海賊をクズなんて」

と、ニキがそこまで叫んだ時だった

「ただいまっ」

玄関のドアが開いた

「っ……!!!」

悔しくて怒鳴ろうとしていた矢先に出鼻をくじかれるニキ

誰かが帰ってきたのだった

言いたかったことが結局言えなくなり黙りこむニキ

「エレナおかえり」

おばさんが言う

すると玄関から可愛らしい10歳ぐらいで金髪セミロングの女の子が入ってきた

「おばさん!!おじさん!!こんにちはー!!!」

続いて同じく10歳ぐらいの赤毛の男の子が入り

「こんにちは」

最後に、先の二人よりやや年上に見えるのっぽ眼鏡少年が入ってくる

三人の手には、それぞれ大量のお菓子が入った大きなカゴがあった

そして目や鼻、口などの可愛らしい顔が描かれた白い布も握りしめられていた

「あら!!ボビーとカカシも一緒だったのね。いらっしゃい。さぁ上がって」

おばさんは笑顔で子供たちを出迎える

「おじゃましまーす!!」

「おじゃましまーす」

赤毛の男の子ボビーと、のっぽ眼鏡カカシは、金髪少女エレナに続いて家に上がった

エレナって子は、おばさんとベアー大佐の娘なんだ

ニキは頭のなかで解釈する

「お母さん聞いて!!あのね……って、あの女の子誰??」

おばさんに駆け寄るエレナは、ベアー大佐の隣でソファーの上に立っているニキに気づいて言った

「あの子はねぇ、ニキちゃんと言って迷子なのよ」

「迷子なの??かわいそう」

「でもね。泣かずにいるのよ??偉いでしょ」

「迷子なのに寂しくないの??」

「ニキちゃんはなエレナよりも小さいのに、ちゃーんと我慢しているんだよ」

今度はベアー大佐が答えた

そんなベアー大佐はニキに笑いかけ、頭を撫でる

そして「ちゃんとお父さんたち探してあげるからね」と言った

「迷子で泣かないなんてオレできるかな〜」

ボビーがニキを見て関心したように言う

「ぼくは……どうだろう」

カカシは小さく呟いた

「すごいね!!ニキちゃん」

エレナはニキにむかって笑いかけた

「……………」

ニキは無言のまま

現在進行形で苛立っているニキは、笑顔を向けられると余計に腹がたってくる状態だった

「そう言えば…エレナはさっき何を言いたかったの??」

おばさんがエレナに聞いた

エレナはそう言われてハッとしたようにおばさんの顔を見たが、すぐに嬉しそうな顔へ変わっていく

「あのね!!」

手のカゴと布をテーブルに置いておばさんに飛びつくエレナ

そして


「さっきバナナの妖精に出会ったの!!!!!」


声だけでも嬉しさが十分伝わってくるぐらいの勢いで言った

そんなことを言われておばさんは少し驚いていたが「あらっ!!すごいじゃない!!バナナの妖精なんてお母さんも会いたかったなぁ」と言い、ボビーもカカシもエレナと一緒になって騒ぎだしていた

「おばさんオレも会ったんだぜ!!妖精のくせにおっさんだったけど!!」

自慢げなボビー

「ぼくも会いました!!でもぼくはヤシの木の妖精だと思いましたが…」

嬉しそうだが、なぜか残念そうなカカシ

「あ、オレも最初はパイナップルの妖精だと思ってたけどなぁ〜残念」

「なんでバナナの妖精ってわかったんだい??」

ベアー大佐が少し興味津々でボビーに聞いた

どーせ信じてないくせにー

ニキは隣でそう思っていた

「だってそう言ってたんだ!!な、エレナ!!カカシ!!」

「そうなんです」

「うん!!バナナの妖精が自分で言ったの!!


『おれはバナナの妖精だよい』


って!!」


……………

今なんて言った???


エレナの言葉を聞きニキの時間が止まる

「よい」って…

「あ、そういえば人探ししてたよ!!」

エレナがふと思い出したように言う

そしてその言葉はさらにニキの時間を止めた


「小さい女の子探してるってこともバナナの妖精さん言ってた!!」


「よい」+バナナ+パイナップル+ヤシの木

ニキの頭のなかで急速に計算が開始される

(小さい女の子+「探してる」)+おっさん

ニキの中にわずかな期待が生まれはじめた

「え、もしかしてそれって…」

おばさんがニキの方を驚いたように見る

「きっとそのもしかしてじゃないのかな??きっとニキちゃんの…」

ベアー大佐の言葉はニキに向けられていたが、ニキは頭の整理でいっぱいいっぱい

そして

=迷子の少女を探すバナナみたいなパイナップルみたいなヤシの木みたいなおっさん!!!

ついに答えが出た


=マルコ


「マ゛ル゛ゴ―――!!!」

ニキの目から初めて涙が溢れ出る

計算が導きだした答え

それは絶望と怒りの中のニキにとって心のそこからホッとでき、嬉しすぎる答えだった









「何??ニキが行方不明??」

イゾウが言った

「参ったな…こんな大きな島で、しかも大きな祭りの最中となるとさがすのが困難だね…」

その隣でハルタが腕を組ながら言う

「エースとサッチは捜索中…で、マルコとジョズはどこまで探した??」

そして最後に難しい表情でクリエルが言った

「探したっつっても…あいつはよく動き回るからよい…特定の場所にとどまっていてくれているかどうか…」

マルコはいつも以上に眉間にしわを寄せながら俯き呟く

「13区あるなかで一応ニキの足で三時間あれば行けそうな範囲はすべて回った」

厳しい表情のジョズ

今は昼の2時

ニキを捜索し始めてすでに3時間が経っていた

エースの不注意と言うべきか、ニキの不注意と言うべきかは難しいところだが、何せニキは広い島で1人迷子になってしまっている

最初にマルコとエースとジョズとサッチが捜索に出たが、すぐに別行動

4人それぞれが色々なところを探し回ったが、結局見つけ出すことはできなかった

しかし捜索中にマルコとジョズがばったりと会い、そして島を観光していた偶数部隊の隊長のクリエル、ハルタ、イゾウと会うことができのだった

イゾウが落ち着かないように腕を組んだり、立つ姿勢を変えたりする

「ジョズの手にいれた情報が正しければニキも危ないな…」

「正しければじゃねェよイゾウ。この島の新聞なんだぞ…正しいに決まってるだろ」

クリエルが大きなため息をついた

「ニキが危ない…でも…どこにいるんだ」

消え入りそうな声で呟くハルタ

ジョズの手にいれた情報

それは残酷にも孤児や独り身の老人などがある日突然消えていっているというものだった

ニキは現在この島で1人

親には白ひげがいるが、正式には亡くなっている

ニキの身には危険が迫っているのだった

しかしそんなニキは、現在海軍大佐の家にいる

そんなことは隊長たちは知るよしもなかったのだが、しかし

「誰かに保護されてたらいいけど…。でもそうでもニキのことだから自分からオレたちを探しに外に出そうだよ…」

ハルタが言った

「もしかしたら手遅れか…それともまだ大丈夫だとしても外に出たらアウトだ」

ジョズの低い声が響く

けっしてニキは外には出てはいけない

出たら島から消えてしまう可能性がある

いなくなって二度と帰ってこれなくなるかもしれない


「ニキ…頼むから外にはでないでくれよいっ…」


マルコは心が引き裂かれるような想いで強く祈っいた










全力兄貴6へ続く



after word

なんか今回は全くギャグが無かった…


あきゅろす。
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