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始まりの風




「あぁ〜…春だねぇ……。」


ベランダのドアを開けて
春風に吹かれながら
呟いてみる――――――


気持ちいい風が
時雨の頬を撫でた


「あいつ今何してっかなぁ…」





あの夏から約7ヶ月―


かつて
選ばれし子供の1人で
【真実の紋章】を持つ者だった
時雨は
かつてのパートナー、テリアモン
のことを思い出していた



『時雨〜。時雨〜』



いつもそんな風に
私のこと呼んでワガママ
ばっかし言ってきたよなぁ


そのワガママを
きいたことなんてほとんど
なかったけど……


でもいつか仕返ししてやろうとか
思ったこともあったよなぁ


だから、寝てるあいつの顔に
落書きしたよなぁ


それでケンカになった






元気かな?



てか、まずそもそも
ワガママばっか言っていた
あいつが
私無しで生きてこれてんのかな?



初めて会った時は
ケンカばっかしてたけど
気づいたら
お互い親友も家族も通り越したぐらい
かけがえのない存在に
なってたし……




「会いたいぞー!!!テリアモ――ン!!!!」




時雨は
思いっきり腹から叫んだ――


空に向かって高く高く――


どこまでも――――――


デジタルワールドまで

あいつの所まで


届きますよーに!!!













劇場版デジモンアドベンチャー

ぼくらのウォーゲーム!!


No.1 始まりの風




















「暇だ…………」





蒼嗄時雨は
ひたすらゴロゴロしていた



「暇すぎる!!」


じいちゃんとばあちゃんちは
どーしてこんなに暇なんだ!!



今は春休み―――


両親共働きの時雨は
春休み中をほとんど
祖父祖母の家で暮らす予定だった

そのため祖父祖母の家の
座敷の部屋で一日中ゴロゴロするはめに
なっているのである



「あっ…ゴロゴロしすぎて
足に一杯カタついちった………」


時雨の両足には
気持ち悪いぐらいの
無数の筋が少し赤く染まって
ついていた


「あ゛ーもーだめだ!!」

時雨は大きなため息をつく

「暇すぎて死ぬ!!」


「もし死んだら太一のせいにしてやる!!」

「光子郎でもいーや。空でもヤマトでも
いい!!」

「ミミちゃーんジョータケルヒカリィィィイイイ!!!時雨を助けろー!!!!」


意味不明なことを
発狂しながら
またも畳の上を
ゴロゴロしだす時雨


「そうだなぁ……」


不意に時雨の動きが止まった


「今から一時間以内に
誰からも遊びの誘いがこなかったらぁ………」


「太一に強制的に“き●この山“派になってもらおー!!」


そう―――太一は

“たけ●この里“派なのである


そして時雨は
“き●この山“派だった…………


「決定!!なんかスッゴい楽しみになってきた!!」


……………。

…………………。


「やっぱ、あと十秒にしよー♪♪」



時雨は電話の前に立った

そして、笑顔で――――


「10」


「9」


「8」


「7」


「6」


「5」


「4」


「3」


「2」


「1」




ブルルルルン………


なっ―鳴りやがった!!


一瞬電話に殺意を
抱いた時雨


しかも電話番号は



八神太一の家のものだった





出ようか出まいか………

せっかく太一を
“き●この山“派にしてやろーと
思ったのに!!!!



「時雨ちゃん。電話に出てくれる?」
二階からおばあちゃんが言った



仕方ないなぁ……

でてあげますよー

太一のバカヤロー




「もしもし蒼嗄です。」

『――時雨かっ!!?』

受話器のから聞こえてきたのは
やっぱり太一の声だった

時雨は
おもんねーと小さく呟き
受話器からの声に応答する


「そだよー。時雨だよー。お前の嫌いな“き●この山“が大好きな蒼嗄時雨ですよー。ちなみに時雨は“たけ●この里“嫌い。」

『おいっ!!』

「あのクッキーが許せない」

『時雨!!』

「形も無理」


『時雨!!いいから聞けっ!!』


―――???

何焦ってんだろ……太一


「どーしたの?何かあったぁ?」

『今すぐ俺んちに来てくれ!!』

「は?別にいーけど……」

『デジヴァイス持ってるよな?!!』

「うん。持ってるよ」


デジヴァイスはいつも身につけてる

宝物だから―――


『じゃぁ、デジヴァイス持ってすぐ来てくれ!!話はそれからだ!!』


何が起きてるのかは
わからない―――――

だけどそれはまた
かけがえのない存在のあいつと
一緒に戦える――

そんな気がした


「わかった」


時雨は左ポケットに
手を入れた


「すぐ行く!!待ってろ太一!!」


そして左ポケットに入っている
デジヴァイスを握りしめた

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あきゅろす。
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