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図書委員長とおれ


「中村の言う通り、随分と機嫌良いみたいじゃないか」


図書委員の集まりかなんかあんだろ?


最後にそうつけたされて、顔が赤くなっていくのが自分でも分かる。


「ち、ちがっ」


周りに顔が見られないように俯きながら、小さな声で否定する。


「そうだろ?」
「うっ」


潤ちゃんの有無を言わせない笑顔に否定も出来ない。意味もなくうー、と唸ってみる。


「ま、放課後頑張れよ?」


潤ちゃんは笑顔でそれだけを言い残して、さっさと自分の机に向かってしまう。俺は、その後ろ姿を見ながら潤ちゃんには、敵わないなあって思わず苦笑が出た。

扉の方で騒がしい声が聞こえて、見てみると中村と鈴木が帰ってきたようだった。中村はまだ拗ねているようで、鈴木に突っかかっているし、鈴木はそれを適当に流しつつ、席まで誘導している。

その様子を中村の扱いが上手いなぁ、なんて思いながら見てると、担任の先生が入ってきて慌てて席に着いた。





「はい、ホームルーム終わり。んじゃあ、お前等気ぃつけて帰れよー」


担任の先生のその言葉で、教室中が解放感に包まれる。思い思いにクラスメート達が動き始める中で、俺は一人机にうっつぷした。

あー、なんだか変に緊張してきた…!
俺は、見た目も口調もチャラ男で通ってるけれど、中身は繊細なんだぞー、なんて下らないことを心の中で言ってみたり。

良く連るんでいるクラスメイト達が机に顔を伏せている俺に茶々を入れてきたのを適当にかわしたり、何人かの女の子の声に机に頬を押し付けた状態ながらも、チャラ男らしく笑顔で返したりする。

暫くすると、だんだんと教室にいる人がまばらになってきた。
なんとなしに綺麗にされた黒板をジッと見てみる。


「優」


すると、潤ちゃんの爽やかでイケメンな顔が俺の目の前にぬっと出てきた。潤ちゃん、ちょっといきなり出てこないでよ…ビックリするじゃん。


「お前、時間は大丈夫なのか?」
「あ…!」


そう言われて、慌てて教室に掛けられている時計を見てみる。


「…やばっ」


時計の針は、16時20分を指していた。図書委員会の集合時間は、16時30分…後10分しかない!
目に見えて、焦り始めた俺に潤ちゃんは呆れ顔だ。


「はぁ…全くお前は」


潤ちゃんの溜息を頭上で聞きながら、鞄の用意をサッと済ませる。扉へ向かおうとしたけど潤ちゃんの声に、引き止められた。何、顔だけ振り向いて目で問いかける。


「ちゃんと委員会やるんだぞ。先輩ばっかり見ないこと」


注意されました…。


「うっ…頑張る」


あんまり自信がなくて、そう返せば潤ちゃんも分かってたようで苦笑を返された。


「行ってこい。頑張れ」


苦笑混じりにそう言われて、次こそ俺は走り出した。でも、ちゃんと潤ちゃんにはお礼言ったよ。時間がヤバイこと教えてくれたし、応援してくれたもん。

潤ちゃんの頑張れに込められた二つの意味に、走りながら心の中でもう一度お礼を言う。









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