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全力兄貴2



「で?どうやって探すんだよい」

マルコの声が人ごみの中に消えていく

「ニキはお前の部下だろ?エース……ちゃんと見張ってろよ」

「まったくだよい…」

ジョズの低い声もマルコのため息もすべてが騒ぎの中に吸い込まれる

「悪かった」

「いやァ…エースだけが悪いんじゃねェ。消えたあいつだってもう大人だろ。なのにふらふら心配かけるようなことばっかりしやがって………」

サッチはため息をついた

「それよりもなんでマルコはバナナの格好してねェんだよ」

「殴られてェのかい?」

仮装した大人や子供であふかえる島の街の広場

そこにはハロウィンに全く似合わない男が4人いた

その男たち

それは黒いカッターシャツに黒いネクタイ黒いスーツに身を包み黒縁のメガネをかけたマルコと、同じく真っ黒スーツ姿だがこちらはサングラスをかけたサッチとジョズ

そして1人だけオレンジの作業着に赤いキャップ帽という姿のエース

完全なるスパイ集団かもしくはどこかの偉いさんのボディーガードに見える三人とカラフルな大工1人

どう見ても祭りに参加する格好ではなかったが、しかし賑やかすぎるだけに4人を見る者は誰もいない

「なんでこんな格好なんだよ」

ジョズはサッチに言った

「変装ってのはいつもと違う服装をしたらいいってもんだろ?だからだ」

「…………おおざっぱな答えだな」

エースはキャップ帽を少し上に上げ辺りを見回した

「ニキが行きそうなところ手分けして探そうぜ」

「サッチがケーキ作ってくれるらしいって叫びながら歩いたら出てくるだろ」

「意外にジョズ頭いいな」

「どういうことだ、エース」

「いやァ…ジョズってでかいだけに頭悪そうだろ?」

「だろ?って……オレに同意求めるんじゃねェよい」

「お前ら2人覚えてろよ?」

サングラスの下でジョズの目が光る

「おいおい……怒るなジョズ」

サッチはバンバンとジョズの背中を叩く

そして

「さっさと探しに行こうぜ。こうしてる間にニキは海に沈んでるかもしれねェからよ」

と言った

「だな」

「よし」

「………。」

サッチの言葉に頷く4人

それから無言でそれぞれ違う方向へと体を向けた

そして特に何を言うわけでもなく4人はバラバラに人ごみの中に消えていった









ニキはとある家にいた


「はい。ニキちゃん」

「ありがとう!!」

ニキは差し出されたジュースを笑顔で受け取った

そしてそれを一気に飲み干す

「ところでニキちゃんのお母さんはどこにいるの?」

ニキに問いかけるのは1人のおばさんだった

「ニキにはお母さんはいないよ」

「じゃあお父さんは??」

「オヤジはいるけど…どこかわかんない」

「うーん…困ったわね」

ニキはエースと一緒に祭りに参加していた

とそこに現れたのは白ひげのコスプレをした1人の男

ニキはなぜか嬉しくなってその男のところまで走っていったが、途中誰かに腕を引っ張られ連れて行かれたのだった

その誰かとは今ニキの目の前にいるおばさんである

面倒臭いことにおばさんは、ニキをまるっきり迷子になった子と信じ込んでいた

「お父さんはどんな人?」

おばさんはニキから空になったコップを受け取りながら聞いた

「大きい!!!」

「大きい???」

「うん!大きい!!それでグララララって笑うよ」

「ぐ?グララララ??え?」

「白い髭も長いんだ!!」

こーんな感じとニキは手で髭の形を再現する

「大きくて白い髭なのね」

「そうだよ」

ニキは笑顔全開だった

「ニキちゃん嬉しそうね」

「ニキはオヤジのことが大好きだ!」

おばさんはふふっと笑うとまた質問し始めた

「ニキちゃんには兄弟はいるの?」

「いないよー!!でも仲間ならいる」

「仲間?」

「うん。不死鳥とか炎とかリーゼントとか王子とかナースさんとかダイヤモンドとか女みたいな男とか牛とかスイカ帽子も!!!まだもっといるけど」

(ニキちゃんは何かの絵本の登場人物を言っているのかしら?)

「仲間は何人いるの?」

「1600人ぐらい!!」

(やっぱり本の影響ね)

おばさんはニキが本当のことを言っているにもかかわらず、ただの本の読み過ぎ妄想少女と勘違いしてしまっていた

「ニキちゃんは面白いわねー」

おばさんはそう言いながら今度は戸棚からクッキーを出す

とその時だった

「ただいま」

玄関が開き1人の男が部屋に入ってきた

「あら!おかえりなさい!!今日は早いのね。まだお昼じゃない」

おばさんはクッキーをテーブルの上にひとまず置き、入ってきた男のそばにかけよった

「町の祭りがすごくてな…仕事場も祭りモードになってしまって…休みになったよ」

ニキは入ってきた男を見た

「あ…………!!!!!」

しかしニキはその男を見るなり小さく叫んだ

「どうしたの?ニキちゃん」

「ん?誰だい?あの子は」

「ニキちゃんっていって迷子なのよ」

「そうか迷子か」

男はニキのそばに座りニキの頭をなでた

「寂しいか?」

「………………………。」

「そうか…でもニキちゃんは泣かないでいたんだな、偉いぞ」

「…………………………。」

ニキは小さく震え始めた

「よし!!おじさんが探してあげよう」

「…………………………。」

ニキは男の着ているものを横目で見る

そこには海で見慣れたマークがあった

親父やマルコたちがいとも簡単に沈めてきた船によく描いてあったマーク


「おじさんは海軍だから」


男は海兵だった










全力兄貴3へつづく



after word

ニキピンチ!!!


あきゅろす。
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