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片思い(RM3設定)
■RM3のジェイルク。ルクの片思い風味。




バンエルティア号の甲板を出てそこからさらに上によじ登ると、見渡しが良くてさらに人のいない場所がある。甲板にいつもいるセルシウスは、任務の為外に出ている。それをチャンスとばかりに、ルークは一人で海を眺めていた。
膝を抱えながら海風に当たる。時折吹く優しい風が、ルークの長い髪を弄ぶ。
アッシュに対抗して伸ばしていたが、もう伸ばす必要もないだろう。ナタリアの気持ちがアッシュに向いていることも、自分が正統後継者になれないのも、全てわかっているのだから。
だからと言って、今まで続けてきたヴァンとの修行も、仲間と行っている模擬戦も、やめるつもりは全く無い。それが将来何に役に立つのか、まだわからないが。

「あー、ウゼー」

じりじりと照りつける太陽に、うなじに汗がじんわりと出始めた。髪が長いから、余計に。
髪をぐいと掴み、首に風が当たるように少し持ち上げる。海風がそこをさらりと通ると、気持ちが良かった。

「ホント、ウゼェ」

気だるそうにいいながら、ルークは髪を持った手を離した。そして、膝に額を当てて黙り込んだ。
ザァァ、と波の音が耳に心地よい。心地よすぎるくらいだった。




「おや、こんなとこにいましたか」

カタン、と足音が鳴った。風の譜術でも使って、一気にここまで上がってきたのだろうか。声には勿論、聞き覚えがある。

「貴方の大好きな師匠がお探しでしたよー」

「…………今、忙しいって、言っとけよ」

声が震えていた。わかっていたが、返事をしないのは不自然すぎるので、何とか言葉を発した。

「そうですかー。こぉんなところで暇そうにしているルークお坊ちゃまは、お忙しいですよねー」

「うっせぇ」

ずず、と鼻をすする音。
こいつにだけは──ジェイドにだけは、自分が泣いている姿なんて見せたくなかった。理不尽だと言って怒ったり、我侭を言ったり、そうして起こった結果は全て自分のせいだなんてとっくの昔にわかっていたのに、やめることができなかった。認めたくなかった。
皮肉屋で毒舌家のジェイドにそう思っていることが知られたら、どれだけからかわれることだろう。バカにされて、やはり貴方に王族は合いませんね、などと言われるのが目に見えている。

「いいから早く行けよ」

「お断りしますよ」

ストン、と隣に座る気配。

「貴方の大好きな師匠は、何故かわざわざ私に行ってこいと言うんですよ。意味がわからないですよねぇ」

何もかも見透かされている気がした。ヴァンにも、ジェイドにも。

「……だから、なんだよ」

「つまり、こういうことですよ」

肩に手が伸びてきた。ぐい、と引っ張られ、身体がジェイドの方へ倒れる。

「泣きたいときはお泣きなさい。そういうことができるのは、今のうちですよ」

ぼろり、と涙が零れた。先ほどからずっと泣いていたので、膝はすっかり濡れている。
涙を止めようと思っていたのに、これでは止まらないではないか。

「ジェイドなんて、嫌いだ」

「ええ、知ってますよ」

肩に回されていた手が、そっと頭へ伸びる。愛しそうに、長い指先がルークの髪を梳いた。

「貴方が私を大好きなことなんて、知ってますよ」

「ちっげーよ」

返答する声はか弱く、震えていた。両思いでもないのに、優しくなんてしないでほしい。
何かするたびにいつも皮肉を言うジェイド。けれど、いつも本心を見抜いていて、ルークの本当に欲している答えを返してくれる。
憧れが、気がつけば好きになっていた。それすらも見抜いているのに、ジェイドは未だ、この思いにだけは答えたことがない。

「優しくなんて……すんなよ」

そう言いながらも、ルークはジェイドが自身の髪を撫でているのがずっと続けばいいと思っていた。



2011/07/04

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