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図書委員長とおれ
12

ぶつけたおでこが痛すぎて、その場にしゃがみ込む。すると、頭上から驚いたような焦ったような声で名前を呼ばれた。


「西花?!」


この声は…ゆっくりと顔を上げると、そこには紛れもなく図書委員長その人がいた。

委員長の突然の登場に驚くよりも、こんな情けない格好をいつまでも好きな人に見せたくないという一心で、なんとか笑みを作ってみる。…おでこに手をやったままで涙目なのは許して欲しい。だって、本当に痛い…。


「い、んちょ。だ…じょぶ、っす」


思った以上に情けない声が出てしまった。しかも語尾が微妙体育会系っぽい。


「悪い。まさか扉の前にお前がいるとは……」


眉間にしわを寄せて、すまなそうに俺を見る委員長の姿が、普段のキリッとした姿とは違っていて、こんな状況なのにも関わらず思わずジッと見てしまう。

そんな俺の様子にますます眉間にしわを寄せた委員長は俺と同じ目線になるようにしゃがみ込んだ。その動作を呆然と見ているだけだった俺は、委員長の次の行動におでこの痛みを忘れるくらいの衝撃を受けることになる。


「…赤くなってるな」


か、かかかか顔が近い…!!!
あろうことか委員長は俺の顔を覗き込んできた。…しかも至近距離で!!

更にぶつけたおでこを労わるように優しく撫でられる。その動作に、思わずピクンッと肩を跳ねさせてしまう。そんな俺に委員長が申し訳なさそうに謝罪する声が聞こえて、そこで漸くハッとなった。


「だ…だいじょーぶでっす」


内心の動揺を隠して、いつものようにヘラリと笑う。うん、今度は普通に言えた。その時にさりげなく委員長の手をはずすのも忘れない。

ゆっくりと立ち上がる俺を心配そうな顔で見上げる委員長はまだ何か言いたげだったけど、言葉を続けた。


「大丈夫ですって。…それにほら、早く中に入りましょーよ。いつまでもこんな入り口でいちゃあ誰か来たときに邪魔ですよー?」


俺が言ったことに納得したのか、委員長は立ち上がり図書館の扉をゆっくりと開いた。その時、委員長は俺の為に扉を開けたまま待っていてくれて、気恥ずかしさやら嬉しさなんかでいっぱいになる。

ちゃんとお礼を言って、入ったけど顔なんかあげらんなかった。顔が熱くて…火が出てきそうだ。










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