いつまでも輝けるあなたでいてほしいのに
日の光のある場所で見ると、眩しさに目を細めてしまう。そのきらきらとした髪は、まるで太陽のようだ。
戦闘では、前衛で敵の血飛沫を浴びながらも、誰よりも勇猛果敢に飛び込んでいく。怪我をしても気にせずに突っ込んでいく様は正直見ていたくない。戦闘の効率、というよりも、一人の恋人として。心配で、いつも冷や冷やしている。
とは言え、戦闘におけるパーティーのリーダー的存在となっている今では(実際年齢的にも一番上である)、そのようなことを表情に出すことも、口に出すことも許されない。プライドというやつもある。
「ルーク、あまり前に出過ぎない!」
叫んだ後、伸ばした指先を真横に切った。詠唱無しの為に多少の能力が落ちるが、それでもルークに襲い掛かる敵を吹き飛ばすには十分だった。
「ごめんッ!」
目の前の敵に夢中だったルークは、背後まで来ていた敵の存在に気付いていなかった。目の前の敵を持っていた剣で切り捨て、くるりとターン。軽快な動きで、ジェイドが吹き飛ばした敵に近付き、また剣を振るった。血がまた、ルークを汚した。
それでもきらきらと、髪は輝きを失わない。けれどそれよりも眩しいのは、ルーク本人だ。
「ありがとなっ、ジェイド!」
辺りに敵がいないことを確認した後、ルークはぱたぱたとジェイドへ走り寄った。満面の笑みを浮かべながら、持っていた剣を仕舞う。けれどその顔には、少量の返り血がついている。
嗚呼、やはり眩しい。そう思いながら、ジェイドは手を伸ばした。ルークの頬についていた血を指先で拭う。
「ん、ついてた?」
「ええ、返り血を浴びての満面の笑みとは、中々滑稽ですね」
「しょうがないだろ」
ルークの表情が曇った。
「今はもう感覚が麻痺したけど……最初に敵を殺した時は怖かったなぁ。こんなにあっさり死ぬんだ、ってさ。でもそれは俺にも同じことで、やらなきゃやられる。そう考えたら、やるしかない、って。ほら見ろよ、たまにこうやって、手が震えてるんだ」
両手を持ち上げ、ジェイドに見せる。その指先は微かに震えている。それと同時に、指先に出来た血豆が目に入った。
「あーあ、だらしないよな、俺」
「……いいのではないですか。貴方はそうやって少し臆病な方が、似合っている」
「なんだよ、それ」
ムッとした表情を見せたルークに、ジェイドは微笑んだ。震えたままの手を取り、両手で包み込むように握る。
「貴方はそのままでいてください」
「ん? 俺は俺だけど?」
「ええ、それでいいのですよ」
握った手は少し冷たい。握っているはずなのに、何故だか消えてしまいそうな、そんな錯覚が襲った。
──いつまでも、輝いていて欲しいのですがね。
ルークの手を離し、軍服のポケットに手を突っ込み歩き出す。ジェイドが何も言わず歩き出したのを見て、ルークも慌ててジェイドを追って歩き出した。
輝きとはとても言えない方向。預言されない明日へ向かって、今日も歩き続ける。
2011/12/11 ゆきがた
▼お題お借りしています。
王さまとヤクザのワルツ(http://fraeng.web.fc2.com/title/top.html)
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