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夏に走れ!!





「時雨!!だらだらしてる暇があるんならちょっとは勉強しなさい!!!」




夏休み二週間前の日曜日



「え?やだ」


河田小学校六年二組の
蒼嗄時雨は

今日もだらだらしていた


「ほんとにあんたはのんきねぇ?」

呆れて溜息をつく時雨の母親



「お隣の哀本くんは塾に行ってがんばってるのよ?」


あぁ〜…同じクラスの奴ね

そいえば私と同じマンションに住んでたんだぁ

どーでもいー……


「哀本は私立の中学行くからだよー」


ソファーの上でひたすらぐだぐだする時雨


「関係無いでしょ???」

そういうとお母さんは
一枚の紙を時雨の目の前に
突きつけた――――

「え?なになに??」


その紙に書かれていたのは


「塾の夏期講習?」


ええええぇええ!!!?

マジですか?お母さん!!


「そうよ?時雨がどうせ夏休み中だらだら過ごすだろうからちょっとお母さん考えたの。参加自由だし、それにここ有名な塾だし」


――――どうせ一週間だけよ

お母さんはそう言って紙をしまった



「夏休みに入ってまで勉強なんて………」

「別に勉強しろなんて。」

お母さんは言った

「あんたがダラダラばっかりするからよ。何かこう頑張れることをしてるとか、なんかそういうのがあるんだったらいいんだけど……」

「ないもん。」

キッパリ

「でしょ?だから勉強ぐらいしかないじゃない」


――――うぅっ


「太一君はサッカーがんばってるのに
あんたは夏休みダラダラするだけじゃね?」


なんでここで太一………??


「今度試合あるんだって」


あーなんか言ってた気がするー


「だから時雨は勉強頑張りなさい!!」


肩をポンとたたかれた


「そんな……」


あぁ私の夏休みが………


「ねっ!!」


にっこりとお母さんは微笑んだ











DEJIMON ADVENTURE No.7

夏に走れ!!










8月3日


結局私は塾の夏期講習に参加することになった―――


そして今―――
塾の前に立っている


電車で10分かけてきた


正直帰りたい

でもサボったら
お母さんに怒られるよなー


仕方ない―――――



ウイーン


自動ドアが開いた


真夏の暑い空気の中から
冷房のかかった涼しい空気の中へ
時雨は移動する


―――――入ってしまった


いかにも勉強するぞ!!という感じの
雰囲気が漂う空間


塾にいる人たちの顔もなんか
違う――――


「こここえー……」


素直に怖いと感じた時雨
そう呟いた時だった―――




「あれ?時雨くんじゃないか!!」




「丈??!!!!!」


眼鏡をかけた見るからに
がり勉野郎とわかるその姿――


城戸丈だった

意外な人物の登場に少し驚いている様子




そいえば一昨日会ったなー



8月1日


去年初めてデジモンと会った日

そして初めてテリアモンと出会った日


あの冒険の始まりの日



―――記念日だったから
パーティーしたからねー



丈はニコニコ笑顔で時雨の方へ向かう


「まさかこんな所で時雨くんに会うとは思ってもみなかったよ!!」

「だねー」

「また何で???」

「お母さんに行けって言われた」


そうなんだ!と丈は納得する

そんな丈に1人の男の子が言った


「なぁ丈。その子誰?」


まわりにいた人たちは驚いていたのだった

誰も見知らぬ女の子を
丈は知っていたことに――


「ああ、この子はね………」


丈がその男の子に
説明しようとしたその時



「ども!彼女でーす!!」



「「「「「………!!!!!」」」」」



シーン…………



まわりが静まり返る




丈のメガネがすれた

そして
みんなの目はピンポン球のように
なっていた



「しっ…時雨くん!」



まさかの時雨の冗談に
ものすごい勢いで焦る丈



「え……?本当か?丈????」


「じょ、冗談に決まってるじゃないか!」

ははははと笑う


「この子は河田小学校六年生の
蒼嗄時雨くん!!!!
正真正銘僕の友だちだ!!!!!!」


あまりの焦りに一気に時雨の
紹介をする丈



「冗談かよ……。本当かと思った…」

「俺も」

「僕も」

「あ、私も」

「びっくりしたよなー」


丈の塾仲間が次々に言う

そして冗談だとわかったので
その場から散らばった



「はははははははは!!爆笑!!」



お腹を抱えて笑う時雨



「時雨くん」



「はい。」


―――――あ、若干怒った


「でででもさ!別に私が彼女でもいーじゃん………。」



「時雨くん」



「どうもすみませんでした」


時雨は丈に向かって頭を下げた




丈は「はぁ」とため息をつく

「もう、こんな冗談はしないでくれよ?」

「えーなんでー???」

「えーなんでーって……う〜ん…
そんな冗談を時雨くんが言ったら僕は殺されてしまうんだ」

「えー!?丈殺されんの??」

首を傾げる時雨

でも若干楽しそう


「うん。そうなんだ。」

頷く丈


「確実に三人には殺される」

超真剣!!!


「だだ誰に殺されんの???」



「太一とヤマトと光子郎」


「なんで?」



時雨はまたも首を傾げた


―――――あ、ヤバい……

言ったらダメだったんだ……


言ってしまってから後悔する丈


「なんで丈が太一たちに殺されんの?」


あーバレたらほんとに殺される


「あ!!わかった!!!」


終わった………




「三人とも丈のことが好きなんだ!」




鈍感!!!!



「それしかないよなー」

ケラケラ笑う時雨

「てか太一たちって、そっち側の人間だったんだ……」


「バレなくてすんだけど………」


「え?」

「い、いや……」


別の意味で殺されそうだ


「でもさ、丈のこと好きになるとか
太一もヤマトも光子郎も趣味悪いね」


「時雨くん」



「うそうそうそうそうそです」

「………………。」

「………………。」

「………………。」


「あああれだろ?
あたしが彼女だって言ったらいけないのは
もし言ったら
あいつらに『どうして俺を選んでくれなかったんだぁああ!!』って
丈が怒られるからだよねー?」


ごめん

太一ヤマト光子郎

君たちの想い人は僕になったみたい


「丈、尊敬するよ!!」

時雨は丈の肩をポンとたたいた

「同性に、しかも三人から好かれてるのに平気でいられるとこ!!」


「そこ、尊敬すべきところじゃないと思うんだけど」


「それにメガネも!!!」


「されてもうれしくないなぁ」


「んだとぉー?!!!」

いわゆる逆ギレをする時雨



でも君は本当に気づかないんだね

僕はそこを尊敬するよ


丈は目の前にいる
素直に太一たち三人の誤った本性を
信じる時雨を見て
改めてあることを思っていた



「時雨くんは鈍感すぎるな」

丈がクスリと笑う


「は?何が」

何もわかってない時雨


「本当に本当に鈍感すぎるよ」


「えー!あたしのドコが鈍感なんだよー!!」

時雨の頭の上にいくつもの
疑問符が並んだ


きっと太一やヤマトや光子郎が
君のことを好きじゃなかったら
僕は確実に時雨くんに恋をしただろう

あの夏の冒険からそうだった




「なぁ!クソネガネ!!聞いてんの?」



やっぱり違うかも………

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あきゅろす。
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