図書委員長とおれ
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初日から数ヶ月も経って、委員長と今まで以上にいっぱい話して、知らない表情をいっぱい知れて、前よりも近づけた気がした。だから…浮かれてたんだと思う。
分かってた筈なのに…俺は、夢を見ていたのかな。もしかしたらって…でも、やっぱり無理みたいだ。
図書館で抱き合う二人を見て、俺は泣きたいのを堪えた。固まっている先輩の顔と目が合って、笑顔のままでお邪魔しましたーって頭を下げて、扉を閉めるとそのまま走り出す。
あー、もうやだなぁ。
雪斗先輩と一緒に図書当番をするようになってから、もう早くも2ヶ月が経つ。
その中で、俺の中にある勇気の一生分を使って、いいんちょーではなく名前呼びになったことが一番の進歩だと思う。
毎日ってのはさすがに無理みたいで、先輩は火曜と木曜、週2度は部活をしに行っている。
それでも、様子を見に時々図書館に顔を出してくれるんだけどね。それに毎日、先輩が図書館に顔を出さない日はないんだ。
部活の度にいつも申し訳なさそうに悪いなって、謝られるけど俺は気にしていない。
気にしてないって言ってるのに……今だってそうだ。
「いつも悪いな。一人でさせて」
カウンター越しの道着姿の先輩は、眉をハの字にさせている。
背筋が真っ直ぐ伸びている立ち姿は、すごくカッコいいのにそんな表情をするもんだから思わず笑いそうになった。
「別にいいって言ってるじゃないですかー」
先輩は、弓道部に所属していた。夏休みの全国大会をもって3年生は既に引退しているけど、先輩の場合は後輩達にレクチャーをする為に週に2度顔を出してる。
先輩の弓道の腕は、全国で優勝するくらいだから相当凄い。弓道部の部員と顧問の先生に是非とも練習に来てくれ、とお願いされるくらい信頼も厚い。
先輩はそれに一生懸命応えようとしていて、受験もあるのに委員会のこともきちんと務めている。そんな先輩をどうして俺が責められるんだろう。
それに俺は、毎日先輩に会えるだけで、少しだけでも話せるだけですごく嬉しいんだ。
先輩の顔を見るだけで、声を聞くだけで…こんなに元気になるのに。
委員会の仕事でも色々と教えてくれて、優しく接してくれる先輩に寧ろ感謝したいくらいなのに。
今もあの時だって、助けてくれる優しくてキラキラしている先輩が好きなんだ。
俺だけでなく、周りの信頼を決して裏切ず応えようとして、困っている人がいたらさりげなく助けるそんな先輩を尊敬しているんだ。
そう思うと、急に胸がキュッてなって、無償にこの気持ちを伝えたくなった。
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