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全力兄貴4



「くそっ!!!」

走って走って走って走って帽子が飛び作業着が乱れ

「ったくなんだってんだァ!!?」

それでも走って走って走って走って全速力で走って走って走って走って

「ひつけェなァ!!!」

走って逃げて走って逃げて逃げてひたすら逃げて

行き先などわからない

自分の特徴であるそばかすが飛んでいそうな勢いでとにかく逃げて逃げて逃げまくる

「たしかさっき完全に気絶させたよなおれ!!!?」

誰に聞くわけでもなくただ自問を繰り返す

「ああ!!させた確かに気絶させた!!」

そして自答を繰り返す

「なのに何でまだ追いかけてくんだ!!ゾンビじゃねェのか!!?」

大声で叫びながらひたすら逃げ続ける


「あいつら血まみれにだってのによっ!!」


エースは追いかけられていた










「か………海軍………?」

「そうだよ」

ニキの隣に座るおじさんは嬉しそうに言った

「おじさんはこの島の海軍基地の…」

「……………。」

「ベアー大佐だ!!!!!」

「……………。」

最悪だ

オヤジ…マルコ……助けてェ〜

ニキはさらに震えだす

「あら!ニキちゃんどうしてそんなに震えてるの?」

おばさんがニキに近寄る

もうニキにはすべてが恐怖となっていた

海賊が海軍の家にいる

その海賊はかなり小柄な女である

戦闘力といえば大人の男5人ほどなら優に倒せるが、しかし相手が海軍の大佐となれば別の話となる

しかもニキは世界最強の男が率いる白髭海賊団の船員

すなわち正体がバレた瞬間ニキは捕まえられるということだった

「どこか具合悪いの?」

おばさんがクッキーを差し出しながら言う

「…………………。」

はっきり言えば具合は悪い

しかし具合が悪くなった理由が理由

ニキは首を横に振った

「本当に?おばさんそうは思わないわ」

「だ、大丈夫!!!」

無理に笑顔全開

早く船に帰りたい………

ニキはまず逃げ出そうと考えた

船の場所なんてわからないけどとにかくこの大佐から離れようと

が、しかし

「…………」

突如脳裏にあの忌まわしきサッチが浮かんだ

『おいガキ』と自分のことを呼んでくる意地悪そうな笑みを浮かべたサッチが脳裏を駆け巡った

『教育だ』と言って容赦なくいじめてくるサッチが、お菓子を作るのが得意なくせにニキのためには一切作ってくれないサッチが頭の中にはっきりと現れた

「……ニキはガキじゃねェ」

恐怖の震えが怒りの震えへと変わる

「え?何ニキちゃん」

「な、なんにもないよっ…!!!」

慌てて答えるニキをおばさんは不思議そうに首を傾げた

だがすぐにニコッと笑い今度は戸棚からチョコケーキを取り出し始める

そうだ!!ニキは逃げちゃダメだ!!

そんなことしたらまたサッチに弱虫だからって言われる!!ガキだからって言われる!!!
ニキは戦うぞ!!!
ニキは絶対に逃げない!!!

ニキはガッツポーズした

「……………?」

いきなりのガッツポーズに驚くベアー大佐

「ニキちゃんなんかいいことあったのかい?」

「ないぞ!!大佐!!!」

大佐の質問に勢い良く答えるニキ

もうニキにとって大佐など恐怖の対象ではなかった

今はサッチを見返したいという気持ちが何よりも勝っていた

さァ!!まずは自己紹介からかな?

ニキはいきなり座っていたソファーの上に立ち上がった

「どうしたのニキちゃん?」

チョコケーキを出し終え次はアップルパイまで出そうとしているおばさんの手が止まる

「?????」

大佐は無言でそんなニキを見る

ニキは大きく息を吸った

「のんきでいられるのも今のうちにゃっ

あ、かんじゃった……

「………………??」

「………………??」

「…………………。」

沈黙が流れる

「ふぅ………」

気を取り直しニキはもう一度大きく息を吸った

そして

「のんきでいられるのも今のうちだぞ!!!聞いて驚くな!!!!ニキは白髭海賊団の二番隊隊員だ!!!!」









「おいおい……嘘だろ?」

サッチは見てしまった

「えぇ…?いや…本当か……ってプッ…ハハハ…ハハハハハ!!!!」

腹を抱えてしゃがみこむサッチ

大きな笑い声が路地に響き渡る

「か…勘弁してくれ…ハハハハハ!!!」

通り過ぎる人々は変な目でサッチを見ていた

でもサッチはそんなこと一切気にせず笑い続ける

「ハハハハハハハハハハ!!ハハハハハ…ハァ〜ァ…」

サッチは笑いすぎて涙がでた目を拭いた

そして


「バナナの妖精ってなんだよマルコ!!」









島では少し前から人々が何者かに次々誘拐されるという事件が起きている

誘拐された場所も、どこに連れて行かれたのかもまったくわからない

ただ気がつけばいなくなっている

最初は大人が20人ほど島から消えた

その次は老人が20人ほど消えた

そして今は子供たちが消えていっている

しかしこんな事件が現在進行形で起こっているにもかかわらず島ではお祭りが行われている

おかしな話だ

だがべつに島の住民はなんとも思っていない

それもこれも誘拐されているのはすべて島から忘れられた人々だったからである

浮浪者、孤児、身内のいない老人…

ターゲットは彼らだった

だからなんとも思わない

我が子が誘拐されないならばそれでいい

世間はなんとも残酷である


「どうですか?」

「……どうですかって言われてもおれにどうしろっていうんだ?」

モビーディック号甲板

そこにはいつもの指定席に白ひげが座っておりその目の前にはまたもマルコの部下

そしてまわりには30人ほどの船員がいた

白ひげは手に酒の瓶を持ちマルコの部下を見下ろす

マルコの部下は白ひげに向かって新聞を広げていた

「この島の新聞ですよ。しかも今日のです」

「だからなんだ」

「ニキもこの事件に巻き込まれたんじゃ…」

「バカ言え…あいつは孤児じゃねェだろ」

そう言うと白ひげは酒を豪快に飲んだ

そしてマルコの部下に向かって

「おれがいる。あいつの親はおれだ」

と言った

さすが四皇と言うべきか、世界最強の男と言うべきか、その一言はまわりを威圧させるほど力強いものだった

が、しかし

「……いや、オヤジ…オヤジは親っつうよりじいちゃんです」

いらないツッコミをいれるマルコの部下

白ひげの眉間あったシワがより一層深くなる

「あいつはおれの娘だ。」

白ひげは先ほどよりも力強く言い放った

「オヤジの息子と娘である2人から産まれた子なんですからニキは親父の孫でしょう。ちなみにおれもオヤジの息子だからニキの伯父さんになります」

「融通がきかねェやつだな、てめェは」

「すみません…」

白ひげは大きなため息をつく

そしてそれた話を本題に戻した

「ニキなら大丈夫だ。現に今マルコたちが探しに行ってるだろ」

「そうですけど…」

「グラララララ!!信じろ!!あいつはおれの娘だ…ヘマはしねェ。わかったかアホンダラ」

「オヤジ……だからニキは孫」

「うるせェな」

白ひげは笑っていた

マルコの部下も自然と笑顔になる

そして新聞を閉じた


「まァ…おれが上陸するのもありだが…」


!!!!!??


「お、オヤジィ!!!?」

「ええぇえ―――――!!!!!!!!!!!?」

「ほんとかよ…!!!!!」

いきなりの爆弾発言

船員たちはいまにも目の玉が飛び出しそうな勢いで目を見開く

マルコの部下も唖然としていた

オヤジがニキのことを可愛くて仕方がないことぐらいはこの海賊団の船員たちみんな、そして傘下の海賊たちまでも知っている

だけどオヤジはひいきしているわけじゃない

そんなこともみんな知っている

ただ産まれた時から育ててきたから誰よりもニキのことを実の娘のように感じるのだろう

でも………だからといって迷子になったぐらいでオヤジ自らが探しに行くなんて……

「グララララ!!なんだてめェらおれを親バカとでも言いたいか!?」


「はい。すっごく言いたくなりました」


「…………………。」

オヤジのしょげた顔を初めて見た










全力兄貴5へつづく



after word

白ひげさんちの全力兄貴まだまだ続きます


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